
障がいのある方は、治療や通院のために費用が必要になったり、就労が制限されて収入が不安定になったりすることから、生活設計に不安を抱える方も少なくありません。
経済的な負担の軽減や安定した生活基盤の確保を図り、障がいのある方を支えるために自治体によって交付されるのが「障害者手帳」です。
障害者手帳を取得することで、公的支援や税金の免除、公共・民間サービスの優待などを受けられるほか、就労の選択肢が広がり、生活の質(QOL)向上につながります。
この記事では、障害者手帳を取得している方や取得を迷っている方に向けて、利用できる主な支援・サービスの内容を紹介します。
※2026年1月時点の情報を基に作成しています。
障害者手帳によって利用できるサービスは異なる
障害者手帳は、心身に一定の障がいを持つ方に認定・交付される公的な手帳です。
身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳といった3つの種類があり、それぞれ法律や対象となる障がいの種類、交付要件などが異なります。
▼障害者手帳の種類
| 身体障害者手帳 | 療育手帳 | 精神障害者保健福祉手帳 | |
| 法律 | 身体障害者福祉法 | 療育手帳制度について(各自治体が要網を定めて運用) | 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律 |
| 障がい分類 | 視覚障がい
聴覚・平衡機能障がい 音声・言語・そしゃく機能障がい 肢体不自由 内部障害(心臓、腎臓、呼吸器、肝臓など) |
知的障がい | 統合失調症
気分(感情)障がい 非定型精神病 中毒精神病 器質性精神障がい 発達障がい その他の精神疾患 |
| 所持者数
(※) |
478万3,069人 | 128万1,469人 | 143万8,093人 |
所持している障害者手帳の種類や等級によって利用できる支援制度・サービスが異なるため、事前に対象者の要件を確認しておくことが重要です。
※令和5年度福祉行政報告例
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No61「身体障害者手帳(※ピラー記事)」の内部リンク設置
出典:厚生労働省『障害者手帳』
障害者手帳を持つ方が利用できるサービス一覧
障害者手帳を取得することで、さまざまな公的支援・サービスを受けられるようになり、安心して生活や社会参加ができるようになります。
ここからは、手帳を持つ方が利用できる主要な支援・サービスの内容を紹介します。
①医療や生活支援
障がいのある方の医療費の負担軽減や生活支援を目的とした公的な制度があります。
特別障害者手当
特別障害者手当は、身体または精神に重度の障がいを持つ特別障害者に対して支給される手当です。日常生活や介護にかかる物質的な負担の軽減を図り、福祉の向上につなげることが目的とされています。
| 特別障害者手当の概要 | |
| 支給対象者 |
|
| 支給月額 | 2万9,590円(2025年4月からの適用) |
ただし、本人や配偶者に対する所得制限が設けられており、収入額が多い方は手当を受給できないケースもあります。
出典:厚生労働省『特別障害者手当について』
心身障害者医療費助成制度
心身障害者医療費助成制度は、心身に障がいを持つ方が医療機関で支払った医療費(自己負担分)の一部または全部を自治体が助成する制度です。地域によって制度の有無や名称に違いがあり、「マル障」と呼ばれることもあります。
| 心身障害者医療費助成制度の概要 | |
| 主な対象者 |
|
| 助成対象 | 診察代、検査代、薬代、訪問看護の利用料 など |
| 対象外となる費用 | 入院時の差額ベッド代や食事代、健康診断費 など |
自治体ごとに助成内容や要件が異なるため、お住まいの地域の福祉窓口に確認が必要です。
自立支援医療制度
自立支援医療制度は、心身の障がいを除去・軽減するための医療を受ける際の自己負担額を、原則1割(または所得に応じた負担上限額)に軽減する公的医療制度です。
対象となる医療は3つに区分されており、所有する障害者手帳の種類や障がいの内容によって適用されるケースが異なります。
| 1.精神通院医療 | 2.更生医療 | 3.育成医療 | |
| 対象者 | 精神保健福祉法第5条に規定する精神疾患のある方 | 身体障害者手帳の交付を受けている方(18歳以上) | 身体に障がいを持つ児童(18歳未満) |
