身体障がい者の雇用状況は近年大きく改善し、2024年には過去最高の雇用数・雇用率を記録しました。法定雇用率の引き上げや制度改正により、企業の障がい者雇用への取り組みも活発化しており、転職市場においても多くの機会が生まれています。
この記事では、最新の雇用データと制度変更を踏まえ、身体障がい者の方が転職を成功させるための具体的なポイントを解説します。
目次
身体障がい者雇用の現状
厚生労働省が発表した2024年(令和6年)のデータによると、民間企業における雇用障がい者数は67万7,461.5人(前年比2.41%の増加)、実雇用率は2.41%といずれも過去最高を更新しています。
雇用数、雇用率の増加は、仕事を見つけるチャンスの増加と捉えてよいでしょう。
また、雇用障がい者のうち、障がいによる内訳は以下の通りです。
雇用人数 | 前年比 | |
身体障がい者 | 368,949.0人 | 2.4%増 |
知的障がい者 | 157,795.5人 | 4.0%増 |
精神障がい者 | 150,717.0人 | 15.7%増 |
さらに企業規模別で見た雇用障がい者の常用労働者数は、以下の通りです。
常用労働者数 | 前年の雇用人数 | |
40.0~43.5人未満規模の企業 | 4,962.5人 | 2024年より報告対象に |
43.5~100人未満規模の企業 | 73,317.5人 | 70,302.5人 |
100~300人未満規模の企業 | 124,637.0人 | 122,195.0人 |
300~500人未満規模の企業 | 57,178.5人 | 54,084.5人 |
500~1,000人未満規模の企業 | 76,515.5人 | 73,435.5人 |
1,000人以上規模の企業 | 340,850.5人 | 322,160.5人 |
いずれも、前年からの増加が認められます。精神障がい者の割合が増加した背景は、2018年から精神障がい者が雇用義務の対象になったことや、障がいとしての認知・理解が広がったことなどが挙げられるでしょう。
2023年(令和5年)の身体障がい者の雇用状況
身体障がい者の雇用状況について、より詳しく見ていきましょう。2024年(令和6年)のデータについては詳細が発表されていないため、2023年(令和5年)の集計結果をもとにしています。
職業別の雇用状況
職業 | 割合 |
事務の職業 | 26.3% |
生産工程の職業 | 15.0% |
サービスの職業 | 13.5% |
専門的・技術的職業 | 11.7% |
販売の職業 | 7.2% |
運搬・清掃・包装等の職業 | 6.7% |
管理的職業 | 5.7% |
輸送・機械運転の職業 | 2.4% |
建設・採掘の職業 | 2.2% |
保安の職業 | 1.1% |
農林漁業の職業 | 0.4% |
無回答 | 7.7% |
事務の職業、専門的・技術的職業、サービスの職業、運搬・清掃・包装等の職業が続き、これらで全体の約5割を占めています。さらに、上位5職業で全体の約7割を占めていることがわかります。
雇用形態・労働時間別の雇用状況
労働時間別に見た雇用状況は、以下の通りです。
労働時間 | 割合(%) |
通常(30時間以上) | 75.1% |
20時間以上30時間未満 | 15.6% |
10時間以上20時間未満 | 7.2% |
10時間未満 | 1.2% |
無回答 | 0.8% |
契約の形式別に見ると、無期契約の正社員が53.2%、有期契約の正社員が3.2%、無期契約の正社員以外が15.6%、有期契約の正社員以外が22.6%、無回答が0.5%となっています。
週所定労働時間別の月間総実労働時間の平均は、通常(30時間以上)の者が150.6時間、20時間以上30時間未満の者が99.1時間、10時間以上20時間未満の者が61.0時間, 10時間未満の者が27.8時間という結果でした。
産業別の雇用状況
産業別に見た雇用状況は、以下の通りです。
産業 | 割合 |
製造業 | 21.3% |
卸売業・小売業 | 21.2% |
サービス業 | 14.9% |
医療、福祉 | 11.0% |
運輸業・郵便業 | 8.4% |
建設業 | 6.5% |
宿泊業、飲食サービス業 | 4.1% |
情報通信業 | 3.1% |
金融業・保険業 | 2.7% |
教育・学習支援業 | 2.3% |
不動産業・物品賃貸業 | 1.8% |
複合サービス事業 | 1.6% |
農業・林業 | 0.5% |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 0.5% |
漁業 | 0.0% |
鉱業、採石業、砂利採取業 | 0.0% |
製造業(21.3%)、卸売業・小売業(21.2%)が続き、これらの上位4産業で全体の約7割を占めています。一方で第1次産業(農業・林業、漁業)や鉱業の割合は非常に低く、産業構造の変化を反映しているといえるでしょう。
