障害者雇用での就職・転職活動に取り組んでいる方のなかには、「面接で何を聞かれるのか」「障がいのことや必要な配慮をどのように伝えればよいのか」と不安を持つ方も多いのではないでしょうか。
いざ面接の本番になると、緊張して焦ってしまったり、伝えたいことをうまく言葉にできなかったりすることも少なくありません。事前に面接対策をしっかり行っておくことで、スムーズな受け答えや効果的なアピールができるようになります。
この記事では、障害者雇用の面接でよく聞かれる質問と回答方法、採用担当者に「採用したい」と思ってもらうためのポイント、事前準備などについて解説します。
目次
障害者雇用の面接で採用担当者がチェックすること
障害者雇用の面接では、一般雇用枠の面接で確認される基本的な内容に加えて、障がいに関するさまざまな質問が行われます。
企業によって判断項目や評価基準は異なりますが、主に「業務をこなすことができるか」「長く安定して働いてもらえるか」などがチェックされます。
▼障害者雇用の面接で採用担当者がチェックすること
項目 | 評価のポイント |
就労への意欲 | 志望動機に一貫性や説得力があるか、会社への貢献意欲があるか、仕事への熱意ややりがいを持っているか など |
人柄 | 真面目で誠実さがあるか、円滑なコミュニケーションで良好な人間関係を築けるか、協調性を持っているか など |
業務への適性 | 業務を問題なく遂行できるか、配慮について対応できる範囲か、スキルや強みを活かせるか など |
職場環境への 適応力 | 新しい環境にすぐに馴染めるか、周囲の助けを借りながらも自立して働くことができるか など |
勤怠の安定性 | 体調管理をしっかり行っているか、規則的に出社ができるか、急な欠勤や離職のリスクはないか など |
障害者雇用の面接で聞かれる質問と回答方法
障害者雇用の面接でスムーズな受け答えができるようにするには、よくある質問への回答を準備しておくことが大切です。ここでは、面接で聞かれる質問と企業に良い印象を与える回答例を紹介します。
➀自己紹介・自己PR
面接の冒頭であいさつを終えたあと、自己紹介・自己PRを求められることが一般的です。
自己紹介では、名前や職歴、応募理由などを端的に伝えます。自己PRでは、自身が持つスキルや能力、経験をどのように活かせるか簡単に説明します。
自己紹介・自己PRは、応募者の第一印象に大きく関わるため、情報を整理して順序立てて回答することが必要です。これにより、「自己分析をしっかり行っている」「面接の事前準備を行っている」という良い印象を与えられます。
▼回答例
「(名前)と申します。前職では〇〇の部門で〇〇の業務に従事していました。これまでの経験で培った〇〇のスキルを活かし、御社の〇〇の業務に貢献したいと考えております。本日はどうぞよろしくお願いいたします。」 |
②志望動機
志望動機は、応募者について「入社意欲が高いか」「企業の理念や文化とマッチしているか」などを判断するために質問されます。
面接で志望動機を聞かれた際は、応募した会社や職種を選んだ理由を具体的に伝えます。その際は、企業理念や社風への共感、仕事に対する貢献意欲を示すことがポイントです。
これまでの仕事で培ってきた知見や障がいと向き合うなかで得られた学びと、企業・仕事の魅力を関連づけて伝えることで、説得力を高められます。
▼回答例(事務職の場合)
「御社を志望した理由は、データ管理業務に強く関心があるためです。前職では売上データの集計・分析を担当しており、Excel関数を利用して月次レポートの作成時間を20%短縮しました。私は上肢障がいがありますが、PCを使った分析業務であれば支援ツールを活用して十分に能力を発揮できます。御社では長期的にスキルを磨ける環境だと感じ、将来的にはデータ分析のスペシャリストとして貢献したいと考えています。」 |
③職歴・キャリア
職歴・キャリアは、応募者のスキルや業務適性を判断するための質問です。これまで経験した業種・職種や具体的な仕事内容などを説明するとともに、今後挑戦したい仕事についても伝えると入社意欲を示せます。
職歴がない場合は、障がい者向けの就労支援での訓練や実習を受けた実績、求職中に行っていた勉強のことなどを伝え、ブランクがネガティブな印象にならないようにしましょう。
