
障がいのある方が転職する際には、「次の仕事がすぐに決まるのか分からない」「転職活動中の生活費が心配…」といった不安があるのではないでしょうか。
企業と雇用契約を結んで働いていた方であれば、自己都合による退職であっても再就職までの生活を支えるための「失業保険」による手当を受けられます。なかでも障がいのある方は、一般の受給者よりも手厚い保障が適用される可能性があります。
この記事では、失業保険の仕組みをはじめ、障がい者に手厚い保障が適用されるケース、給付申請から受給までの流れなどを分かりやすく解説します。
※2026年2月の情報を基に作成しています。
目次
失業保険(求職者給付)とは
失業保険とは、失業した方が再就職するまでの生活を支える公的な給付制度です。一般的に「失業保険」と呼ばれている制度は、雇用保険における「求職者給付」を指します。
求職者給付には対象者に応じて3つの区分があります。
▼雇用保険の求職者給付
| 区分 | 対象者 |
| 基本手当 | 一般被保険者 |
| 高年齢求職者給付金 | 高年齢被保険者(65歳以上で特例被保険者・日雇労働被保険者以外の方 |
| 特例一時金 | 短期雇用特例被保険者(季節的業務に期間を定めて雇用されている方、季節的に入職・離職されている方) |
今回は、失業保険として代表的な「基本手当(いわゆる失業手当)」について解説します。
基本手当(失業手当)を受給するための要件
一般の被保険者を対象とした基本手当を受給するには、雇用保険に加入していた期間(被保険者期間)が一定以上あることが必要です。
被保険者期間は、離職の理由によって異なります。
▼離職理由別の被保険者期間
| 離職理由 | 受給に必要となる被保険者期間 | |
| 原則 | 自己都合や定年退職、契約期間満了など | 原則として離職の日を含む2年間に12ヶ月以上 |
| 例外 | やむを得ない理由(倒産・解雇・労働契約の更新不可など) | 離職の日を含む1年間に6ヶ月以上 |
また、基本手当は再就職を目指す方を支援することが目的のため、以下のような方は原則として受給することができません。
▼基本手当の支給対象外となる方の例
- 次の就職先が決まっている方
- 雇用保険の加入対象とならない就労方法を希望する方
- 就業に就くことができない方
- 自営業または自営の準備をする方
- 就職中または試用期間中の方 など
※被保険者の状態や離職理由によっては受給できる可能性もあるため、詳しくはハローワークへの問い合わせが必要です。
支給が開始されるタイミングと受給期間
雇用保険の基本手当は、ハローワークに離職票を提出したあとすぐに支給されるわけではありません。離職の理由によって「待機期間」と「給付制限期間」が定められており、支給が開始されるタイミングが異なります。
▼離職理由別の待機期間・給付制限期間
| 離職理由 | 待機期間 | 給付制限期間 |
| 会社都合(解雇・定年・契約期間満了)
正当な理由のある自己退職 |
7日間 | なし |
| 自己都合(離職日が2025年4月1日以降) | 7日間 | 1ヶ月 |
| 自己都合(離職日が2025年3月31日以前) | 7日間 | 2ヶ月 |
| 懲戒解雇 | 7日間 | 3ヶ月 |
正当な理由のない自己都合や懲戒解雇による離職の場合には、7日間の待機期間に加えて一定(1~3ヶ月)の給付制限期間が設けられています。受給期間については、離職理由にかかわらず原則「離職日の翌日から1年間」となっています。
また、基本手当を受給するには、原則として4週間に1回ハローワークに通い「失業の認定」を受ける必要があります。認定期間中は、前回の認定日から今回までに原則2回以上の求職活動の実績が求められます。
1日当たりの給付額
1日当たりに支給される基本手当の金額を「基本手当日額」と呼びます。
基本手当日額は、「離職した日以前の6ヶ月間に毎月支払われた賃金の合計を180で割った金額(賃金日額)」のおよそ5~8割となります。働いていたときの賃金が低い方ほど、高い給付率が適用される仕組みとなっています。
また、賃金日額には上限額・下限額が定められており、これによって基本手当日額の上限額・下限額も変動します。
▼【2025年8月】の賃金日額・基本手当日額の上限額・下限額
| 離職時の年齢 | 賃金日額 | 基本手当日額 | ||
| 上限額 | 下限額 | 上限額 | 下限額 | |
| 29歳以下 | 14,510円 | 3,014円 | 7,255円 | 2,411円 |
| 30~44際 | 16,110円 | 8,055円 | ||
| 45~59際 | 17,740円 | 8,870円 | ||
| 60~64際 | 16,940円 | 7,623円 | ||
※厚生労働省『雇用保険の基本手当日額が変更になります』を基に作成
なお、基本手当の算定基準となる賃金日額は、「毎月勤労統計の平均定期給与額」に基づいて毎年8月1日に改定されます。
基本手当の給付日数
基本手当をもらえる日数(所定給付日数)は、離職理由や被保険者期間、年齢によって決定されます。自己都合や契約期間満了、定年による離職の場合の給付日数は、90日~150日となっています。
▼基本手当の給付日数(一般受給者・自己都合退職)
| 被保険者期間 | 10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
| 65歳未満 | 90日 | 120日 | 150日 |
障がいのある方で「就職困難者」または「特定理由離職者」として受給資が認定されると、給付日数の優遇措置が適用されます。
出典:厚生労働省『離職されたみなさまへ』/ハローワークインターネットサービス『基本手当について』
障がいのある方が失業保険を受給する場合はどうなる?
