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「在宅ワーク」とは?意外と知らない「在宅勤務」との違い
新型コロナの拡大で一気に広まった在宅ワークの流れ。この働き方の流れは、新型コロナの収束後も継続する企業が増えることは間違いないでしょう。ただ、この「在宅ワーク」と「在宅勤務」を混同して使うケースが見かけらます。実は、この2つは様々な定義がありますが、基本的には異なる働き方と捉えていいでしょう。
まず、「在宅ワーク」とは、国が推進しているテレワークが中心です。テレワークとは、インターネットを活用して会社やオフィスに通勤せずに行うことができる働き方です。積極的なテレワークの導入はインターネットが普及した1990年代に欧米で取り入れられました。在宅で働くことは交通渋滞の緩和や排気ガスの低減にもつながるなど環境的なメリットがあります。
一方の「在宅勤務」は、広義では在宅ワークといえますが、在宅勤務の方が限定的と捉えるケースが多いようです。一般的な在宅勤務は、会社と雇用契約を結んだうえで、パソコンなどでできる仕事を在宅で行うというものです。こうした在宅勤務の仕事は、在宅勤務のみでの募集と、在宅勤務か通常の勤務を選べる“在宅勤務可”のケースがあります。
障がい者における在宅ワークのメリットとデメリット
障がい者における在宅ワークのメリット
では、障がい者が在宅ワークを行う場合、どのようなメリットがあるのかを考えていきたいと思います。
まず最大のメリットは、「通勤しなくていい」という点です。障がい内容によっては、通勤は心身ともに大きな負担になります。ところが在宅ワークにより公共交通機関のラッシュアワーや車の渋滞を避けることができ、朝も出かける準備をしなくてもよいので、かなりの負担軽減になります。
さらに、フルで在宅ワークになれば、会社へ通勤できる場所に住む必要がなくなり、賃料の安い地域や家族の都合などに合わせて、自由に住む場所を決められるというメリットも生まれます。
そしてもう一つは、普段生活している「慣れた環境で仕事ができる」という点です。身だしなみを整える負担も最低限ですみ、自分が楽な服装で仕事ができるのもメリットの一つです。
障がい者における在宅ワークのデメリット
逆にデメリットという視点から考えてみましょう。まず、自分の住み慣れた環境というのがデメリットに転じる可能性があるということです。住み慣れているプライベートの空間ですから、仕事とプライベートの切り替えが難しいということが挙げられます。
また、職場の仲間とオンラインでつながってはいますが、同じ空間で働くよりはコミュニケーションが取りづらくなるというデメリットもあります。
しかも在宅ワークの評価は成果主義であるケースも多く、仕事の時間配分や業務の効率化が、以前に増しても求められるようになります。そのため仕事と私生活にメリハリをつけることを意識的に行うことが必要でしょう。つまり、在宅ワークでは、今まで以上に仕事時間や仕事量を管理する自己管理力が求められることになります。
障がい者雇用をする事業者視点で考えた場合
これまでは働く側の視点から在宅ワークをみてきましたが、今度は事業者視点から考えてみます。
まず、障がい者の在宅ワークのメリットでは、障がい者が働きやすい環境を整備するためのコストが削減できるということがあります。例えば、設備のバリアフリー化はもちろん、疲れやすい人のための休憩室や仮眠室、気が散りやすい人のための個室ワーキングスペースなどの設置にかかるコストがなくなります。
また、在宅ワークになれば、働く場所が限定されないので、より広い地域から優秀な人材を採用できることにつながります。特に障がい者採用は、首都圏など企業が多い地域で採用が激化して、人材確保が難しい状況になっています。逆に通勤の難しい地域では、障がい者を採用したくても応募者がいないというケースも珍しくありません。
そんな事業者の障がい者採用に対する悩みや課題を、在宅テレワークは解決する手段としても有効といえるでしょう。
ただし、事業者にとっても在宅テレワークはメリットばかりではありません。いくつかのデメリットもあります。例えば、職場で一緒に働いていれば業務の状況や体調の変化にもすぐ気づくことができますが、在宅ワークでは自己管理に任せることになるので気づきづらくなります。
こうしたデメリットに対しては、こまめにオンラインで相談に乗ったり、オンラインで活用できる支援ツールを導入するなど、きめ細やかな対応でケアすることが事業者に求められます。
在宅でできる仕事の種類
次に、在宅ワークをする場合、具体的にどんな仕事があるのかを探っていきましょう。ここでは企業に在籍しているしていないの有無に関わらず、在宅ワークに向いている主な業務を取り上げていきます。
PCを使ったデータ入力等の事務業務
一般的な業務にパソコンを使った「データ入力」があります。またデータ入力といってもその種類は多彩で、名刺などの顧客管理、企業情報の入力、音声データの入力など様々です。こうした入力には、主にWord、Excel、PowerPointといったOfficeを使えるスキルがあればできます。
専門知識が求められるプログラミングやデザイン業務
専門的なスキルが必要になりますが、在宅ワークと親和性が高い仕事がプログラミングやWebデザインやグラフィックデザインの仕事です。
コロナ禍になりデジタル化が進む現在、様々なサービスがオンライン化、DX(デジタルトランスフォーメーション)化しています。その際に必要になるのがプログラミングです。特にIoTやAIなどの分野ではエンジニアが足りないという社会的な課題があります。こうした専門知識を身につけることで、就業の機会は大きく広がることになります。