障がいの種類や程度別
障害種別 | 割合 |
肢体不自由 | 35.4% |
内部障害 | 30.6% |
聴覚言語障害 | 12.2% |
視覚障害 | 7.5% |
重複障害 | 5.4% |
不明・無回答 | 8.9% |
肢体不自由と内部障がいが、全体の約3分の2を占めています。
また、障がいの程度別で見ると、重度(1・2級)が最も高い割合を占めており、中度(32.6%)と合わせると全体の約77%が中度以上の障がい者であることがわかります。
項目 | 割合 |
重度(1・2級) | 44.4% |
中度(3・4級) | 32.6% |
軽度(5・6級) | 15.1% |
不明・無回答 | 7.9% |
これは、より支援が必要な重度・中度の障がい者が調査対象の中心となっていることを示しており、支援制度やサービスの充実が重要であることを示唆しています。
賃金の状況
身体障がい者の賃金を見ると、1か月の平均賃金は23万5,000円(超過勤務手当を除く所定内給与額は22万3,000円)となっています。時間別の平均賃金は、以下の通りです。
項目 | 金額 |
通常(30時間以上) | 26万8,000円 |
20時間以上30時間未満 | 16万2,000円 |
10時間以上20時間未満 | 10万7,000円 |
10時間未満 | 6万7,000円 |
短時間勤務の身体障がい者が多いことを示しており、労働時間の確保が賃金向上の重要な要因であることがわかります。フルタイム勤務可能な身体障がい者への支援強化が課題といえるでしょう。
なお、賃金の支払形態は、月給制が65.7%、日給制が4.1%、時間給が27.3%、その他が1.6%、無回答が1.3%でした。
2024年~25年の障がい者雇用に関する変更点
2024年から2025年にかけて、障がい者の雇用に関する法改正や制度の変更がいくつか行われています。法定雇用率の引き上げや特定短時間労働者の算定方法変更など、企業の雇用義務に大きな影響を与える重要な改正が含まれています。
法定雇用率の引き上げ
一定の従業員数を抱える企業は、従業員における障がい者の割合を法定雇用率以上にしなければなりません。法定雇用率を達成した企業には報奨金や助成金が支給される一方で、義務があるにもかかわらず未達成な企業からは納付金が徴収されます。
また、2024年から2026年にかけて法定雇用率は引き上げられ、法定雇用率の対象となる企業は拡大されることが決まっています。具体的には以下の通りです。
2023年度 | 2024年度 | 2026年7月以降 | |
法定雇用率 | 2.3% | 2.5% | 2.7% |
法定雇用率の対象となる企業 | 従業員が43.5人以上 | 従業員が40人以上 | 従業員が37.5人以上 |
この段階的な引き上げにより、より多くの企業で障がい者雇用が促進されることが期待されています。
特定短時間労働者が実雇用率に算定・特例給付金の廃止
2024年(令和6年)4月より、週所定労働時間が10時間以上20時間未満の重度身体障がい者・重度知的障がい者・精神障がい者を、雇用率上0.5ポイントとしてカウントできるようになりました。これは短時間労働を希望する障がい者の雇用機会拡大につながります。
また、これに伴い週所定労働時間10時間以上20時間未満の障がい者を対象とした特例給付金が廃止されています。
障害者雇用調整金・報奨金の支給が減額
2024年度の実績に基づく2025年度の支給から、障害者雇用調整金および報奨金の一部が減額されることになりました。これは、障がい者雇用が一定数を超えた場合に適用されます。具体的な変更点は以下の通りです。
- 障害者雇用調整金:
支給対象人数が10人を超える場合は29,000円から23,000円に
- 報奨金:
支給対象人数が35人を超える場合は21,000円から16,000円に
これらの変更は、より多くの企業が最低限の法定雇用率を達成することを促し、雇用調整金や報奨金に頼りすぎない障がい者雇用を推進するための措置と考えられます。
除外率の引き下げ
特定の業種においてはその業務の性質上、障がい者の雇用が難しい状況を考慮し、法定雇用率の適用が馴染まないとされてきました。そのため、業種ごとに設定された「除外率」を労働者数に乗じることで、雇用義務を軽減する仕組みがあります。
2025年7月以降の除外率は、以下の通りに引き下げられます。
業種 | 変更前の除外率 | 変更後の除外率 |
非鉄金属製造業、倉庫業、国内電気通信業など | 5% | 廃止 |
採石業、砂・砂利・玉石採取業 、水運業など | 10% | 廃止 |
非鉄金属第一次製錬、精製業・貨物運送取扱業 | 15% | 5% |
建設業、鉄鋼業、道路貨物運送業など | 20% | 10% |
