
障がいのある方が就職・転職活動に活用できる公的機関の一つに「ハローワーク(公共職業安定所)」があります。
身体障害者手帳を持っている方は、ハローワークに登録することで「障害者雇用枠」の求人紹介を受けられるようになり、仕事探しに役立てられます。
しかし、「ハローワークで自分に合った仕事が見つかるのか」「障害者登録によって労働条件や待遇が悪くならないか」などの不安から登録を迷ってしまう方も少なくありません。
この記事では、ハローワークの障害者登録の仕組みや知っておきたいデメリット、身体障がい者の就職状況、自分に合った仕事を探すポイントについて解説します。
目次
ハローワークの障害者登録とは
ハローワークで仕事探しを始めるには、最初に「求職登録」が必要です。
身体障害者手帳を持っている方がハローワークの障害者専門窓口で障害者登録を行うことで、一般雇用枠に加えて障害者雇用枠に応募できるようになります。これにより、就労先の選択肢を広げられます。
なお、身体障害者手帳がなくても求職登録自体は可能です。しかし、障害者雇用枠の求人に応募するには手帳の取得が必須となります。
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ハローワークの障害者登録で受けられる支援
ハローワークの障害者専用窓口では、障がいに関する専門知識を持つ職員または相談員が担当制となって就職のサポートを行っています。
障がいのある方の希望に応じて、就職から定着まで一貫した支援を受けられるため、「就職活動を何から始めればよいか分からない」「自分に合った求人がなかなか見つからない」といった方も、安心して仕事探しを進められます。
▼ハローワークで受けられる障がい者向けの支援
- 就労に関する相談
- 地域障害者職業センターによる職業評価の案内
- 職業訓練の案内
- 障がい者を対象した求人情報の提供
- 企業への配慮事項の伝達や採用面接の同行
- 就職後の電話や訪問による定着支援 など
出典:厚生労働省『ハローワークは、就職を希望する障害者の方に専門的な支援を行っています』
ハローワークの障害者登録にデメリットはある?
ハローワークで障害者専用の求職登録を行うこと自体にデメリットはありません。
一般雇用での就労が難しい方が、必要な配慮を受けながら自分らしく働ける職場を探すことができるため、社会活動やキャリア形成の選択を広げられます。
しかし、一般雇用枠のどちらを選択するか迷っている方にとっては、マイナスに感じられる要素もあります。
障がいをオープンにする必要がある
ハローワークで障害者雇用枠の求人紹介を受けて応募するには、自身の障がいをオープンにすることが前提となります。
障害者雇用枠での就労は「障害者手帳を持つ方」が対象となるほか、職員や応募先企業に対して「障がいによって職業生活に継続的な制約を受けること」を伝えることも必要です。
自信の障がいを開示することに心理的な抵抗がある方にとっては、ハローワークの障害者登録が負担に感じられる可能性があります。
業務やキャリアの選択が限定される可能性がある
障害者雇用枠の求人は、障がいを持つ方が「安定して働き続けること」に重点を置いているため、仕事の内容やキャリアパスが限定されやすい傾向があります。
例えば、データ入力や事務、軽作業、清掃などの補助的な業務の求人が多く見られており、人事評価に基づく昇給・昇格の機会を十分に得られないことも少なくありません。
業界や職種、将来のキャリアプランなどにこだわりがある方は、ハローワークで障害者登録をしても「条件に合う求人を紹介してもらえない」と悩みが生まれる可能性があります。
一般雇用枠の求人と比べて給与水準が低くなりやすい
必要は配慮を受けながら働く障害者雇用枠では、一般雇用枠で働く従業員と仕事内容や業務負荷などが異なるため、給与水準が低くなりやすい傾向があります。
一般労働者と障害者雇用枠で働いている身体障がい者の平均所定内給与(※1)を比較すると、以下のようになっています。
▼一般労働者と身体障がい者の平均所定内賃金(月額)
| 一般労働者 | 身体障がい者 |
| 34万3,709円 | 26万8,000円(※2) |
なお、障害者雇用枠には所定労働時間が短い方も働いているため、月額の平均所定内賃金が一般雇用よりも低くなる要因の一つになっています。
※1…毎月決まって支給する給与(時間外手当や深夜手当は含まれない)
※2…所定労働時間が30時間以上
出典:厚生労働省『毎月勤労統計調査2025(令和7)年11月分結果速報』『令和5年度障害者雇用実態調査』
担当者によって障がいへの理解度が異なる
ハローワークの障害者専用窓口には、障がいに対する専門知識を持つ職員・相談員が配置されています。