障がいのある方が雇用保険の基本手当を受給する場合には、一般の受給者よりも給付日数が長く設定されることがあります。優遇を受けられるケースには、以下が挙げられます。
就職困難者に該当するケース
「就職困難者」とは、障がいや難病、社会的な事情によってスムーズな就職が著しく制限されていると判断された方を指します。主に身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳を取得している方が対象となります。
ハローワークに就職困難者として認定された方は、一般受給者よりも長い期間にわたって基本手当を受給することが可能です。
▼就職困難者における基本手当の所定給付日数
| 被保険者期間 | 1年未満 | 1年以上 |
| 45歳未満 | 150日 | 300日 |
| 45歳以上65歳未満 | 360日 |
一般の受給者の給付日数は最大150日となるのに対して、就職困難者は最大360日と手厚い保障を受けられるようになっています。
特定理由離職者に該当するケース
倒産や解雇などの会社都合による離職のほか、自己都合退職であっても避けることができない正当な理由がある場合には「特定理由離職者」に認定されることがあります。
障がいのある方に該当する可能性があるケースには、以下が挙げられます。
▼特定理由離職者に該当する場合があるケース
- 心身の障がいや病気の悪化などで業務への従事が困難になり離職した
- 職場環境の変化や配慮を受けられなくなったことで健康状態が悪化して離職した
特定理由離職者に認定されると、基本手当の給付について以下が適用されます。
▼特定理由離職者の所定給付日数
| 被保険者期間 | 1年未満 | 1年以上
5年未満 |
5年以上10年未満 | 10年以上
20年未満 |
20年以上 |
| 30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | – |
| 30歳以上35歳未満 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 | |
| 35歳以上45歳未満 | 150日 | 240日 | 270日 | ||
| 45歳以上60歳未満 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | |
| 60歳以上65歳未満 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
また、受給要件として定められている被保険者期間が「離職の日以前1年間に6か月以上」に短縮され、働いている期間が短い方でも受給することが可能です。さらに「給付制限期間」も免除されるため、7日間の待機期間終了後すぐに基本手当を受け取れます。
受給期間内に働くことができないケース
基本手当の受給期間は、原則として離職の翌日から1年間となっています。
しかし、病気やケガによってこの期間に働けない状態が30日以上続いた場合には、受給期間を「最長3年間」まで延長することが可能です。
また、再就職のためにハローワークの公共職業訓練を受講している場合は、訓練期間中に所定給付日数が終了しても、訓練が終了する日まで基本手当を受給できます。
出典:厚生労働省『離職されたみなさまへ』/ハローワークインターネットサービス『基本手当について』『特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要』
失業保険の給付申請から受給までの流れ
失業保険を利用するには、離職後にハローワークへの申請手続きが必要です。ここからは、申請から受給までの流れを解説します。
①ハローワークへの必要書類の提出
お住まいの地域のハローワークに出向き、「求職の申込み」を行ってから離職票を含む必要書類を提出します。
▼必要書類一覧
|
離職票は、基本的に勤めていた会社から交付されますが、自分で受け取りが必要になる場合もあります。会社から入手できない場合は、ハローワークに問い合わせが必要です。
②受給資格の決定
必要書類の提出後、ハローワークにて受給要件の確認が行われます。受給要件を満たしていると確認できれば、受給資格が決定されます。
▼受給資格の決定後に行われること
- 受給資格者証を含む必要書類の交付
- 雇用保険の受給や就職活動に関する説明会の実施
