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30代での転職は、人生における重要な決断の一つです。特に障がいをお持ちの方にとって、不安が伴いやすいといえます。
30代の障がい者が理想的な転職を実現するには、適切な準備と戦略が重要です。
この記事では、30代の障がい者の転職について、現状や求められるもの、準備、失敗しないコツ、成功例を解説します。
30代の障がい者における転職状況
障がい者として転職を検討している30代の方は、まず現在の障がい者雇用の動向や、自身の年齢が転職市場でどのように評価されるのかを知ることが大切です。
ここでは、障がい者を取り巻く雇用状況と、30代の転職動向について解説します
障がい者全体の雇用者数は年々増加している
近年、障がい者の雇用環境は着実に改善されています。厚生労働省が発表した『令和6年 障害者雇用状況の集計結果』によると、障がい者の雇用者数は継続的に増加傾向にあります。
厚生労働省『令和6年 障害者雇用状況の集計結果』のデータより作成
企業で雇用する障がい者数の割合について規定している法定雇用率は、近年において段階的に引き上げられています。2024年4月に2.5%となっており、2026年7月にはさらに2.7%まで引き上げられることが決定済みです。
法定雇用率の対象となる企業についても拡大が進んでおり、障がい者の積極的な採用につながっていると考えられます。
出典:厚生労働省『令和6年 障害者雇用状況の集計結果』『障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について』
30代後半から転職数は減少傾向
厚生労働省が発表した『令和5年雇用動向調査結果の概況』によると、一般職における転職入職率は、20代から50代にかけて下降しています。
厚生労働省『令和5年雇用動向調査結果の概況』のデータより作成
特に男性の場合、20代後半から30代前半にかけて転職入職率が大きく低下しています。これは、企業が若手人材を求める傾向にあることや、年齢に応じて求められるスキルレベルも高くなることが影響しています。
出典:厚生労働省『令和5年雇用動向調査結果の概況』
30代の転職志望者に求められるもの
30代で転職する場合、20代の転職者とは求められるものが異なります。
30代の転職志望者に求められるもの
- 即戦力になれる経験とスキル
- マネジメントスキル
- 新しい環境に対応できる柔軟性
- 具体的なキャリアプラン など
最も重要なのは、即戦力として機能するだけの十分な経験とスキルです。企業は30代の中途採用者に対して、入社後すぐに業務に貢献できることを期待しています。
特に30代後半の転職者に対しては、チームをまとめるリーダーシップやプロジェクト管理能力といったマネジメントスキルが求められます。
また、新しい環境や業務内容に対応できる柔軟性も必要です。年齢を重ねるほど変化への適応が難しくなるという先入観を払拭するには、学習意欲や変化への対応力をアピールすることが欠かせません。
面接の際には明確なキャリアプランの提示も必要です。「なぜ転職したいのか」「将来どのような働き方を目指すのか」について、具体的で説得力のある説明が求められます。
30代の障がい者が転職活動前にやっておくこと
転職活動を成功させるには、入念な準備が欠かせません。特に30代の転職では、自身の強みやキャリアプランを明確にしておくことが重要です。
ここでは、転職活動を始める前にやっておきたい4つの準備について解説します。
自己分析を深掘りする
転職活動の基盤となるのが、徹底的な自己分析です。
自己分析を行う際は、これまでの職歴を振り返り、自分の強みと弱みを客観的に言語化することから始めます。どのような業務で成果を上げられたのか、どんな場面で困難を感じたのかを具体的に整理することがポイントです。
また、障がいの特性がどのように仕事に影響するかについても冷静に分析する必要があります。加えて、自分の得意分野や興味のある領域、価値観について深く掘り下げておくことも欠かせません。
これらの自己分析は、面接や職務経歴書で活用するだけでなく、自分にとって理想的な職場環境や働き方を見出すためにも重要です。
ライフプラン・キャリアプランを文書化する
漠然とした将来のイメージを文書化し、具体的で実現可能なプランに落とし込みます。
5年後、10年後にどのような働き方をしていたいか、どの程度の収入を得たいか、プライベートとの両立はどう図りたいかなど、詳細に検討することがポイントです。