しかし、身体障がいの内容や程度、特性などは人によって異なることから、すべての担当者が自身の障がいに対して深い理解があるとは限りません。
担当者によっては「自分の悩みを理解してもらえない」「自分に合わない求人ばかりを勧められる」など、相談に対する助言や提案内容の質に差が生じることがあります。
ハローワークを通じた身体障がい者の就職状況
ハローワークの障害者登録を迷っている方は、「実際にどれくらいの方が就職できているのか」「どのような職種の求人があるのか」など気になるのではないでしょうか。
ここでは、厚生労働省の『令和6年度ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況』を基に、実際にハローワークの障害者登録をした方の就職状況について解説します。
身体障がい者の就職率
2024年度におけるハローワークでの身体障がい者の有効求職者数(※)は、10万8,066人です。そのうち就職した件数は2万2,704件となり、就職率は37.7%となっています。
▼身体障がい者の新規求職申込件数・就職件数の推移

画像引用元:厚生労働省『令和6年度ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況』
ハローワークの障害者登録で求職活動をしている半数以上の方が、就職できていない状況となっていることが分かります。
※1…求職登録をして現在仕事を探している人の総数
産業別の障害者専用求人数
ハローワークで紹介されている障害者専用求人数は、産業ごとに大きな差があります。
障害者専用求人数が多い産業から順に整理すると、以下のようになります。
▼【産業別】障害者専用求人数
| 産業 | 障害者専用求人数 |
| 医療、福祉 | 11万1,947人 |
| 卸売業、小売業 | 2万8,959人 |
| サービス業 | 2万8,023人 |
| 製造業 | 2万2,962人 |
| 宿泊業、飲食サービス業 | 1万4,510人 |
厚生労働省『令和6年度ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況』を基に作成
「医療、福祉」の分野では求人数が10万人を超えていますが、それ以外の産業では3万人以下にとどまっています。また、上記以外の産業では求人数が1万人以下になっており、選択できる職種が限定されていることが分かります。
身体障がい者の職業
ハローワークを通じて就職した身体障がい者の方は、身体的な負荷を低減・回避しやすい職業に就いていることが多く見られます。
▼身体障がい者の職業
| 職業 | 就職件数 | 構成割合 |
| 事務 | 6,675件 | 29.4% |
| 運送・清掃・包装 | 5,369件 | 23.6% |
| サービス職業 | 3,118件 | 13.7% |
| 専門的・技術的職業 | 2,018件 | 8.9% |
| 生産工程従事者 | 1,952件 | 8.6% |
| 輸送・機械運転従事者 | 1,576件 | 6.9% |
厚生労働省『令和6年度ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況』を基に作成
就職件数がもっとも多いのが「事務」で、全体の29.4%を占めています。次いで「運送・清掃・包装」の職業が23.6%、「サービス職業」が13.7%となっています。
一方、「管理的職業」「建設・採掘」「保安職業」「農林漁業」などに従事する就業者はほとんど見られません。
出典:厚生労働省『令和6年度ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況』
身体障がいのある方が自分に合った仕事を探すポイント
ハローワークの障害者登録に関して「希望に合う仕事が見つかるのだろうか」「不利な条件を押し付けられないか?」などの不安を持つ方も少なくありません。
ここでは、身体障がいのある方が自分に合った仕事を探すポイントを紹介します。
①一般雇用枠も視野に入れて求人を探す
ハローワークでは、一般雇用と障害者専用の両方の求人を取り扱っています。
職種を問わず多くの求人から自分に合った仕事を見つけたい方は、一般雇用枠と障害者枠の両方を視野に入れ、並行して仕事探しを進めることも一つの方法です。
▼一般雇用枠も視野に入れたほうがよい方の特徴
- どのような仕事が向いているのか分からない
- 障がいをオープンにするかクローズにするか迷っている
- まずは一般雇用枠の求人応募で反応を見たい
- 自分のペースでじっくり仕事を探したい など
一方、「一般雇用でなかなか就職が決まらない」「仕事や職場環境の制約が多く、十分な配慮が必要」という方は、障害者登録をするほうがスムーズに就活を進めやすくなります。