Webデザイナーやグラフィックデザイナーなどのデザイン業務のニーズも高まっています。自分でデザインを考え、描く業務ですから、在宅ワークに向いている職種の一つといえるでしょう。
WEBまわりのライティング業務や編集業務
同じようにWebサイトの記事を作成するライティング業務や編集業務なども、在宅ワークで行う人が多い分野です。Webサイトの内容も多種多様で、企業などのホームページから商品サイト、子育てや美容などに特化したポータルサイトなど、専門知識や文章力を活かして行うことができます。
隙間時間に気軽にできる軽作業/モニター業務
また、在宅で空いている時間で行える業務もあります。例えば、カプセル詰めや封入、検品作業も在宅でできるものがあります。こちらは本業の合間で行えるので、副職を認めている企業なら内職として行うのに適しています。
本業の合間にできる業務では、その他にはアンケートモニターも一般的といえるでしょう。モニター募集をしているサイトに登録し、送られてきた質問に回答するアルバイト的な仕事です。こちらも副収入を得るための仕事として考えられます。
「自分に合った在宅ワーク」を実現するために必要なステップ
求められるスキルを養う
ここで取り上げたような業務をしたいという人は、各業務に必要なスキルを身につけることが必要です。例えば、プログラミングやデザイン業務は専門的な知識や技術を身につけなければ業務は遂行できません。独学で行うことも不可能ではありませんが、早くスキルを修得するのであれば学校に通うことが近道といえるでしょう。
また、データ入力やライティング業務については、パソコンの操作は必要ですが、とくに専門的な知識は求められません。ライティングは自分が得意な分野の知識を活かしていくことがポイントになります
様々なサービスを駆使して、自分に合った在宅ワークを見つける
このように主な在宅でできる仕事を取り上げましたが、その他にも様々な仕事があるので、自分の興味や得意分野と照らし合わせながら、探してはどうでしょうか。
その時に活用したいのが専門機関の各種サービスです。例えば、ハローワークもそのひとつです。ハローワークでは障がい者を対象に、在宅勤務がある事業所の求人を探す場合に便利です。
そして、豊富な企業情報ときめ細やかなサポートで、注目されているのが障がい者と企業のマッチングを図る障がい者を対象にした就職・転職エージェントです。「エージェントサーナ」などの障がい者と企業を結ぶ障がい者向けの就職・転職エージェントは、障がい者の就労サポートを無料で行っており、多くの人が利用しています。
その理由はいくつかありますが、障がい者向けの就職・転職エージェントは、障がい者の障がいに対する知識を備えているのと同時に、障がい者を雇用したい企業のニーズを把握している点が挙げられます。さらに障がい者の就労相談をする専門スタッフが在籍し、寄り添いながら適切なアドバイスやアフターケアを行ってくれる点などがあります。
いずれにしても、障がい者一人ひとりの考え方や状況に応じた柔軟な対応でサポートしてくれる障がい者向けの就職・転職エージェントを活用することで、自分に合った企業や在宅ワークが見つかる可能性は高いといえるでしょう。
在宅ワークができる環境を整える
在宅ワークができる求人情報を収集すると同時に、在宅ワークができる環境を整えるようにしたいところです。ここでいう在宅ワークができる環境とは、オンラインで仕事ができるインターネット環境の整備だけではありません。
何よりも大切になるのが、自己管理です。当然のことですが、在宅ワークは一人で業務を行わなければならず、オフィスと違って近くにサポートしてくれる人はいません。そこで一人ではできないことや苦手なことを洗い出し、その対策を事前に考えておくことが大切です。その際は、在宅ワークで必要になる支援機器やコミュニケーションソフトなどもピックアップしておきましょう。
また、自己管理できるスキルも問われますから、オンとオフの切り替えを上手に行うなど、自分自身をコントロールできるようにしておきたいところです。
(番外編)
障がい者の在宅ワーク推進で企業が行うべきこと
障がい者のテレワークが拡大することで、課題も発生しています。体調の変化に気づきにくい、一人だと業務遂行に支障が出やすいといったものですが、こうした課題を解決するためには、まず人事や情報システム、実際に障がい者が所属する部門が参加したプロジェクトチームを発足させることが重要です。そのうえで、勤務規定、障がい者が在宅ワークする時に必要な支援機器やソフトの検討、困った時のヘルプデスクの設置などの対応策を検討します。
とくに支援ツールの導入では、肢体不自由、視覚障がい、聴覚障がい・言語障がい、精神障がい・発達障がいなど、障がい別にきめ細かく対応することが大切です。また、在宅ワークではコミュニケーション不足になりがちなので、遠隔コミュニケーションができるWeb会議システムなどの環境と支援機器を上手に融合させながら、スムーズに意思疎通が図れる環境をつくることが重要になります
参照元:厚労省_「障がい者の在宅雇用導入ブック」
まとめ
ここまで障がい者が在宅ワークをする時のメリットとデメリットから、具体的な職種、そして実際に行う際の注意点などを取り上げました。
また、在宅ワークの求人の探し方についても言及しました。こうした点をポイントにしながら、今後さらに浸透する在宅ワークという働き方に備えましょう。