特に障がいをお持ちの方の場合、ライフステージの変化に合わせて必要な配慮や支援も変わる可能性があるため、それらも含めた長期的な視点でのプランニングが求められます。
プランが明確になることで、転職先選びの軸が定まり、面接での質問に対してより説得力のある回答ができるようになります。
求人条件に優先順位を付ける
職場に求める条件について、優先順位を明確にしておくことが大切です。理想的な条件をすべて満たす求人にこだわって探すことは、現実的ではありません。
給与・勤務地・業務内容・職場環境・福利厚生・キャリアアップの可能性など、様々な要素を検討し、「絶対に譲れない条件」と「妥協できる条件」を区別しておくことがポイントです。特に障がいに関する配慮については、どの部分が必須でどの部分が希望レベルかを整理しておくことで、求人選択の際の判断がスムーズになります。
この作業により、転職活動の効率化と入社後のミスマッチ防止が期待できます。
選考対策を十分にしておく
30代の転職では書類選考の段階から高いクオリティが求められるため、対策が必要です。
履歴書や職務経歴書の書き方、自己PR文の作成方法について十分に研究し、自分の経験やスキルを効果的にアピールできる内容に仕上げる必要があります。
また、面接対策も重要です。よくある質問への回答準備、障がいに関する説明の仕方、逆質問の内容など、さまざまな場面を想定した練習が欠かせません。加えて、基本的なビジネスマナーや身だしなみについても改めて確認しておきます。
これらの準備を怠ると、実力があっても選考で評価されにくくなる可能性があります。
30代の障がい者が転職で失敗しないコツ
ここでは、転職を成功させるためのコツをご紹介します。
30代で障がいをお持ちの方が転職を成功させるためには、企業が求める人材像を理解し、自分の能力を最大限にアピールする工夫が必要です。
企業が求める人材像を把握する
転職を成功させるには、応募企業が求める人材像と自分の持つスキルや性格特性とのマッチングが重要です。
企業研究を徹底的に行い、その会社が重視する価値観や求められる能力を把握します。加えて、業界動向や企業の将来性についても調査し、自分がその組織でどのような貢献ができるかを具体的に考えることが欠かせません。
志望する職種の業務内容を詳しく理解し、自分の経験や能力がどの部分で活かせるかを明確にすることで、面接や書類選考において説得力のあるアピールが行えます。
また、企業文化や職場の雰囲気について事前に情報収集し、自分に合った環境かどうかを確認しておくことも大切です。
自分の障がいについて説明できるよう準備する
面接では、自分の障がいについて十分な説明が求められます。「何ができて、何ができないか」を客観的かつ具体的に伝える準備をしておくことが欠かせません。
また、「職場で配慮してもらいたいこと」についても、具体的で実現可能な内容を整理しておく必要があります。この際、できないことばかりを強調するのではなく、工夫次第でできることや、これまでの職場で実践してきた対処法なども併せて説明できるようにしておくことがポイントです。
企業側が不安に感じる可能性のある点については対策を事前に考え、前向きな解決策とともに提示することで、採用担当者からの理解と信頼につながります。
転職理由はポジティブに伝える
転職理由の説明においては、不満や愚痴などのネガティブな内容を避けてポジティブに伝えることが重要です。
ネガティブな転職理由を伝えると、同じような理由で早期退職することを懸念されてしまいます。特に障がいをお持ちの場合、「障がいが原因で長続きしないのでは」と感じさせてしまう可能性もあります。
「新しい分野にチャレンジしたい」「より専門性を高めたい」「会社の成長に貢献したい」など前向きな動機を中心に据えることがポイントです。
人間性のアピールを忘れない
30代の転職では即戦力としてのスキルが重視されますが、同時にヒューマンスキルも求められます。そのため、協調性・コミュニケーション能力・チームワーク・責任感・誠実さなど、一緒に働く仲間として信頼できる人物だと示せるエピソードの準備が欠かせません。
特に障がいをお持ちの方の場合、周囲との良好な関係性を築けることは、企業側にとって安心材料にもなります。これまでの職場での人間関係や、チームでの成果、後輩指導の経験などを具体例として挙げながら、自分の人柄を自然にアピールすることが有効です。
最後の決め手は熱意