自身の希望や障がいによる制約、得意なこと・難しいことなどを整理することで、障害者登録をすべきか判断しやすくなるでしょう。
②給与面だけでなく「働きやすさ」を重視する
障害者雇用の求人は、一般雇用枠と比べて給与が低いこともありますが、給与面だけで求人を選ばないように注意が必要です。
「思ったよりも業務の負担が大きい」「必要な配慮について周囲の理解を得られない」など、入社後に職場とのミスマッチを招きかねません。生活の質を守るためには、給与面だけでなく「長く安定して働けるか」に重点をおいて仕事を探すことも大切です。
▼障害者雇用の求人を探すときにチェックすること
- 必要な配慮や環境整備について親身に相談に乗ってくれるか
- 障がいのある方が長く活躍している実績があるか
- 障がいの有無ではなく能力や実績を見てくれる評価制度があるか など
③障害者トライアル雇用求人に応募してみる
ハローワークでは、障害者向けの求人として「障害者トライアル雇用求人」を扱っています。障害者トライアル雇用とは、約3~6ヶ月間の有期雇用契約を締結して、期間終了後に両者の合意に基づいて継続雇用契約に移行する雇用方法です。
▼障害者トライアル雇用のイメージ

画像引用元:厚生労働省『「障害者トライアル雇用」 のご案内』
実際に働いてみて「無理なく仕事を続けられるか」「働きやすい職場か」などを見極められるため、初めて就職する方やブランクがある方、短期間で転職を繰り返している方などに適しています。
出典:厚生労働省『「障害者トライアル雇用」 のご案内』
④ハローワーク以外の民間支援サービスを併用する
ハローワークのほかにも、障がいを持つ方の就職・転職を支援する民間サービスがあります。なかでも障害者雇用に関する知識・実績を持つキャリアコーディネーターが在籍している「転職エージェント」を活用すると、より専門的な支援を受けることが可能です。
▼転職エージェントを活用するメリット
- 職業相談を通じて適性のある仕事のアドバイスを受けられる
- ハローワークにはない非公開求人の紹介を受けられる
- プロの視点から応募書類や面接の対策をサポートしてもらえる
- 自分では伝えにくい配慮事項や労働条件の交渉を代行してもらえる など
『エージェント・サーナ』は、障害者雇用の転職を長年支援してきた実績を持つ転職エージェントです。希望や経験、適性に応じた求人マッチングにより、転職後の定着率は99.5%を達成しています。
大手や優良企業の非公開求人も多数保有しているため、「ハローワークに登録しても気になる求人がなかった」という方もぜひご活用ください。
ハローワークの障害者登録に関するよくある質問
最後に、ハローワークの障害者登録に関してよくある質問と回答をまとめました。
手帳なしでも障害者専用窓口を利用できる?
ハローワークの障害者専用窓口は、障害者手帳を持っていなくても利用は可能です。
専門職員への就職相談をはじめ、ハローワークのインターネットサービスで「障がいのある方の求人」を探すことも可能です。
ただし、企業が募集する「障害者雇用枠」は法律で定められた雇用枠となるため、この求人に応募する場合には障害者手帳の取得が必須となります。
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障害者手帳を持つ人の就職方法とは。就労の選択肢や障害者雇用枠に応募するポイント
障害者登録したことは企業や家族に知られる?
ハローワークの求職登録をしたことが、企業や家族に知られることはありません。
クローズ就労が可能な一般雇用枠に応募する場合は、「障害者登録をしていること」「手帳を所持していること」を企業に伝える必要もありません。
一方、障害者雇用枠の求人に応募する場合は、障害者手帳が必須となるため、応募先の企業にも障がいがあることをオープンにすることが前提となります。
この場合は、職場の人事労務担当や上司、同僚など「障がいをどこまでオープンにするか」については企業と相談して決めることが可能です。
まとめ
ハローワークの障害者登録は、障がいのある方が就職に関するさまざまな支援を受けながら「自分らしく働ける職場」を見つけるために有効な手段の一つです。
一般雇用枠の求人と比べると給与水準やキャリアの選択肢に違いはありますが、自身の障がい特性や適性に合った長く安定して働ける仕事が見つかることが期待できます。
もしも「ハローワークに登録したけれど最適な求人が見つからない」「職業選びや選考についてより専門的なアドバイスが欲しい」と悩んでいる方は、障害者雇用に強い転職エージェントの『エージェント・サーナ』にご相談ください。
まずは現状のお悩みや希望の働き方についてお聞かせください。






