心臓の機能に障がいを持つ方は、ペースメーカーの装着が必要になることがあります。ペースメーカーを装着する方は、日常生活だけでなく仕事においてもさまざまな制限や注意点があります。
就職・転職を検討する方のなかには、「どのような仕事が制限されるのか」「安心して働き続けられる職場と出会えるのか」など不安を持つ方もいるのではないでしょうか。
この記事では、ペースメーカーを装着する方の仕事制限や安心して従事できる仕事内容、就職・転職活動の進め方について解説します。
目次
ペースメーカーを装着する方の仕事制限
心臓機能の障がいを持つ方が装着するペースメーカーは、電気や磁力の影響を受けることから、仕事において避けた方がよい環境や作業が存在します。人によっては運動制限が設けられている場合もあり、強度の高い作業が制限されることもあります。
ここでは、主な仕事制限の内容やその理由について解説します。
電気機器を取り扱う仕事
ペースメーカーは、電気機器から発生する電磁波や磁石による電磁干渉によって、動作に影響を及ぼすおそれがあります。そのため、強い電磁波が発生する機器や、高周波の磁力を使用する機器を扱う仕事は避ける必要があります。
▼避けたほうがよい電気機器や作業場所の例
- 溶接器や溶解炉の近く
- マグネット機器や農業機器
- 高出力の工業用機器がある近く
- 高圧電流が流れる変電所
- 高出力のアンテナ付近 など
これらの環境は、ペースメーカーの誤作動を引き起こすリスクがあるため、安全性を考慮して近づかないことが重要となります。
身体の活動量が多い仕事
身体を激しく動かす動作は、ペースメーカーのデバイスやリード部分への影響、植え込み部分への負担などが懸念されるため、一部の仕事が制限されることがあります。
例えば、重い荷物の運搬のように筋肉に強い負荷をかける作業を連続的に行う仕事や、スポーツインストラクターのように身体がぶつかるおそれのある仕事は避ける方がよいとされています。運動制限の程度ついては主治医に確認しておくことが必要です。
自動車運転の仕事
ペースメーカーを装着している方は、自動車の運転が制限される場合があります。医師の許可によって自動車の運転が認められる場合でも、バスやトラックの運転業務については従事は認められていません。
日本不整脈心電学会によると、ペースメーカーを装着している方について、中型免許・大型免許および第二種免許の適性はないとの見解が示されています。
また、電気自動車の急速充電器から発せられる強い電磁波も、ペースメーカーに影響を与える可能性があるため、使用を避けるべきとされています。日常生活で自動車を運転する際は、事前に主治医に相談して許可を得ることが必要です。
出典:警察庁『一定の病気等に係る運転免許関係事務に関する運用上の留意事項について』
ペースメーカーを装着する方が安心して従事できる仕事
ペースメーカーを装着する方でも、安心して働ける仕事はたくさんあります。激しい身体動作を伴わず、電磁波の影響を受けない作業や環境で就労できる仕事を選択することが大切です。ここでは、安心して従事できる仕事内容について紹介します。
オフィスで行える仕事
強い電磁波や磁力を発生させる機器がある施設での業務は、ペースメーカーの動作に影響を与える可能性があるため、避ける必要があります。具体的には、工場やプラント、発電施設、変電所などが挙げられます。
一方、オフィスで完結する仕事は、強い電磁波の影響を避けやすいといえます。パソコンや一般的なOA機器はペースメーカーに影響を与えにくいとされていますが、念のため、取り扱う機器については事前に主治医に確認しておくと安心です。
デスクワークが中心の仕事
ペースメーカーを装着する方は、激しい動作や強い振動・衝撃を受ける可能性がある建設業・運送業などへの従事は避けたほうがよいと考えられます。デスクワークが中心の仕事は、激しい動作による身体への負荷を避けられるため、安心して働くことができます。
▼デスクワークが中心の仕事例
- 事務職(一般事務・経理・人事労務・法務など)
- プログラマー
- Webデザイナー
- イラストレーター など
