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【障害者雇用促進法】とは障がい者の雇用機会・活躍を促進する法律
障害者雇用促進法とは、障がいをお持ちの方の職業生活における自立を促し雇用の安定を図るための法律です。
この法律により、事業主には障がい者が働きやすい環境を整える義務が課せられています。障がいのある方が自分らしく働くうえで、この法律の理解は大切です。
障害者雇用促進法の目的や理念
この法律の目的は、障がいをお持ちの方が職業を通じて自立し社会の一員として活躍できるよう、雇用機会の確保や職場環境の整備を促すことです。
障害者雇用促進法を含む障がい者の雇用対策は、障がいのあるなしに関わらず、誰もが能力と適正を活かせる社会の実現を目指す理念の下で実施されています。
法律の対象になる障がい者
障害者雇用促進法では、企業に対して障がい者の雇用を促進する義務を設けています。その対象となる障がい者の範囲は、以下のとおりです。
障害者雇用促進法における対象障がい者の範囲
障がい種別 |
対象範囲 |
身体障がい |
|
知的障がい | 知的機能の障がいが発達期に現れ、日常生活に制限を伴う状態で、療育手帳または判定書などの交付を受けた方 |
精神障がい | 統合失調症、うつ病、躁うつ病などの精神疾患もしくはてんかんにより、長期にわたり日常生活または社会生活に制約がある方で、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた方 |
その他の障がい | 発達障がい、高次脳機能障がい、難病などで障害者手帳の交付を受けた方 |
これらの範囲に該当する場合は、企業の雇用義務の対象者として位置づけられ、障がい者枠での雇用を受けられるようになります。
出典:e-Gov法令検索『障害者の雇用の促進等に関する法律』/厚生労働省『障害者雇用のご案内~共に働くを当たり前に~』
障害者雇用促進法が定める企業の義務
障害者雇用促進法では、企業に対して5つの重要な義務を定めています。これらの義務を通じて、障がい者が安心して働ける職場環境の構築を促進しています。
障害者雇用促進法で定められた企業の義務
義務の内容 | 詳細 |
法定雇用率以上での雇用 | 従業員数に応じて定められた割合以上の障がい者を雇用する義務 |
合理的配慮の提供 | 障がい特性に応じた職場環境の整備や業務調整を行う義務 |
雇用状況の年次報告 | 従業員40人以上の事業主が、毎年6月1日時点の障がい者雇用状況をハローワークに報告する義務 |
解雇届の提出 | 障がい者を解雇する際、事前にハローワークへ届出を行う義務 |
障害者職業生活相談員の選任 | 障がい者が5人以上在籍する事業所において相談員を配置する義務 |
これらの義務により、企業は単に雇用するだけでなく、障がい者が継続的に活躍できる環境を整備することが求められています。
出典:厚生労働省『事業主の方へ』
障がい者の雇用で得られる調整金や報奨金
障がい者雇用に積極的な企業には、国から調整金や報奨金が支給される仕組みがあります。調整金・報奨金によって企業の負担が軽減されることで、障がい者にとって雇用を受けやすい環境が整備されています。
障がい者の雇用によって支給される調整金や報奨金
制度名 |
対象企業 |
支給額・条件 |
障害者 雇用調整金 |
常時雇用労働者100人超で法定雇用率を上回って雇用 |
法定雇用率を超えて雇用した障がい者1人につき月額29,000円 |
障害者 雇用報奨金 |
常時雇用労働者100人以下で一定数以上雇用 |
雇用障がい者1人につき月額21,000円 |
在宅就業者 特例調整金 |
障害者雇用納付金や障害者雇用調整金の申請事業主 |
在宅就業障がい者や在宅就業支援団体に仕事を発注した場合に、発注額に応じて調整金を支給 |
在宅就業者 特例報奨金 |
障害者雇用報奨金の申請事業主 |
在宅就業障がい者や在宅就業支援団体に仕事を発注した場合に、発注額に応じて報奨金を支給 |
これらの調整金・報奨金に加えて、職場適応や職業訓練に関する助成金も充実しており、障がい者雇用の促進につながっています。
出典:独立行政法人 高齢・障がい・求職者雇用支援機構(JEED)『障害者雇用納付金制度の概要』
雇用義務を怠った企業への罰則
法定雇用率を達成できない企業には、以下のような罰則が科せられます。段階的な指導により、企業の自主的な改善を促進する仕組みです。
雇用義務を怠った企業への罰則
罰則の種類 |
内容・条件 |
障害者雇用納付金の徴収 |
常時雇用労働者100人超で法定雇用率未達成の場合、不足1人につき月額50,000円を徴収 |
労働局・厚生労働省からの指導 |
雇用状況が著しく低い企業に対する改善指導や勧告を実施 |
企業名の公表 | 適正実施勧告に従わない企業は厚生労働省のウェブサイト等で企業名を公表 |
これらの罰則は企業の障がい者雇用への取り組みを促すとともに、法律の実効性を確保する役割を果たしています。