| 支給要件 | 通院による精神医療が継続的に必要とする | 手術や治療による障がいの除去・軽減が見込める | 手術や治療による障がいの除去・軽減が見込める |
| 具体例 | 向精神薬、精神科デイケア など | 人工関節置換術、水晶体摘出術、ペースメーカー埋込術、人工透析 など | |
出典:厚生労働省『自立支援医療制度の概要』
補装具費支給制度
補装具費支給制度は、身体の欠損または損なわれた機能を補完・代替するための用具を購入した際の費用について、一部または全部を支給する制度です。
日常における移動手段の確保や就労での能力向上を図り、生活を便利にするために必要な補装具が支給の対象となります。
障害者手帳の取得は要件に定められていませんが、身体障害者手帳を持っており補装具を必要とする方は利用することが可能です。
| 補装具費支給制度の概要 | |
| 対象者 | 補装具を必要とする障がい者、難病患者(政令に定める疾病) |
| 利用者負担 | 原則1割負担(世帯所得に応じて負担上限月額が設定される) |
| 補装具の
具体例 |
義肢、車椅子、歩行器、姿勢保持装置、視覚障がい者用安全つえ、義眼、補聴器人工内耳 など |
出典:厚生労働省『補装具費支給制度の概要』
日常生活用具給付制度
日常生活用具給付制度は、市町村の地域生活支援事業の必須事業として規定されている給付制度です。障がいのある方の日常生活がより円滑に行われるために、用具の給付または貸付が行われており、自治体へ申請することで利用が可能です。
障害者手帳の取得は要件に定められておらず、自立生活や介護、在宅療養などに日常生活用具を必要とする方は申請できる仕組みとなっています。
| 日常生活用具給付制度の概要 | |
| 対象者 | 日常生活用具を必要とする障がい者や難病患者(政令に定める疾病) |
| 利用者負担 | 自治体によって異なる |
| 日常生活用具の具体例 | 特殊寝台、入浴補助用具、聴覚障害者用屋内信号装置、点字器、ストーマ装具、小規模な改修工事が伴う設備 など |
出典:厚生労働省『日常生活用具給付等事業の概要』
②税金
障害者手帳を取得すると、税金について控除または免除を受けることが可能です。税金に関する減免制度は、就労によって収入を得る際や、将来の資金形成において役立てられます。
税金の減免制度には、主に以下が挙げられます。
所得税の控除
納税する本人や扶養家族が障がい者の場合に、一定額で所得税の控除を受けられます。対象者は、障がいの重さに応じて「一般障がい者」と「特別障がい者」に区分されています。
| 所得税控除の対象者 | |
| 控除の対象者 |
|
| 特別障がい者に該当する方 |
|
控除額は障がい者の区分によって異なり、特別障がい者に該当する方は控除額が上乗せされる仕組みになっています。
| 区分 | 障害者 | 特別障害者 |
| 控除額 | 27万円 | 40万円 |
出典:国税庁『No.1160 障害者控除』
相続税の控除
障がいのある方が相続や遺贈によって財産を取得した際には、相続税から一定額の控除を受けることが可能です。控除の要件や対象となる障がい者は、以下のとおりです。
| 相続税の控除 | |
| 控除の要件 |
|
| 対象となる主な障がい者 |
|
| 控除額 | 満85歳になるまでの年数1年につき10万円(特別障害者は20万円) |
身体障害者手帳1級・2級や精神障害者保健福祉手帳1級に該当する方は「特別障害者」として控除額が20万円に増える仕組みとなっています。
出典:国税庁『No.4167 障害者の税額控除』
自動車税・軽自動車税の減免
障がいのある方が社会生活を送るうえで必要な移動手段といえる「自動者」についても、税金の負担を軽減する制度が導入されています。
身体障がいを持つ方が自動車を所有・取得する際にかかる「自動車税」「軽自動車税」の減額または免除を受けることが可能です。
本人が自動車を所有・運転する場合のほか、障がいの程度・等級によっては「本人が生計を共にする配偶者」や「常時運転する介護者」も減免の対象となる場合があります。自治体によって要件が異なるため、お住まいの地域の情報をご確認ください。
③公共交通機関・有料道路
通院や社会活動における移動手段となる公共交通機関・有料道路の利用料金について、障害者割引制度が導入されています。
電車・バス・タクシーの運賃割引