パソコンを使った業務が基本となる事務職やIT関連の専門職のほか、外回りや移動が少なくオンラインでのコミュニケーションが中心となる営業職、コンサルタントなども選択肢となります。
ペースメーカーを装着する方の就職・転職活動の進め方
ペースメーカーを装着する方が就職・転職活動に取り組む際は、主治医と相談のうえで無理なく働ける就労形態や職種を選択することが大切です。また、就労するうえで職場に求める配慮についても明確に伝える必要があります。
➀就労可否や仕事制限について主治医に相談する
就労可否や仕事制限について、主治医に相談することが欠かせません。
ペースメーカーの手術を終えて間もない方は、体調や植え込み部が安定するまで安静にすることが求められます。仕事の復帰時期や職務内容の制限などには個人差があるため、主治医に相談して指示・助言を踏まえたうえで就職・転職活動を進めましょう。
▼主治医に相談しておくこと
- 希望する職種での就労可否
- 避けたほうがよい仕事内容
- 身体活動量に関する制限
- 手術後から就労可能になるまでの期間 など
②自分に合った就労形態を選択する
主治医によって指示された仕事や身体活動の制限、日常生活での体調の変化、通院のペースなどを踏まえて、自分に合った就労形態を選択します。ペースメーカーを装着する方は、一般雇用または障害者雇用での就労形態を選択できます。
一般雇用で働く
一般雇用で働く場合には、雇用形態や障がいの伝え方によって複数の選択肢があります。
▼一般雇用で就労する場合の選択
- ペースメーカーの装着についてオープンあるいはクローズにするか
- 正社員または非正社員(契約社員・パートタイム労働者・派遣社員など)で働くか
職場に適切な配慮を求める場合には、企業に障がいを持つことをオープンにして選考を受けることが望ましいと考えられます。
また、体調面でフルタイムの勤務が難しい場合や、通院との両立が困難な場合には、勤務時間を柔軟に調整しやすいパートタイムや派遣での働き方を選ぶことも一つです。
障害者雇用枠で働く
ペースメーカーを装着する方は、身体障害者手帳の交付対象となります。身体障害者手帳を取得することで、企業の障害者雇用枠での就労が可能になります。
障害者雇用枠では、一般雇用よりも就職・転職活動がスムーズに進みやすいほか、職場による合理的配慮を受けられるため、自分に合った働き方を実現しやすいメリットがあります。
▼合理的配慮の具体例
- 体力的な負担が少ないデスクワークや身体活動の制限に応じた業務への配置
- 通院のための勤務時間の調整や時差出勤・時短勤務の導入
- 電磁干渉を避けるための物理的な職場環境の整備 など
③自分のスキルや強みを明確にする
ペースメーカーを装着していても活躍できる仕事はたくさんあります。選考において適正な評価を受けるためには、自分のスキルや強みを明確にアピールすることが必要です。
▼強みとなるスキルの例
- 基本的なPCスキル
- これまでの仕事による成果
- 職業訓練の実績
- 保有する資格 など
これまでの職歴や経験から培った能力・技術を具体的に伝えられるように準備しておくことで、企業に入社後の活躍を期待してもらいやすく、業務への適性を判断してもらえます。
④企業側の配慮について確認・相談する
ペースメーカーを装着する方が就労するにあたっては、電磁干渉への対応や身体活動の制限について、職場に適切な配慮を求める必要があります。
入社を希望する企業で面接を受ける際には、自身が求める労働条件や職場環境について伝え、企業側がどのような配慮に対応してくれるか確認することが大切です。
働くうえでの疑問や不安な点について率直に質問しておくことで、入社後のミスマッチを防ぐことにもつながります。
ペースメーカーを装着する方の仕事に関する相談先
「自分に合った就労形態や職種、働き方が分からない」「希望する職種でなかなか内定がもらえない」という方は、ひとりで悩まずに公的機関の支援制度や専門の転職サービスを活用することが有効です。
ハローワークの障害者専門窓口
全国のハローワークには、障がい者専門の窓口が設置されています。
専門の相談員が在籍しているため、心臓機能障がいの内容や希望する働き方を踏まえた就職相談に応じてくれます。