技術的なスキルや経験が同程度の候補者が複数いる場合、最終的な採用の決め手となるのは「働きたい」という強い熱意です。
面接では、入社後の具体的な目標や貢献したい分野について熱く語ることで、採用担当者に強い印象を残せます。「この会社でより重要な仕事に取り組みたい」「自分の能力を最大限に発揮したい」などの前向きな姿勢を示すことが重要です。
また、30代の転職では、自分より年齢の若い上司や同僚の下で働く可能性があります。そのような状況でも謙虚に学ぶ姿勢を持ち、チームの一員として貢献できると示すことも大切です。
30代の転職に成功したケースを紹介
ここでは、障がいを乗り越え、30代で理想の転職を叶えた3名の方の成功事例を紹介します。年齢や障がいの種類、これまでのキャリアはさまざまですが、入念な準備をしたうえで、専門家のサポートも活用している点が共通しています。
O.M(34歳 女性)さんのケース
上下肢障がいをお持ちのO.Mさん(34歳女性)は、8年間勤務した前職からIT会社の企画部へ転職を成功させました。
転職活動では「正社員採用」「健常者と同じ仕事」「業績に応じた評価」の3つを軸に企業選びを実施しました。面接では具体的な成果を数字で示すことを重視し、前職で企画したフェアの売上向上実績を具体的に説明することで内定を獲得しています。
一次のオンライン面接の時点では前職との雰囲気との違いを不安に思うこともありましたが、エージェント・サーナの担当者からのアドバイスで実際に企業を訪れて二次面接に臨んだところ、不安が解消されて入社を決断しました。
現在は派遣社員の勤怠管理や法令順守の確認業務を担当し、フランクで働きやすい職場環境で活躍されています。
N.T(37歳 男性)さんのケース
37歳男性のN.Tさんは前職では一般枠での営業事務として働いていましたが、子育てとの両立が困難なことが転職を決意する要因となりました。
当初は転職活動も一般枠で行っていましたが、妻のアドバイスで障がい者枠での転職に切り替えてエージェント・サーナに登録したことで、転職活動が順調に進みました。希望に沿った会社の紹介を次々と受けられただけでなく、担当者から詳細なアドバイスをもらえたことで、自信を持って面接に臨むことができています。
現在は障がいに理解があり、スキルアップを支援する職場環境で契約社員として勤務し、総務部で多岐にわたる業務を担当しています。
I.M(38歳 女性)さんのケース
I.Mさん(38歳女性)は上下肢障がいにより図書館運営会社を退職し、転職活動を開始しました。
最初はハローワークを利用しましたが書類選考が通らず、エージェント・サーナに登録しました。それまでは自身の障がいと関連する通勤の近さを志望動機に書いていましたが、担当者から「企業理念や事業内容への感想、自分の強みを明記する」とアドバイスを受けたことが、書類選考通過率の向上につながっています。
通勤条件と職種を軸に企業選びを行い、最終的には電車乗り換えなしで30分以内、在宅勤務も可能な大手生命保険グループのコールセンター運営会社の事務職として採用されました。現在はPC作業中心の経営数値入力やホームページ更新業務を担当し、障がい者の先輩として後輩のサポートにも取り組んでいます。
30代の長く勤められる会社探しのためにキャリア・アドバイザーを!
30代での転職では、生活の安定とキャリアアップを両立させるため、長期間勤続できる会社選びが重要となります。一人で転職活動を進めることには限界があるため、特に障がい者の転職には専門的な知識とサポートが欠かせません。
「エージェント・サーナ」は障がい者転職に特化した転職エージェントです。豊富な実績と専門知識を持つキャリア・アドバイザーが、一人ひとりの状況に応じた個別サポートを提供いたします。
障がい特性に配慮した求人の紹介から、面接対策、条件交渉まで、転職活動のあらゆる場面でサポートを受けることができ、安心して転職活動を進めることが可能です。
まとめ
30代での障がい者転職は、適切な準備と戦略があれば十分に成功可能です。転職活動前の準備としては、自己分析、キャリアプランの文書化、求人条件の優先順位付け、選考対策が重要です。また、企業研究の徹底、障がいに関する適切な説明準備、ポジティブな転職理由の構築など、戦略的なアプローチも欠かせません。最終的には、スキルや経験に加えて人間性と熱意が採用の決め手となります。
障がい者転職に特化した「エージェント・サーナ」では、キャリア・アドバイザーのサポートによって、スムーズな転職活動を実現します。納得のいく転職のための万全な準備を支援いたします。