障害者手帳を提示することで、電車・バス・タクシーなどの多くの交通機関で運賃の割引を受けられます。
適用される割引率や対象者の条件は、手帳の「旅客鉄道株式会社旅客運賃減額欄」に記載されている第1種・第2種の区分によって異なります。
JRの障害者割引制度では、以下のように定められています。
▼旅客運賃割引の内容(JRの場合)
| 区分 | 本人のみの利用 | 本人+介護者の利用 |
| 第1種 | 片道100km超の利用で 50%割引
(普通乗車券) |
50%割引
(普通乗車券・回通乗車券、急行券、定期券) |
| 第2種 | 片道100km超の利用で 50%割引
(普通乗車券) |
介護者のみが50%割引
(定期券) |
なお、私鉄やバス、タクシーなどは事業者によって割引内容や条件が異なります。
有料道路の通行料金割引
高速自動車国道(高速道路)や一般有料道路においても、障がいを持つ方の通行料金の割引が実施されています。
障害者手帳の区分(第1種・第2種)によって対象者の範囲が異なります。
| 第1種 | 第2種 | |
| 対象者 | 本人が運転する場合
介護者が運転して本人が同乗する場合 |
本人が運転する場合のみ |
| 割引率 | 50% | 50% |
通行料金の割引を受けるには、事前に車両の登録が必要です。また、自動車検査証に「事業用」と記載されている車は対象外となります。
④公共施設・サービス
国や自治体が運営する施設・サービスでは、障がいのある方の社会活動を促すためのさまざまな免除や優待制度が設けられています。
歴史・文化施設などの入場優待
歴史・文化施設などのチケット窓口で障害者手帳を提示することで、入場料の割引または免除が適用されます。手帳を持つ本人だけでなく、介護者や付き添いの方も同様の優待を受けられることが一般的です。
▼障がい者向けの入場優待が導入されている施設例
- 歴史博物館
- 美術館
- 科学館
- 動物園
- 史跡・城跡
- 庭園
- 自然公園
- お寺 など
NHK受信料の減免
公共放送局となるNHKの受信料は、障害者割引が適用されます。手帳の等級や世帯の状況によって減免の内容が異なります。
| 減免の区分 | 主な適用要件 |
| 全額免除 | 障害者手帳を持つ方がいる世帯かつ世帯構成員全員が市町村民税の非課税の場合 |
| 半額免除 |
|
受信料について減免の適用を受けるには、NHK窓口への申請やマイナポータルでのインターネット手続きが必要になります。
出典:NHK『受信料免除の対象となる方について』
水道料金の減免
自治体によっては、水道料金の減免措置が導入されています。
身体障害者手帳1・2級の交付を受けている方や、心身に重度の障がいを持つ人が世帯にいる場合などが減免の対象とされています。
ただし、減免制度の有無や適用される世帯の要件などは自治体によって異なるため、お住まいの地域にある水道局への確認が必要です。
⑤民間施設・サービス
民間事業者が運営するさまざまな施設・サービスにおいて、障がい者の優待や割引制度が設けられています。これらの制度を活用することで、余暇活動を通じたリフレッシュの促進や生活の質の向上につながります。
レジャー施設の入場優待
障害者手帳を持つ方は、休日のお出かけやリフレッシュなどに利用できるレジャー施設において入場優待を受けられることがあります。
優待制度の内容はレジャー施設によって異なりますが、代表的なものに「入場料の割引」「アトラクションの優先案内」「飲食サービスの特典」などが挙げられます。
▼入場優待が導入されている施設例
- 遊園地
- テーマパーク
- 水族館
- 温泉施設
- ゴルフ場
- 映画館 など
宿泊料の割引
旅館やホテルによっては、障害者手帳を持つ方への宿泊料の割引が実施されています。
障害者手帳を持つ本人のほか、介護者が別の部屋に宿泊する場合の宿泊料にも割引が適用されるケースもあります。
また、身体障がいを持つ方に配慮した設備が備わった「バリアフリールーム」が用意されている施設もあり、予約時に相談することで安心して宿泊できます。
⑥就労を支援するサービス
障がいのある方の就業機会を確保して長く安定して働けるように、国や自治体、民間による多様な支援が用意されています。障害者手帳の有無にかかわらず利用できる制度も多くあります。
障害福祉サービス
障害者総合支援法では、5種類の障害福祉サービスが提供されています。障がいの特性や程度、労働能力などに応じて必要なサービスを選択することが可能です。