港湾運送業、警備業 | 25% | 15% |
鉄道業、医療業、介護老人保健施設など | 30% | 20% |
狩猟業を除く林業 | 35% | 25% |
金属鉱業、児童福祉事業 | 40% | 30% |
視覚障害者に対する教育を行う学校を除く特別支援学校 | 45% | 35% |
石炭、亜炭鉱業 | 50% | 40% |
道路旅客運送業、小学校 | 55% | 45% |
幼稚園、幼保連携型認定こども園 | 60% | 50% |
船員などによる船舶運航等の事業 | 80% | 70% |
この除外率自体は2002年(平成14年)に廃止が決定されており、障がい者雇用推進のために、今後段階的に引き下げられる予定です。
企業支援や助成金の拡充
障がい者雇用に関する制度変更は、企業側の負担増だけでなく、雇用を促進するための支援策も同時に進められています。2024年4月以降、以下の支援策が新設・拡充されており、企業が障がい者雇用に取り組みやすくなるよう配慮されています。
支援策 | 支援の内容 |
障害者雇用相談援助事業 | 障がい者雇用の経験やノウハウを有する認定事業者から、障がい者の雇用管理について相談援助を無料で受けられる |
助成金の拡充および新設 |
|
これらの変更は主に企業側に大きく影響するものの、障がいのある方が転職先を選ぶ際や面接に臨む際に、これらの知識が役立つ可能性もあります。企業の障がい者雇用に対する姿勢や取り組みを理解することで、より自分に合った職場を見つけやすくなるでしょう。
【障がい者特化の転職エージェント】Agent Sanaが考える雇用の変化
障がい者の雇用率は公的なデータでも分かるように、大きく変化をしています。
転職エージェントであるAgent Sanaは、30年にわたり数々の求職者の転職支援を行ってまいりました。最近では高年収や管理職の求人も増加しており、転職者にも十分転職のチャンスがあるといえます。
弊社であった成約事例を挙げると、経理や法務職にて、年収600万円以上の転職者のご支援を実現しました。こうした事例が増加した背景には、障がい者採用において企業から障がい者に求められることが増加していることが挙げられます。
今後はますます経験やスキルを持っている人材の採用は増加していくと考えられているため、自身のキャリアを見つめ直したい方やキャリアアップをしたい方はご相談をください。
身体障がいのある方の就職を支援する各種機関やサービス
企業では多くの身体障がい者が働き、障がい内容や一人ひとりの状況に合わせた合理的配慮を行うことで、能力を発揮していることがわかります。では、身体障がい者が就職をするためには、どんな方法があるのでしょうか。
ハローワークの活用
まず、公的機関のサービスを利用するという方法があります。
厚生労働省の令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書によると、事業者が身体障がい者を採用するために連携を求めた機関として、公共職業安定所(ハローワーク)が79.2%に上っています。それだけ障がい者の求人情報があると考えられるため、自分にマッチした企業が見つけやすくなるでしょう。
就職・転職エージェントの活用
次に、民間の無料サービスを利用するという方法があります。代表的なサービスが、障がい者と企業のマッチングを図る障がい者を対象にした就職・転職エージェントです。
「エージェント・サーナ」のような就職・転職エージェントでは、多くの企業とのつながりから膨大な障がい者の求人情報を保有しているため、自分に合った企業を見つけやすい点がメリットです。
また、企業選びのポイントから、選考過程における提出書類の書き方や添削、何よりも重要になる面接での障がい内容の適切な伝え方や自己アピールのポイントなどをアドバイス、さらには面接のセッティングまでコーディネートしてくれます。
こうした一人ひとりに寄り添いながら適切なアドバイスやアフターケアをしてくれるので、安心して就職活動に臨めます。
初めての方へ | 障者者の求人をお探しなら転職エージェントへ
地域障害者職業センターの活用
また、ハローワーク以外の公的機関を活用するという方法もあります。その代表的な機関が、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、就労移行支援事業所です。
まず、地域障害者職業センターは、全国の都道府県に最低1か所ずつ設置されている障がいのある人に対して専門的な職業リハビリテーションを提供する施設です。ハローワークや企業、医療・福祉機関と連携し、就職を希望する障がい者の一人ひとりのニーズに合わせた専門性の高い職業リハビリテーションを行っています。
障害者就業・生活支援センターの活用