出典:独立行政法人 高齢・障がい・求職者雇用支援機構(JEED)『障害者雇用納付金制度の概要』/厚生労働省『事業主の方へ』『障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく企業名公表について』
2024年の主な改正内容
2024年4月に実施された障害者雇用促進法の改正では、法定雇用率の段階的引き上げや除外率の見直し、調整金の減額など、障がい者雇用をより一層促進するための変更が行われました。企業支援の拡充も同時に実施されています。
なお、この改正による制度変更は段階的に実施されているため、適用時期が2025年以降のものもあります。
法定雇用率の引き上げ
法定雇用率が段階的に引き上げられ、対象企業の範囲も拡大されました。より多くの企業で障がい者雇用が義務化されることで、雇用機会の拡大が期待できます。
法定雇用率の引き上げ内容
2023年度 | 2024年度 | 2026年7月以降 | |
法定雇用率 | 2.3% | 2.5% | 2.7% |
法定雇用率の対象 となる企業 |
従業員が43.5人以上 |
従業員が40人以上 |
従業員が37.5人以上 |
段階的な引き上げにより、さまざまな企業で障がい者雇用への取り組みが本格化すると考えられます。
出典:厚生労働省『障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について』
除外率の引き下げ
障がい者が就労困難とされる特定の業種においては、法定雇用率の算定から一定の従業員数を除外できる仕組みがあり、その割合を除外率と呼びます。
2024年の改正では各業種の除外率について10ポイントの引き下げが行われ、2025年4月1日から適用されています。
除外率引き下げの詳細
業種 |
変更前の除外率 | 変更後の除外率 |
|
5% | 廃止 |
採石業、砂・砂利・玉石採取業 、水運業など |
10% | 廃止 |
非鉄金属第一次製錬、精製業・貨物運送取扱業 |
15% | 5% |
建設業、鉄鋼業、道路貨物運送業など |
20% | 10% |
港湾運送業、警備業 |
25% | 15% |
鉄道業、医療業、介護老人保健施設など |
30% | 20% |
狩猟業を除く林業 |
35% | 25% |
金属鉱業、児童福祉事業 |
40% | 30% |
視覚障害者に対する教育を行う学校を除く 特別支援学校 |
45% | 35% |
石炭、亜炭鉱業 |
50% | 40% |
道路旅客運送業、小学校 |
55% | 45% |
幼稚園、幼保連携型認定こども園 |
60% | 50% |
船員などによる船舶運航等の事業 |
80% | 70% |
この見直しにより、これまで雇用義務が軽減されていた業種でも、障がい者雇用への積極的な取り組みが求められるようになりました。
出典:厚生労働省『障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について』
障害者雇用調整金・報奨金の減額
障がい者雇用が一定程度進展したことを受け、調整金および報奨金の一部が減額されました。
障がい者雇用に関する企業の負担が雇用者数に伴って低減する傾向にあることから、制度の持続可能性を確保する目的で調整されています。
制度変更の内容
制度 |
変更内容 |
障害者雇用調整金 |
支給対象人数が10人を超える場合、当該超過人数分について29,000円から23,000円に減額 |
障害者雇用報奨金 |
支給対象人数が35人を超える場合、当該超過人数分について21,000円から16,000円に減額 |
減額により企業の経済的負担は増加しますが、同時に新たな支援制度の拡充により企業が障がい者雇用に取り組みやすい環境整備が図られています。
出典:厚生労働省『2.障害者雇用調整金・報奨金の支給調整について』
特定短時間労働者の雇用率への算定と特例給付金の廃止
重度身体障がい者、重度知的障がい者および精神障がい者のうち、所定労働時間が10時間以上20時間未満と短い“特定短時間労働者”についても、新たに実雇用率の算定対象に含まれるようになりました。1人につき0.5人分として算定されます。
これにより、長時間の勤務が困難でも働く意欲のある障がい者の雇用機会が拡大されることが期待されています。
一方で週10時間以上20時間未満で働く障がい者を雇用する際に支給されていた特別給付金は廃止され、制度の簡素化が図られました。
出典:厚生労働省『3.特定短時間労働者の雇用率算定について』『令和4年障害者雇用促進法の改正等について』
企業支援や助成金の拡充
法定雇用率の引き上げに対応するため、企業向けの支援制度や助成金が大幅に拡充されました。障がい者雇用に取り組む企業を、より手厚くサポートする体制が整備されています。
拡充された企業支援や助成金の内容
支援策 |
支援の内容 |
障害者雇用相談援助事業 |
障がい者雇用の経験やノウハウを有する認定事業者から、障がい者の雇用管理について相談援助を無料で受けられる |