離職理由によって受給資格が変わるため、会社側がハローワークに申告した離職理由に異議がある場合には、ハローワークに相談しましょう。例えば、「退職勧奨であるにもかかわらず、自己都合退職とされた」などのケースが考えられます。
③待機または給付制限の期間
受給資格の決定を受けてから基本手当が支給されるまでに、7日間の待機期間があります。
また、自己都合による離職の場合には、7日間の待機期間が満了した翌日から原則1ヶ月間、懲戒解雇の場合は3ヶ月間の給付制限期間が発生します。
この待機期間と給付制限期間は、基本手当の支給は行われません。
※離職日が2025年3月以前の場合は2ヶ月間
④失業の認定・申告書の提出
受給資格が決定されると、4週間ごとに「失業認定日」が設定されます。
基本手当を受給するには、原則として4週間に1回ハローワークに出向いて「受給資格者証」と「失業認定申告書」を提出して、失業認定を受ける必要があります。
失業認定では、認定期間中に行った求職活動の実績(認定対象期間中に原則として2回以上)や再就職の状況などを基に判断が行われます。
▼求職活動の範囲
- 求人への応募
- ハローワークでの職業相談や各種講習、セミナーの受講
- 民間機関による職業相談や職業紹介、セミナーの受講
- 公的機関が実施する職業相談や各種講習、セミナーの受講
- 個別相談ができる企業説明会等の参加
- 再就職のための国家試験や資格試験の受験 など
⑤基本手当の振り込み
ハローワークの失業認定を受けた日から5営業日程度で、指定した預金口座へ基本手当が振り込まれます。
再就職が決まるまでの間は、所定給付日数を上限として「失業認定」と「受給」のサイクルを繰り返して求職活動を行うことになります。
出典:厚生労働省『離職されたみなさまへ』
失業保険の基本手当に関するよくある質問と回答
ここからは、失業保険の基本手当に関するよくある質問にお答えします。
受給資格の判断はどのように行われる?
受給資格は、主に「雇用保険の加入期間」「離職理由」「失業の状態」の3つの視点から判断されます。雇用保険の加入期間や離職理由によって、給付制限期間の有無や所定給付日数などが異なります。
また、失業の状態については「今働いていない」という事実だけでなく、働く意欲と働ける能力があるものの就職できていないことが求められます。
求職活動の支援は受けられる?
失業保険で基本手当を受給するには、ハローワークでの求職の申込みが必要です。求職の申込みをすると、職業相談や求人紹介、採用面接の同行、公共職業訓練などのさまざまな支援を受けることができます。
基本手当のほかに受給できる手当はある?
失業保険には、基本手当のほかにもさまざまな手当が用意されています。
▼基本手当以外の手当例
| 手当 | 概要 |
| 再就職手当 | 待機期間の経過後に早期に安定した職業に就いた場合に支給される手当 |
| 技能習得手当 | ハローワークの指示によって公共職業訓練を受講する際に支給される手当(受講手当・通所手当) |
| 常用就職支度手当 | ハローワークの紹介で安定した職業に就いた場合に支給される手当 |
障害年金と同時に受け取ることができる?
障害年金と失業保険(基本手当)は目的が異なるため、同時に受け取ることが可能です。
ただし、失業保険は再就職を支援するための手当となり、「就労できる意思と能力がある状態」の方が対象となります。重度の障がいによって就労が困難な場合には、基本手当の支給が認められない可能性があります。
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障がいのある方のなかには、離職後に再就職に向けた求職活動を行っているものの「障がいがあっても働ける求人が見つからない」「面接を受けても採用が決まらない」という方もいるのではないでしょうか。
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まとめ
障がいのある方が離職した際には、一般の受給者よりも手厚い失業保険の手当を受けられる可能性があります。基本手当を受給することで、安定した生活を維持しつつ再就職のための求職活動に集中して取り組むことができます。
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