「障害者手帳」の種類について
皆さんは「障害者手帳」をお持ちですか? 障がいがあるからといって、必ずしも持つ必要はありませんが、手帳を持つことによって、選考中や入社後に、障がいに対する配慮をしてもらいやすくなるなど、手帳を取得して良かったという意見もあり、それまで手帳を取得せずにいたけれど、就活を機に取得したという人も多いようです。
「障害者手帳」を取得するまでには、諸々の申請や手続きなどが必要ということもあり、転職活動において手帳を使うか、使わないかを悩む人も多いでしょう。
では、就活における「障害者手帳」の役割をお話しする前に、まず、その種類について確認しておきましょう。
- 身体障害者手帳
「身体障害者福祉法」で定められた障がい程度に該当すると認定された人に対して交付される手帳です。腕・脚のケガや病気、内臓疾患による障がいのある人が対象で、外から見てわかる損傷などの他に、外からは見えない視力低下や血液の疾患なども含まれます。2013年4月より、難病が「障害者総合支援法」の対象に追加されたことにより、国の指定難病の人も対象になります。症状ごとに1級から7級までの等級が設けられていますが、7級の障がいが1つのみでは手帳交付の対象とはなりません(7級の障がいが2つ以上ある場合6級に認定されます)。 - 精神障害者保健福祉手帳
一定程度の精神障がいの状態にあることを認定する手帳です。統合失調症、うつ病・そううつ病などの気分障がい、非定型精神病、てんかん、中毒精神病、器質精神病(精神遅滞を除く)、その他の精神疾患(発達障がいを含み、精神遅滞を伴うものを除く)のある人が対象で、1級から3級に分けられます。 - 療育手帳
知的障がい者(児)が福祉サービスを受ける際に必要な手帳です。知的障がいがある子どもが主な対象で、地域によって、「愛の手帳」(東京都・横浜市)、「みどりの手帳」(埼玉県)、「愛護手帳」(青森県・名古屋市)など、さまざまな名称があります。障がいの程度は、IQ(知能指数)と日常生活動作(身辺処理、移動、コミュニケーションなどの能力のこと)などから総合的に判断、認定されます。
療育手帳は都道府県等の自治体が交付するもので、認定区分は自治体によって異なります。更新期限も交付する都道府県等によって異なります。
手帳を取得するまでの流れ
「障害者手帳」の種類について確認ができたら、その取得方法を知っておきましょう。それぞれの手帳によって取得までの手続きが異なりますので注意が必要です。
- 身体障害者手帳
まず、障がい福祉担当窓口で「身体障害者診断書・意見書」の用紙を入手します。その後、指定医に「身体障害者診断書・意見書」を記入してもらいます。指定医とは、県知事が指定している、診断書の作成ができる医師のことです。医師なら誰でも診断書が出せるわけではないのです。診断書・意見書の記入をしてもらった後は、市区町村の障がい福祉担当窓口で、「交付申請書」、「身体障害者診断書・意見書」、写真を提出し申請を行います。申請後、審査され、障がい等級が決定します。およそ1カ月から4カ月で手帳を受け取れます。
注意したいことは、手帳を受け取るまでに、通常でも1カ月から1カ月半、場合によっては、4カ月ほどかかる可能性もあるということです。転職活動時に利用を考えている場合は、早めに手続きを行うと良いでしょう。 - 精神障害者保健福祉手帳
はじめに、障がい福祉担当窓口で「診断書(精神障害者保健福祉手帳用)」の用紙を入手します。その後、精神疾患の診察をしている主治医・専門医に「診断書」を記入してもらいます。その「診断書」をもとに、市区町村の障がい福祉担当窓口で手帳を申請します。審査の後、障がい等級が決定します。申請から手帳を受け取れるまでには、およそ2カ月かかります。
ここでは、診断書を作る際に注意が必要です。というのも、「初診」から6カ月経過しないと診断書が作れないのです。精神疾患の診察をしている主治医・専門医に記入してもらう診断書は、「精神障がいに係る初診日から6カ月を経過した日以後に作成されたもの」でなければいけないからです。診断書作成日から3カ月以内に申請する必要があることも注意したいものです。
また、精神障害者保健福祉手帳は有効期限が2年間ということも確認が必要です。2年ごとに新たな診断書を添えて手続きを行うことで更新が可能です。 - 療育手帳
まず、療育手帳取得の申請をするとともに、障がい程度の判定の予約を申し込む必要があります。受付は市区町村の障がい福祉担当窓口、または児童相談所になります。そして、障がい程度の判定をするため、心理判定員・小児科医による面接・聞き取りが行われます。その判定結果に基づき、精神保健福祉センターで審査され区分が決定します。その後、手帳が交付されます。
ここで注意したいことは、療育手帳は自治体による施策のため、手帳交付に関する統一の基準がないということです。更新期限や手続き方法など細かな内容が自治体によって異なるので、気になる点は各福祉担当窓口にて確認しましょう。
障害者手帳取得によって受けられる福祉サービス
障害者手帳の種類やその取得方法について、これまでみてきました。それでは、手帳の取得によって、受けることのできる福祉サービスにはどのようなものがあるのでしょうか。
サービスは手帳の種類によってそれぞれ違います。共通のものもあれば、種類別のサービスもあります。
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
【共通で受けられるサービス】
- 所得税、住民税、個人事業税、贈与税などの控除、非課税、軽減
- 健康保険適用時の医療費の助成
- 障がい者求人への応募
- 生活保護の障がい者加算
- NHK受信料の減額
- 保育料の割引
- 美術館や映画館、スポーツセンターなど公共施設のおける利用料の減免 など
【その他 種類別サービス】
- 自動車税、自動車取得税、軽自動車税の減免(身体障がい者、精神障がい者)
- 高速道路など有料道路の料金割引(身体障がい者、知的障がい者)
- 車椅子や補聴器の補助金(身体障がい者)
- 駐車禁止除外指定車標章の交付(身体障がい者)
- 都営地下鉄の運賃割引(知的障がい者) など
このように障害者手帳を取得することで、公共サービスの割引や各種費用の助成、減額、減免などの対象となります。
ただ、一概に身体障がいや精神障がい、知的障がいと言っても、等級によってサービスの程度が異なったり、自治体によってもサービスに差があるようです。
そのため、障害者手帳によるサービス利用の際は、各自治体や施設などの確認が必要です。
応募の際に、「障害者手帳」を使うかどうかは自分次第
「障害者手帳」について、中には、手帳を持っているから、選考時にそのことを必ず伝えなければいけないと思っている人がいるかもしれません。しかし、それは間違いです。障害者手帳を持っていても、それを伏せたまま選考を進めることはできますし、入社時に障がいがあることを申告する必要もありません。
では、転職活動における手帳の役割は何なのでしょうか。はじめに、お伝えしたいことは障害者手帳の有無によって、転職活動に大きな違いは生まれないということです。企業研究や自己分析を通じ、活動の軸を明確にすること。そして、履歴書や職務経歴書、面接から実際に企業とのマッチングを図り、入社にいたるという、仕事探しのプロセスにおいても手帳の有無は関係しないといえます。
そのうえで、手帳を提示することは、自分のことを知ってもらう一つの手段であるといえるでしょう。提示することで、障がいによってできないことや不得意なこと、必要な配慮を人事担当者や職場の人に知ってもらうことができます。そのことで、選考中には面接会場や時間などの配慮を、職場では勤務地や通勤時間、通院などの配慮を受けやすくなることにつながります。
どのような働き方を望むのかをしっかりと考えたうえで、応募の際に、障害者手帳を使うかどうかを決めると良いでしょう。