一般雇用および障害者雇用の求人情報の提供をはじめ、履歴書・職務経歴書の書き方や面接の練習など、基礎的な就職活動のサポートも受けることが可能です。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、一般企業への就職を目指す障がい者向けの福祉サービスです。
職業訓練を通じてパソコンスキルやビジネスマナーなどの就職に必要なスキルを身につけることができます。また、履歴書の添削や模擬面接といった就職活動のサポートも充実しているため、ブランクがある方や自分の適性を知りたい方にも適しています。
障がい者雇用専門の転職エージェント
転職エージェントは、求人紹介から選考対策の支援、入社後のフォローまで一貫したサポートを受けられるサービスです。
特に障がい者雇用に特化したエージェントは、独自の求人ネットワークと選考ノウハウを有しており、心臓機能障がいを持つ方が就職・転職活動をスムーズに進められます。
『エージェント・サーナ』は、30年以上の実績を持つ障がい者向けの転職エージェントサービスです。求職者の希望と企業のニーズ・就労環境を把握したうえでマッチングを行うことにより、高い内定率と入社後の定着率を実現しています。
心臓障がいを持つ方が転職に成功した体験談を紹介
ここからは、心臓障がいを持つ方が障がい者のための転職エージェント『エージェント・サーナ』を活用して転職に成功した体験談を紹介します。
【35歳/男性/事務職】外資系企業で未知の職種に挑戦した転職事例
介護施設で働いていた方がペースメーカーの手術をきっかけに臨床検査を行う外資系企業に転職された事例です。
▼転職理由
介護施設で働いていたところ心臓に病気が見つかり、ペースメーカー手術を行うことになりました。医師との相談の結果、身体の負担が少ない内勤仕事への転職を決断しました。
▼転職活動の状況
エージェント・サーナに登録して内勤仕事を希望したところ、外資系の臨床検査を行う企業を紹介してもらいました。面接にも一緒に同行してもらい、雑談を交えながら和やかな雰囲気があったことで自然体で臨めました。その結果、1社目から無事内定をいただきました。
▼転職後の感想
治験に関する知識もほぼなく不安がありましたが、「人の役に立つ仕事」という自分の理念と合い、前向きな気持ちで仕事に取り組めています。治験に関する知識や英語スキルに関する勉強を通じて、新たな分野に挑戦していくことに面白さも感じています。
【46歳/男性/営業サポート】ステップアップを実現した転職事例
派遣社員としてメーカーで営業サポートを行っていた方が、より活躍できる職場への転職でキャリアアップを実現した事例です。
▼転職理由
前職の将来性や今後のキャリアパスを考えるようになった時期に、心臓障がいによって手術を受けることになり、障害者雇用での転職活動を始めました。
▼転職活動の状況
「正社員としてビジネスの基幹業務を担えるやりがいある仕事に就きたい」と考えていましたが、思うような企業と出会えずにいました。そんなときにアドバイザーから同じ職種の会社を紹介され、障がいの有無にかかわらずフェアに仕事を任せてくれる職場と出会うことができました。
▼転職後の感想
メインビジネスにかかわる幅広い業務を任せていただき、やりがいを感じています。障がいのことを気にせずにフラットに接してくれる社内の雰囲気により、気持ちも楽に過ごせています。長く働くことができる会社と出会うことができ満足しています。
まとめ
ペースメーカーを装着する方が仕事と両立するためには、電磁波の干渉を避けられる職場環境や身体的な負担の少ない仕事を選ぶことが大切です。主治医の指示・助言を踏まえて自分に適した職種を選ぶとともに、必要な配慮については明確に伝えることがポイントです。
また、障がいの特性や希望する働き方などに応じて、障害者雇用枠での就労を検討したり、外部の支援制度・サービスを積極的に活用したりすることも重要です。
転職エージェントの『エージェント・サーナ』では、ペースメーカー装着する方の仕事に関する制限や障がいの特性を踏まえて、長く安心して働ける職場への就職・転職をサポートしております。履歴書の添削や面接対策、企業との条件交渉などもお任せください。