
障害者雇用では、事業者に対する障がい者の雇用割合(=法定雇用率)が定められています。この法定雇用率は、今後段階的に引き上げられることが決まっています。
障害者雇用で就職・転職を検討している方にとって、自身のキャリアの選択肢を広げる大きなチャンスとなることが期待されています。
この記事では、法定雇用率の仕組みや引き上げ率、求職者側のメリット、今後の障害者雇用などについて解説します。
※2025年9月時点の情報を基に作成しています
目次
障害者雇用における法定雇用率の仕組み
法定雇用率とは、障害者雇用促進法に基づいて定められた障がい者の雇用割合のことです。障害者雇用制度において、すべての事業者は従業員の一定割合以上の障がい者を雇用することが義務づけられています。
2025年10月時点の法定雇用率は、以下のとおりです。
▼現行の法定雇用率
| 事業主の区分 | 法定雇用率 |
| 民間企業 | 2.5% |
| 国・地方公共団体 | 2.8% |
| 都道府県の教育委員会 | 2.7% |
例えば、常時雇用する従業員が150人の民間企業の場合、[150人×2.5%=3.75人]となり、3人以上の障がい者を雇用する必要があります。
対象となる事業者の範囲
障がい者の雇用が義務づけられる民間企業の事業者は、従業員数が40人以上の会社となっています。対象となる事業者が法定雇用率を下回る場合には、申告とともに一人当たり月額5万円の納付金の納付が必要とされています。
出典:厚生労働省『障害者雇用のご案内』
法定雇用率による雇用対象者
法定雇用率による雇用対象者は、障害者手帳の交付を受けている人となります。
▼障害者雇用での就労が可能になる対象者
| 障がいの区分 | 対象者 |
| 身体障がい者 | 身体障害者手帳1級から6級に該当する方 |
| 知的障がい者 | 児童相談所で知的障がい者と判定された方 |
| 精神障がい者 | 精神障害者保健福祉手帳を持つ方 |
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出典:厚生労働省『障害者雇用のご案内』
実雇用率の推移
2024年6月1日時点で民間企業に雇用されている障がい者の数は約67.7万人となっており、21年連続で過去最高を更新しています。実雇用率は2.41%となり、法定雇用率の2.5%に届かないものの長期的に上昇している状況です。
▼障害者雇用での雇用者数の推移

画像引用元:厚生労働省『障害者雇用のご案内』
このような結果を見ると、障がいを持つ方が自身の能力や特性に応じて活躍できる場が広がっていることが分かります。法定雇用率の引き上げは、障がいを持つ方のさらなる活躍につながると期待されます。
出典:厚生労働省『障害者雇用のご案内』
法定雇用率は段階的に引き上げへ
障がいの有無にかかわらず、能力や機能に応じて働ける共生社会を実現するために、2024年4月以降において法定雇用率は段階的に引き上げられています。
2026年7月以降の法定雇用率
民間企業の法定雇用率は2023年度まで2.3%でしたが、2024年4月からは2.5%、2026年7月には2.7%まで引き上げられることが決定しました。
適用開始時期と法定雇用率の引き上げ率は、以下のとおりです。
▼法定雇用率の引き上げ

画像引用元:厚生労働省『障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について』
対象となる事業者の規模については、2024年4月以降は40人以上、2026年7月以降は37.5人以上となり、対象範囲が拡大されます。
また、2026年7月1日からは国・地方公共団体や都道府県の教育委員会についても民間企業と同様に法定雇用率が引き上げられます。国・地方公共団体は2.8%→3.0%、教育委員会は2.7%→2.9%になります。
出典:厚生労働省『障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について』
特定業種における除外率の引き下げ
障害者雇用制度では、身体的な制限から障がいを持つ方が就くことが難しい特定の業種について、法定雇用率の算定から除外できる割合(=除外率)が定められています。
この除外率は、法定雇用率の引き上げとともに将来的な廃止が予定されており、2025年4月から段階的に引き下げられています。
除外率が設定される業種と2025年4月1日改訂の除外率は、以下のとおりです。
▼2025年4月以降に適用される除外率