同じように障害者就業・生活支援センターは、障がい者の身近な地域において就業面と生活面の一体的な相談・支援を行う公的機関です。
具体的な就業面での支援は、就業に対する相談支援として就職に向けた準備支援(職業準備訓練、職場実習のあっせん)、就職活動の支援、職場定着に向けた支援などです。事業者に対しても、それぞれの障がい特性を踏まえた雇用管理の助言を行っています。
また、生活面の支援では、日常生活や地域生活に関する助言を行い、生活習慣の形成や健康管理などの自己管理に関する支援を行っています。
就労移行支援事業所の活用
就労移行支援事業所は、障がいのある方の一般企業への支援を行う通所型の福祉サービスを行う機関です。この就労移行支援事業所は地方自治体から指定を受けてサービスを提供する機関で、全国に約3,300か所以上の施設があります。
就労移行支援事業所では、一般企業で働ける力を身につける職業訓練や就職活動のサポート、そして就職後には職場定着サポートを受けることが可能です。
職業訓練では、職業スキルはもちろん、体調管理やコミュニケーション力など継続して働くために必要な知識やスキルを学びます。就職活動の支援は、キャリアカウンセリングや応募書類作成、面接対策などのサポートです。
身体障がい者が仕事を選ぶ際のポイント
最後に身体障がい者が就職・転職時に仕事を選ぶ際のポイントをまとめます。適切な職場選びは、長期的なキャリア形成において非常に重要です。
障がい者雇用枠の利用を検討する
前述の通り、一定規模以上の企業には障がい者を雇用する義務があります。企業に障がいを明示しない、あるいは明示したうえでの一般雇用も可能ですが、労働時に配慮を求めるなら障がい者雇用枠の利用を検討しましょう。障がい者雇用枠では職場での配慮を前提とした雇用となるため、安心して働けます。
障がいがあっても働きやすい設備があるかを調べる
障がいの種類や程度によって、必要となる設備は異なります。
例えば、車いすを利用する方であればバリアフリーの環境、視覚障がいの方であれば点字ブロックや音声案内など、個々の障がいに合わせた設備が重要です。
求人情報や企業見学などを通じて、働きやすい環境が整っているか、必要な配慮がされているかを事前に確認します。既に一定数の障がい者雇用の実績がある企業であれば、体制が整っている可能性も高いでしょう。
障がいについて話せる環境があるかを確認する
障がいは一人ひとり違うため、他の障がい者の方には問題がなくても、自分にとってはストレスの原因になることがあるでしょう。例えば、特定の音に敏感である、座りっぱなしの作業が困難であるなど、個人的な特性による配慮が必要な場合もあります。
会社内でご自身の障がいについて具体的に説明し、必要な要望を伝えられる環境があるかどうかの確認が重要です。また、ご自身から積極的に説明し、理解を求める姿勢も大切です。
キャリアプランを立てる
キャリアプランとは、将来の仕事の目標を明確にして達成するための計画のことです。キャリアプランを立てることで明確な目的意識ができるため、スキル向上や仕事を頑張る原動力になります。
キャリアプランが不明確な場合、自己成長の機会を失ったり、モチベーションを保てなかったり、キャリアが行き詰まったりなどのおそれがあります。就職や転職後に後悔しないよう、目標を明確にしたキャリアプランを立てましょう。
専門家の客観的な意見を受け入れる
キャリアについて相談できる専門家にアドバイスを求め受け入れることも重要です。自身が考えるキャリアプランを相談し、現実的に叶うのかなどのアドバイスをもらえます。
エージェント・サーナでは、実際の求人の紹介や転職市場をもとにした的確なアドバイスが可能です。自身のキャリアプランを実現できるか、軌道修正が必要なのかを見極めることも可能です。
転職サポート自体は無料で受けられ、障がいや状況、希望、キャリアプランを加味した求人を提案します。
キャリア・アドバイザーとの面談について | 障害者の転職エージェント【エージェント・サーナ】
まとめ
本記事では、身体障がい者の雇用状況や関連する法改正、そして仕事選びのポイントを詳しく解説しました。
障がい者の雇用は着実に進んでおり、働くチャンスは広がっています。一方でそのチャンスを最大限に活かすためには、自身の障がい特性を理解し、適切な職場選びとキャリアプランを立てることが不可欠です。1人で悩まず、専門家や支援機関を積極的に活用することで、あなたにぴったりの仕事を見つけられるでしょう。
エージェント・サーナでは、身体障がいのある方の転職を専門的にサポートしています。遠方にお住まいの方や外出が難しい方でも安心してご相談いただけるよう、Web面談を実施しています。
障がいの状況や希望をじっくりお伺いし、最適な求人のご紹介から選考対策まで、無料で徹底的にサポートいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。