障害者雇用での書類選考は、応募者の経歴やスキル、障がいの特性、配慮事項などを企業が確認するための最初のステップになります。
就職・転職活動に取り組む方のなかには、複数の求人に応募しても「書類選考で落ちてしまう」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。書類選考に通過するためには、企業がチェックする項目を理解したうえで、応募書類の書き方を見直してみることが大切です。
この記事では、障害者雇用の書類選考が通らない理由や改善を図るポイント、書類選考に通過しやすい応募方法などについて解説します。
目次
障害者雇用の書類選考でチェックされること
障害者雇用枠に応募する際の第一ステップとして、書類選考があります。
書類選考では、障がいの内容や障害者手帳の等級だけでなく、「入社後にどのように活躍できるか」「長く安定して就労できるか」「求職者が求める配慮事項に対応できるか」などが総合的に判断されます。
▼障害者雇用の書類選考で企業にチェックされること
項目 | チェックされる内容 |
業務への適性 |
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職場環境への適応力 |
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求める配慮への対応可否 |
|
このように多岐にわたる内容がチェックされるため、単に経歴やスキルを記載するだけでなく、「自分はどのような貢献ができ、そのためにどのような配慮が必要か」を明確に伝えることが重要です。
障害者雇用の書類選考に通らない理由
障害者雇用の書類選考に通らない理由には、応募書類の不備のほか、内容の書き方や職務経歴の問題など多岐にわたります。考えられる理由として、以下が挙げられます。
応募書類に不備がある
企業が指定した応募書類に不備があると、求職者に「注意力がない」「熱意が低い」と捉えられ、採用担当者に記載内容まで見てもらえない可能性があります。
▼よくある不備の例
- 提出書類が不足している
- 指定されたフォーマットに即していない
- 誤字脱字や空欄が多い など
職務経歴書の自己PRが十分でない
職務経歴書は、応募者のこれまでの経験や能力、仕事への意欲を企業にアピールするために重要な書類となります。
自己PRが抽象的になっている場合には、「この人は何ができるのだろうか」「仕事でどう活躍してくれるのだろうか」といったイメージができません。
採用担当者が応募者の就労に対する貢献意欲やポテンシャルなどを見極めることが難しくなるため、採用の候補者から外れてしまう可能性があります。
志望動機が薄い
志望動機は、入社への熱意や意欲を採用担当者に伝える目的があります。
どのような企業や職種でも当てはまるような一般的な内容を記載している場合には、「なぜその会社で働きたいのか」が伝わりません。
その結果、「企業理解が十分でない」「入社の意欲が低い」と捉えられてしまい、採用担当者の興味を引くことが難しくなります。
▼志望動機が薄い記載例
- 「企業理念に共感しました」
- 「社会貢献に魅力を感じました」 など
障がいの特性が分かりにくい
障害者雇用では、企業が応募者の障がい特性を理解したうえで、業務への適性や必要な配慮への対応について判断を行います。
障がいの内容や症状、能力などは人によって異なるため、応募書類のなかで具体的な説明がない場合には、「問題なく業務を遂行できるか」「就労するうえでどのようなサポートが必要なのか」を把握できません。
その結果、選考基準に沿った判断が難しくなり、選考を進めることができなくなります。
休職・転職の回数が多い
休職や転職の回数が多すぎると、「入社後もすぐに辞めてしまうのではないか」と採用担当者に懸念を抱かれやすくなります。
応募書類のなかで休職または転職に至った理由や現在の体調などについて説明がない場合には、「長期的に働くことが難しい」とネガティブな印象で終わってしまい、選考に通過することが難しくなります。
障害者雇用の書類選考に通過するには?改善を図るポイント
障害者雇用の書類選考に通過するためには、応募書類の不備がないように注意するとともに、志望動機や自己PRの書き方、障がいの伝え方に工夫が必要です。ここからは、書類選考の通過率を上げるための具体的な改善のポイントを紹介します。
➀誤字脱字や空欄がないようにチェックする
応募書類を提出する前に、不備がないか念入りにチェックすることが欠かせません。「集要項に記載された応募書類が揃っているか」「誤字脱字や空欄がないか」などを確認します。
企業によって異なりますが、一般的に提出を求められる書類には以下が挙げられます。
▼障害者雇用における一般的な応募書類
書類 | 主な記載項目 |
履歴書 | 応募者の基本情報
障害者手帳の区分・等級 学歴・職歴 免許・資格 志望動機 本人希望記入欄(通勤や配慮事項の概要) など |
職務経歴書 | 志望動機
職務経歴 活かせるスキル・経験 自己PR 障がいの特性 配慮事項の詳細 など |
障害者手帳のコピー | 障害者手帳の区分
障がいの名称・種類 障がい者等級 など |
主治医の診断書 | 障がいの内容
通院の頻度や服薬の状況 就労に関する制限や配慮 など |
提出前には声に出して読み上げるなどして、細かなミスがないか確認しましょう。
なお、障害者雇用における履歴書の書き方はこちらの記事で詳しく解説しています。
障害者雇用では履歴書に何を書けばいい? 記載事項と転職成功のポイント
②職務経歴書に強み・経験を具体的に記載する
職務経歴書の自己PRを作成する際は、自身の強みや経験を具体的に記載することが重要です。抽象的な表現は避け、具体的なエピソードや実績を交えて記載することで、企業による客観的な評価がしやすくなります。
▼強みや経験を記載するポイント
職歴の有無 | 記載するポイント |
職歴がある |