| 障害福祉サービスの種類 | 概要 |
| 就労選択支援 | 本人の希望や労働能力を整理・評価して、適性に合った就労先・働き方を選択できるように支援する |
| 就労移行支援 | 一般企業での雇用が見込まれる方に対して、一定期間にわたる職業訓練を実施して就労移行を支援する |
| 就労継続支援A型 | 一般企業で働くことが難しい方が、事業所と雇用契約を結んで給与を得ながら安定して就労できる場を提供する |
| 就労継続支援B型 | 一般企業で働くことが難しい方が、雇用契約を結ばずに体調に合わせて工賃を得ながら働ける場を提供する |
| 就労定着支援 | 一般企業に移行した方に対して、日常生活や就労に関する相談や指導・助言などの支援を提供する |
出典:厚生労働省『障害者の就労支援対策の状況』
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、地域のハローワーク(公共職業安定所)と連携して、障がいのある方が就職を目指すための専門的な職業リハビリテーションを提供する施設です。
「自分に合った仕事をじっくり見極めたい」「職場に馴染めるか不安がある」など、障がい者一人ひとりのニーズや悩みに応じた支援を受けられます。
▼地域障害者職業センターの主な支援内容
- 職業能力評価に基づく職業リハビリテーション計画の策定
- 体験作業や職業準備講習、社会生活技能訓練を通じた職業準備支援
- ジョブコーチの事業所派遣による職場適応の援助 など
出典:厚生労働省『地域障害者職業センターの概要』
ハローワークの障害者窓口
各地域にあるハローワークでは、障害者窓口で求職登録を行うことで専門職員・相談員による就職支援を受けられます。
働くための生活環境や体調管理などの準備が整っており、本格的な求人紹介や選考プロセスに進みたい方が利用できます。
▼ハローワークで受けられる主な支援内容
- 障がいの程度や適性、希望職種に応じた職業相談
- 障害者向け求人の紹介
- 地域障害者職業センターや障害者就業・生活支援センターと連携した就職支援
出典:厚生労働省『ハローワークにおける障害者の就労支援』
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、障がいを持つ方の生活面と就業面の両方から一体的な相談・支援を提供する地域密着型の施設です。
ハローワークや地域障害者職業センター、障害者を雇用する事業者との連携により、一人ひとりの状況に応じた支援を受けられます。
「就業のためにまず生活を安定させたい」「初めての就職で自分に合った働き方や仕事が分からない」という方に適しています。
出典:厚生労働省『障害者就業・生活支援センターの概要』
障害者雇用専門の転職エージェント
障害者雇用は、障害者雇用促進法に基づいて事業者に義務づけられている障がい者の雇用枠のことです。障がいのある方が安定して働けるように、事業者による支援体制が整っていることが特徴です。
障害者雇用での就労を目指す方は、「転職エージェント」と呼ばれる民間サービスの活用が有効です。豊富な知見に基づく専門的なサポートを受けられるため、効率的に就職・転職活動を進められます。
▼転職エージェントの主な支援内容
- 一般の求人サイトでは出会えない非公開求人の紹介
- キャリアアドバイザーによる適性評価やアドバイス
- 応募書類の添削や面接の練習
- 応募先企業との条件交渉や配慮相談の代行 など
「障害者雇用枠での就労を検討しているけれど、自分に合った職種が分からない」「配慮事項の伝え方や条件交渉に自信がない」といった方に適しています。
関連記事
障害者雇用で働くための就労条件は?一般雇用枠との違いや選考を受けるポイント
出典:厚生労働省『障害者雇用対策』
まとめ
障害者手帳を持つことで受けられる支援・サービスは、医療費の助成や税金の控除、公共・民間施設の入場優待、就労支援まで多岐にわたります。
障がいのある方の経済的な負担の軽減や社会参加の促進につながるほか、「障害者雇用枠」を活用したキャリア形成にも役立てられます。
障害者雇用での就労を検討している方は、転職エージェントを活用して一歩を踏み出してみませんか?『エージェント・サーナ』は、障害者雇用の就職・転職支援において30年以上の実績があり、幅広い企業ネットワークを保有しています。
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