▼回答例
「前職では3年間、営業事務として〇〇の業務を担当しました。今後は、Excelスキルをさらに高め、データ分析の業務にも挑戦したいと考えています。」
「就労移行支援事業所で6ヶ月間、PCスキルやビジネスマナーを学びました。事務職への従事を通じてさらにスキルアップしていき、幅広い業務に挑戦したいです。」 |
④前職の退職理由
前職の退職理由は、入社後も長く働いてくれるかを見極める質問といえます。
障がいを理由に前職を退職した場合は、その原因を正直に話したうえで「問題の克服や対処を行ったこと」や「現在は無理なく働ける状態であること」など、就労準備ができていることを伝えます。これにより、前職と同じように退職するリスクがないことを示せます。
▼回答例
「前職では残業が多く、業務の繁忙期に体調を崩すことがあったため、療養のために退職をしました。現在は主治医と相談しながら通院と体調管理を徹底しており、規則的な勤務形態であれば無理なく働ける状態です。」 |
⑤障がいの内容
障害者雇用では、障がいについて具体的な説明が求められます。障がいの種類・程度・症状・治療状況などを分かりやすく説明する必要があります。
業務への適性や入社後に必要な配慮を検討するための重要な情報となるため、通院頻度や服薬状況、生活での対処法なども併せて伝えることが大切です。
▼回答例
「私は〇〇障がいを持っています。定期的に通院しており、症状は安定しています。日常生活では特に支障はありませんが、〇〇のような状況では〇〇な症状が出ることがあるため、〇〇という対処法を実践しています。」 |
⑥得意なこと・苦手なこと
障がいを持つ方によって特性や能力は異なるため、応募者の得意なこと・苦手なことについて質問されることが多くあります。この質問は、企業が適性のある業務や配置を見極めたり、就労上の配慮について検討したりする目的があります。
得意なことは、業務に活かせるスキルや強みをアピールするチャンスです。一方で、苦手なことについては、仕事を想定して自身の障がい特性を具体的な作業内容で伝えましょう。
▼回答例
「私の得意なことは、長時間集中して正確な作業を継続することです。前職ではミスの少ないデータ入力の業務を評価していただきました。この集中力を活かして御社の業務でも正確性の高い業務を目指します。」
「細かい手作業が苦手ですが、デジタルツールを積極的に活用することで補っています。前職ではタブレットでの資料作成に切り替えることで苦手分野をカバーしていました。」 |
⑦就労するうえで必要な配慮
障害者雇用では、障がい者が働きやすい業務内容や職場環境を整えるための合理的配慮を行うことが企業に義務づけられています。面接で聞かれた際には、企業に求める就労上の配慮について明確に伝える必要があります。
企業側に「してほしいこと」だけでなく、「なぜそのような配慮が必要なのか」「自身ではどのような努力や対処を行うのか」なども伝え、歩み寄る姿勢を示すことが大切です。
▼回答例
「〇〇の治療のため、月に1回通院が必要です。フレックスタイム制で出勤時間を調整させていただけると幸いです。また、PCでの業務を効率化するために、手の動作を補助する器具の使用を希望します。日ごろは睡眠や食事などで体調管理を徹底しており、業務に支障が出ないよう努めます。」 |
⑨最近の健康状態や体調不良になる要因
入社後の早期離職や勤務中のリスクなどを把握するために、現在の健康状態や体調不良になる要因について聞かれることがあります。
安定した生活習慣や体調管理を心がけていることや、体調不良になりやすい身体的な負担や環境などを伝えます。障がいと向き合いながら「どのような働き方がしたいか」を併せて伝えることで、長く働きたいという意欲を示せます。
▼回答例
「日頃から規則正しい生活を心がけ、体調管理に努めているため、問題なく働ける状態です。〇〇な状況では体調を崩しやすい傾向があるため、通勤方法や勤務時間を調整いただけますと幸いです。」 |
障害者雇用の面接で「採用したい」と思ってもらうポイント
面接の質問に対する回答の仕方によって、採用担当者に与える印象は変わります。「この人と一緒に働きたい」と思ってもらうために、意識しておくポイントを紹介します。
ポジティブな表現を使う
