「障害者トライアル雇用」とはどんな制度なのか?
「障害者トライアル雇用」は、障がい者を原則3カ月間試行雇用することで、適性や能力を見極め、継続雇用のきっかけにすることを目的とした制度です。
この制度を利用できるのは、「障害者の雇用の促進等に関する法律第2条第1号」に定める障がい者に該当する人が対象で、障がいの原因や障がいの種類は問いません。
では、どのような求職者が「障害者トライアル雇用」の対象となるのでしょうか。次のいずれかの要件を満たし、「障害者トライアル雇用」を希望した人が対象となることが定められています。
- 紹介日の前日から過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している人
- 紹介日の前日時点で、離職している期間が1年を超えている人
- 妊娠、出産・育児を理由に離職し、紹介日の前日時点で、安定した職業に就いていない期間が1年を超えている人
- 紹介日時点で、ニートやフリーター等で45歳未満の人
- 紹介日時点で、就職の援助を行うに当たって、特別な配慮を要する人(生活保護受給者、母子家庭の母等、父子家庭の父、日雇労働者、季節労働者、中国残留邦人等永住帰国者、ホームレス、住居喪失不安定就労者、生活困窮者)
一方、事業主は、「障害者トライアル雇用」求人を事前にハローワークなどに提出し、これらの紹介によって対象者を原則3カ月の有期雇用で雇い入れ、一定の要件を満たした場合、助成金を受けることができます。この場合の助成金は対象者1人当たり、月額最大4万円、最長3カ月です。また、精神障がい者を初めて雇用する場合は、月額8万円の助成金を受け取ることができます。精神障がい者は最大12カ月トライアル雇用期間を設けることができます。ただし、助成金支給対象期間は3カ月間に限ります。
また、障がい者のなかで、短時間であれば働ける方を試行的に雇用する制度もあります。それが「障害者短時間トライアル雇用」制度です。精神障がい者や発達障がい者で、週20時間以上での勤務が難しい人を雇用する場合、週10~20時間の短時間での試行雇用から開始して職場への適応状況や体調などに応じて、トライアル雇用期間中に20時間以上の就労をめざします。ちなみに同制度の事業主に支給される助成金は、対象者1人当たり、月額最大2万円(最長12カ月)になります。
ジョブコーチ支援を併用した障がい者の就労支援が可能
では具体的にどのような流れで「障害者トライアル雇用」を利用できるのでしょうか。まず事業主は「障害者トライアル雇用」の求人申し込みをハローワークにて行います。その後、ハローワークから紹介を受け、継続雇用契約を締結した場合、「障害者トライアル雇用」開始日から2週間以内に対象者を紹介したハローワークに実施計画を提出。実施計画を提出する際は雇用契約書など労働条件が確認できるものを書類として添付することが義務付けられています。
また、「障害者トライアル雇用」を活用しながら、同時にジョブコーチ支援を受けることもできます。つまり、3カ月の試行期間中にジョブコーチから障がい者が就業できるように、障がい特性に応じた働き方のアドバイスをはじめ、働きやすい環境づくりのアドバイスなどを受けることができます。さらに継続雇用に移行した後も、「障害者就業・生活支援センター」などから引き続き支援を受けられるなど、求職者と事業主にとって心強い支援体制といえるでしょう。
このように「障害者トライアル雇用」と「ジョブコーチ制度」などを活用しながら障がい者の就労を推進することで、これまで障がい者の雇用に積極的ではなかった事業主も安心して活動ができるなど、すでに広く定着した制度として全国で活用されているようです。
求職者と事業主の双方にメリットのある「障害者トライアル雇用」
「障害者トライアル雇用」は求職者と事業主の双方にとってメリットがあるのはいうまでもありません。まず求職者にとっては、新しい職業に就くチャンスを得ることができます。同時に、新しい職業に適性があるか否かを試行期間中に探ることも可能です。つまり、自分自身の適性と職業のマッチングという点でとても優れた制度といえます。この制度を活用することで新しい仕事に対する不安を払しょくできるという効果もあるでしょう。
事業主にとっては、求職者の試行期間中に適性を見極めたり、仕事に対する姿勢などを知ることができるというメリットがあります。こうした特徴から、障がい者雇用の経験がない事業主の不安を解消することにも役立ちます。さらに、一定の要件を満たした場合は助成金が得られるという、財政的な支援を受けることができます。また、これまで同制度を利用した事業主の多くがトライアル雇用後に継続して雇用するなど一定の成果を収めており、障がい者雇用において有効な手段といえるでしょう。
このように、さまざまなメリットがある「障害者トライアル雇用」は、障がいのある求職者にとって大きなメリットをもたらすので、初めての職業にチャレンジする際は、ハローワークなどに確認してみてはいかがでしょうか。