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職歴がない (ブランクあり) |
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職歴がない・ブランクがある場合でも、障がいを通じた自己成長は仕事にも活かすことができ、選考にもプラスに働きます。また、職業訓練や就労体験の取り組み状況を示すことにより、ブランクがあっても積極的に転職活動をしていた意欲を伝えられます。
職務経歴書の書き方について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご確認ください。
障害者雇用での職務経歴書の書き方ガイド。基本の記載項目や押さえておくポイント
③志望動機は応募職種や企業理念との関連性を持たせる
志望動機を記載する際は、一般的かつ抽象的な内容は避け、応募職種や企業理念との関連性を持たせることがポイントです。応募職種によって企業に求められる適性や能力は異なるため、「自分の能力や経験が企業でどのように活かせるのか」を紐づけて伝えましょう。
また、企業が掲げる理念や風土への共感性は、応募者とのマッチ度を図る材料となります。自分の考え方や仕事に対する姿勢を示して、「なぜその会社を選んだのか」「どのように活躍したいのか」を明確に伝えることが大切です。
▼志望動機に記載する内容
- 企業の理念・ビジョン・文化などに共感した内容・理由
- 自分の職歴や保有スキルを活かせる場面や貢献できる業務
- 会社で成し遂げたい成果や今後歩みたいキャリア など
④障がいの内容や配慮事項を具体的に記載する
障がいによる症状や体力、能力などは個人差があるため、自分の障がい特性を分かりやすく伝える必要があります。
障がいの診断名や障害者手帳の等級だけでなく、「どのような業務なら問題なく遂行でき、そのためにはどのような配慮が必要か」を企業が判断できるようにすることが重要です。
▼障がい特性を書く際のポイント
- 診断名だけでなく具体的な症状や通院、服薬状況を記載する
- 業務遂行のための工夫や自己対処法を伝える
- 得意なこと・苦手なことを具体的な作業内容や場面で説明する
- 主治医の指示を記載して客観的な情報を示す など
配慮事項の具体的な書き方についてはこちらの記事をご確認ください。
障害者雇用での配慮事項の書き方。基本の記載項目や採用担当者に伝えるポイント
⑤転職回数やブランクは前向きに表現する
転職回数が多いまたは長期のブランクがある場合には、正直に記載しつつ、今は安定して働ける状態にあることや、その期間に得た経験を前向きにアピールすることがポイントです。
退職の理由や求職中の取り組みを前向きに表現することで、ネガティブな印象を払拭して、応募者の誠実さや就労意欲を評価してもらえる可能性があります。
▼転職回数やブランクに関する前向きな伝え方の具体例
- 就労移行支援事業所で訓練を受けて就労準備をしていた
- 資格の勉強をしていた
- 治療に専念していたが、適切な医療ケアを受けて復帰可能な状態になった など
書類選考を通過しやすい障害者雇用枠への応募方法
障害者雇用枠に応募する際、職種や企業を選ぶ視点を変えることによって書類選考に通過しやすくなる可能性があります。ここからは、書類選考が通過しやすいと考えられる応募方法について紹介します。
経験のある職種を選ぶ
これまでに経験したことのある職種を選ぶと、書類選考に通過しやすくなります。なぜなら、即戦力としての活躍が期待できるためです。
職務経歴書の内容から「入社後にどのような業務を任せられるか」「どのような成果を上げられるか」を具体的にイメージでき、企業が安心して受け入れられます。
また、経験のある職種を選ぶと、仕事内容や働き方への適性も高く、入社後も長く安定して働いてもらえると見込まれるため、選考通過につながりやすくなります。
同じ障がいを持つ方の雇用実績がある企業に応募する
自分と同じ障がいを持つ方の雇用実績がある企業に応募することも、書類選考に通過する可能性を高める方法といえます。
このような企業は、障がいの特性に対する理解が深く、業務遂行に必要な配慮やサポート体制がすでに確立されていると期待できます。
また、企業側も過去の雇用経験から障がいを持つ方が活躍できる業務や環境を把握しているため、応募書類から「業務適性や職場への適応性がある」と判断されやすくなります。
障害者雇用の就職活動は転職エージェントに相談しよう
書類選考に受からないという方は、第三者のアドバイスを受けることも一つの方法です。
障害者雇用に特化した転職エージェントを活用すると、障がい特性やスキル、希望条件に沿った求人の紹介から応募書類の書き方、面接対策に至るまで、就職・転職活動をサポートしてくれます。
『エージェント・サーナ』では、障害者雇用をサポートしてきた30年以上の実績があります。専門知識を持つキャリアアドバイザーが、経験や強みを客観的に評価して、選考を通過するためのサポートを実施します。非公開求人も多数保有しており、適性や希望に合った企業とのマッチングを支援いたします。
まとめ
「書類選考がなかなか通らない」という場合は、応募書類の単純な不備があったり、自己PRや志望動機、障がいに関する説明が不十分になっていたりする可能性があります。
「この人に会って話が聞きたい」と思ってもらえる応募書類を作成するには、自分の強みや入社の意欲、必要とする配慮などを具体的に記載することがポイントです。
書類選考のステップでつまずいている場合には、転職エージェントに相談して専門的な視点からアドバイスをもらうことで、新たな道が開けるかもしれません。
障害者雇用に特化した転職エージェント『エージェント・サーナ』は、あなたにぴったりな仕事と企業を見つけ、理想のキャリアを築くサポートをいたします。応募書類での自己PRや志望動機の書き方など、悩みやすいポイントも分かりやすくアドバイスいたします。