画像引用元:厚生労働省『障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について』
出典:厚生労働省『障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について』
法定雇用率の引き上げが決定された背景
障がい者の法定雇用率の引き上げには、社会経済的な背景があります。
▼法定雇用率の引き上げが行われた背景
- ノーマライゼーションの推進による共生社会の実現
- 労働力の確保による生産性向上
ノーマライゼーションとは、障がいの有無にかかわらず、誰もが社会の一員として当たり前に生活できるようにする社会のことです。法定雇用率の引き上げは、このノーマライゼーションの考えに基づいています。
一人ひとりの希望や能力に応じて就業を通じた社会参加を促進するとともに、障がいのある方が活躍できる職域を拡大することで、共生社会を目指す目的があります。
また、障がいの特性を「強み」として捉え、パフォーマンスを発揮できる場所を提供することは、企業の貴重な労働力を増やすことにつながります。少子高齢化によって今後も人手不足が進行すると予測されるなか、障害者雇用を促進することは企業が持続的な成長を目指すうえで重要と考えられています。
法定雇用率の引き上げによる求職者側のメリット
障害者雇用枠での就職・転職を考えている方にとって、法定雇用率の引き上げは就職活動のチャンス拡大につながると期待されます。具体的なメリットには、以下が挙げられます。
求人数が増加して就職が決まりやすくなる
法定雇用率が引き上げられると、法令を遵守するために障がい者の雇用枠が拡大され、市場全体の求人数が増加すると考えられます。
求人数が増加すれば、障害者雇用での就職・転職の競争が緩和され、求職者が就職活動をスムーズに進めやすくなることが期待できます。
業種・職種の選択肢が広がる
法定雇用率の引き上げに伴い、企業による積極的な採用活動が見込まれます。これにより、事務職や軽作業に偏っていた求人構造が変化して、求職者が従事できる業種・職種の選択肢が広がる可能性があります。
選択できる職域が拡大することは、就職経験がない人の社会参加が促進されるだけでなく、求職者自身の今後のキャリア形成にもよい影響をもたらします。未経験の職種や自身が希望する仕事に就ける可能性があります。
働きやすい環境の整備が期待できる
法定雇用率の引き上げによって企業で働く障がい者が増えることで、障がいを持つ方が働きやすい職場環境になることが期待できます。
例えば、多様性を受け入れる職場風土が醸成されたり、障がいに対するきめ細かな配慮を受けられたりすることが考えられます。障がいのある方が安心して長く働ける環境が整備されると、自身の能力や経験を最大限に発揮できるようになります。
障害者雇用の今後はどうなるのか
法定雇用率の引き上げにより、障害者雇用は今後拡大していくことが見込まれます。
企業では、継続かつ安定した障害者雇用を継続するために、単に「法定雇用率を達成する」という目標にとどまらず「どのように雇用の質を高めるか」といった点が重視されていくと考えられます。
これから障害者雇用での就職・転職活動を検討している方は、企業による採用活動や求人募集の傾向などを押さえておくことが大切です。
オープンポジションによる雇用の増加
従来の障害者雇用では、求人募集の段階で配置する業務内容や役割が具体的に決められているケースが一般的でした。
今後は法定雇用率の引き上げに伴って雇用者数を増やす必要があることから、募集段階では配属部門や職務を決めない「オープンポジション」での雇用が増えると考えられます。
オープンポジションでの雇用は、個々の障がい特性・能力・適性などを踏まえて入社後の配置が決定されるため、求職者にとってさまざまなメリットがあります。
▼オープンポジションの雇用による求職者側のメリット
- 自身の強みを最大限に生かせる仕事に就ける
- 未経験の職種で新たなキャリアを築ける など
企業と求職者をつなぐ支援機関との連携
障害者雇用では、企業が法定雇用率を達成・維持していくために「採用した人材に長く安定して働いてもらうこと」が重視されます。そのため、求職者の業務遂行能力だけでなく「企業の理念や価値観とのマッチング」「職場環境への適応性」なども重要となります。
このような理由から、よりマッチング度の高い雇用を実現するために、企業と障がいを持つ方をつなぐ支援機関と連携した採用活動が主流になると考えられます。
就職・転職活動を行う際は、公的支援機関や民間の転職支援サービスなどを活用することで、自身の特性や希望に合った企業と出会える可能性が高まると期待されます。
▼企業と求職者をつなぐ支援機関・サービスの例
| 支援機関・サービス | 概要 |
| ハローワーク | 障がい者専用窓口があり、職員による職業相談や求人紹介、面接対策などを受けられる |
| 就労移行支援事業所 | 就職に必要な基礎スキルを身につける職業訓練や就職活動の支援、企業での職場実習、実習職場への定着支援などを受けられる |
| 転職エージェント | 障害者雇用専門の転職エージェントがあり、非公開求人紹介や選考対策、企業との条件交渉代行などのサービスを利用できる |
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まとめ
法定雇用率は、2024年4月と2026年7月に段階的に引き上げられます。このような法定雇用率の引き上げは、障害者雇用の市場構造を変え、求職者にとって「業種・職種の選択肢の拡大」や「雇用の質の向上」というメリットが期待されます。
また、今後の障害者雇用では、求職者の適性を重視して人員配置を行う「オープンポジション」の増加や、支援機関との連携による「マッチングの重視」が進むと考えられます。
あなたの能力を最大限に発揮できる職場と出会えるように、公的支援機関や転職支援サービスをうまく活用して転職活動に取り組んでみてください。
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