助成金の拡充および新設 |
|
「職場実習・見学の受入れ助成」は、企業が障がい者を受け入れる前段階での支援を強化し、雇用のミスマッチを防ぐ役割を果たしています。
出典:厚生労働省大阪労働局『障害者雇用相談援助事業について』/厚生労働省『法改正に伴う令和6年度施行分の政令・省令・告示の改正について(案)』『令和4年障害者雇用促進法の改正等について』
障害者雇用促進法改正の機会を活かすには障がい者枠での転職がおすすめ
2024年の法改正により、法定雇用率の引き上げや企業支援の拡充が実施され、障がい者雇用に積極的な企業が増加しています。この絶好の機会を活かすためには、障がい者枠での転職を検討することが有効です。
障がい者雇用と一般雇用はここが違う
障がい者雇用と一般雇用では、働く環境や条件が大きく異なります。
障がい者枠では個々の障がい特性に応じた合理的配慮が提供され、勤務時間や業務内容の調整が柔軟に行われます。一般雇用では障がい特性への配慮が十分でない場合があり、結果として継続勤務が困難になる可能性も考えられます。
障がい者枠雇用では、企業が障がい特性を理解した上で業務内容を決定するため、無理なく長期的なキャリアを築きやすいメリットがあります。
障がい者枠雇用はあなたのキャリア形成に役立つ
障がい者枠雇用は障がい特性に合った働き方を実現し、長期的なキャリア形成に大きく役立ちます。
企業は法律により障がい者が働きやすい環境を整備する義務があるため、個人の能力を最大限に活かせる職場が見つかりやすくなります。また、障がい者職業生活相談員の配置により、職場での悩みや困りごとを相談できる体制も整っています。
このような支援体制のもとで、スキルアップや昇進といったキャリアアップが実現可能です。
障がい者枠での転職でよくある質問
障がい者枠での転職を検討している方から寄せられる疑問や不安について、よくある質問をまとめました。転職活動を始める前にこれらの疑問を解消しておくことで、より安心して就職活動に取り組めます。
企業に戦力として見てもらえる?
多くの企業が障がい者を重要な戦力として認識し、障がい者の強みや能力を活かせるポジションを積極的に用意しています。
法定雇用率の引き上げにより、企業は単に雇用数を満たすだけでなく障がい者が長期的に活躍できる環境づくりに力を入れるようになりました。大切なのは、これまでのスキルや経験を企業に的確に伝え、どのような形で会社に貢献できるかを具体的にアピールすることです。
障がいの特性を理解してもらいながら自身の価値を明確に示すことで、戦力として評価されやすくなります。
働きがいがある会社はどのようにして見分ける?
働きがいのある会社を見分けるには、企業の理念や風土、障がい者雇用への具体的な取り組みをしっかりとチェックすることが重要です。
企業のウェブサイトや採用情報で障がい者雇用に関する方針を確認するだけでなく、実際に働く障がい者の声や職場見学を通じて、働きやすい環境が整っているかを見極める必要があります。また、障がい者職業生活相談員の配置状況や研修制度の充実度、キャリアアップの事例なども判断材料となります。
面接時には遠慮せず、職場環境について積極的に質問することがポイントです。
自分の障がい特性に合った仕事の見つけ方は?
自分の障がい特性に合った仕事を見つけるためには、徹底的な自己分析が欠かせません。得意なことや苦手なこと、集中しやすい環境や時間帯、希望する働き方などを明確にリストアップします。
自己分析を行ったあとは、障がい者専門の転職エージェントのような専門家に相談する方法がおすすめです。専門家は障がい特性と職種のマッチングに精通しており、個人では見つけにくい適性のある求人を紹介してもらえます。
また、職場実習制度を活用して実際の業務を体験することも、自分に合った仕事を見つける有効な手段といえます。
障がい者の転職はエージェント・サーナがサポート
転職活動における様々な課題や不安は、障がい者専門の転職エージェント「エージェント・サーナ」が解決いたします。
単なる求人紹介だけでなく、キャリアシートの記入から面接対策、入社後のフォローアップまで、転職活動のすべてをトータルでサポートしています。また、専任のキャリア・アドバイザーが一人ひとりの障がい特性や希望条件を丁寧にヒアリングし、最適な求人をご紹介します。
企業との条件交渉や職場環境の確認も代行し、安心して転職活動に専念できる環境を提供しています。
まとめ
この記事では、障がい者の自立を支える「障害者雇用促進法」について、その概要から2024年の改正内容までを解説しました。
法定雇用率の引き上げや除外率の引き下げなど、法改正によって障がい者雇用がさらに加速しています。この機会に、障がい者枠での転職を検討してみてはいかがでしょうか。自分の特性を活かした働き方ができる企業を見つけることが、長期的なキャリアを築く第一歩となります。
専門的な知識を持つキャリア・アドバイザーのサポートを活用することで、よりスムーズに理想の仕事を見つけられます。