就労上の配慮や苦手なことを聞かれた際は、ポジティブな表現を使うことがポイントです。
「〇〇ができない」「〇〇の補助が必要」という表現よりも、「〇〇があれば、〇〇の業務を問題なく行えます」と前向きに伝える方が、入社後に活躍するイメージを持ってもらいやすくなります。
また、仕事に対して意欲的に取り組む姿勢を示すことができ、入社への熱意や向上心が評価されることも期待できます。
▼伝え方の具体例
【苦手なことを聞かれたとき】
悪い例:「重いものは持てないので、力仕事はできません。」 良い例:「力仕事は苦手ですが、デスクワークであれば長時間集中して取り組めます。」 【必要な配慮について聞かれたとき】 悪い例:「定期的な通院があるので、急な休みが多くなります。」 良い例:「月に一度通院が必要ですが、事前にスケジュールを調整することで、業務に支障が出ないよう努めます。」 |
障がいを自身の強みに変える
障がいを持つ方のなかには「職歴がなく実績や成果を評価してもらえない」「自分の強みとなるアピールポイントがない」と悩む方もいるかもしれません。
しかし、障がいと向き合うことで得られた学びや困難を乗り越えた経験は、仕事で活かせる強みになります。粘り強さや自己管理能力を証明する説得力のあるアピールが可能です。
▼伝え方の具体例
「体調の波があるため、常に余裕のあるタスク管理を徹底する習慣が身につきました。」
「手作業に制約があることで、効率化への意識が高まりました。音声入力やショートカット機能で作業スピードを向上させています。」 |
逆質問で入社意欲をアピールする
面接の最後に「何か質問はありますか?」と聞かれた際は、積極的に質問をしましょう。
業務の具体的な進め方や指示の方法、勉強しておくとよい知識・スキルなど、応募者から積極的に質問をすることで、入社意欲の高さをアピールできます。
▼逆質問の具体例
「入社までに、身につけておくと良い知識やスキルがあれば教えていただけますか。」
「配属予定の部署では、障がいを持つ社員の方がどのように活躍されていますか。」 「入社後のキャリアパスについて、どのような可能性があるか教えていただけますか。」 |
h2:落ち着いて面接に臨むには事前準備が重要
障害者雇用の面接で質問への回答を用意していても、緊張してうまく話せなくなってしまうことがあります。落ち着いて面接に臨むためには、事前の準備が重要です。
丸暗記せずに自分の言葉で伝えられるようにする
質問への回答を丸暗記してしまうと、緊張で内容を忘れたり、想定外の質問に柔軟に対応できなかったりする可能性があります。
障がい特性や必要な配慮などを整理して、「何を伝えるか」という軸で情報を整理しておくと、自分の言葉で自然に伝えることができます。もしも言葉が詰まってしまっても、「自分の言葉で話している」という姿勢によって面接官に誠意が伝わります。
適切な言葉遣いや受け答えの仕方を学ぶ
初めて就職活動に取り組む方や面接に慣れていない方は、敬語の使い方や受け答えがぎこちなくなってしまうことがあります。
このような不安を解消するために、面接のシミュレーションや模擬面接を繰り返し行い、実践力を身につけておくと安心です。障害者雇用の面接対策をサポートしてくれる支援制度やサービスを活用すると、専門的な視点からアドバイスをもらえます。
障がいを持つ方のための転職エージェント『エージェント・サーナ』は、障害者雇用に精通した精通したキャリアアドバイザーが就職・転職活動をサポートしています。面接対策では、身だしなみ・自己PRの内容、受け答えの仕方などを具体的に指導し、模擬面接で練習を積むことができます。
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まとめ
障害者雇用の面接では、できることや強みを積極的にアピールすることがポイントです。障がいをネガティブに捉えず、これまでの仕事での経験や成果、得意なことなどを前向きな表現で伝えることが大切です。
「面接でうまく話せるか不安」「自分のことをどのようにアピールすればよいか分からない」という方は、障害者雇用向けの転職エージェントに相談することも一つの方法です。
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