
特例子会社は、障がいのある方の就労機会を確保するために設けられた会社です。
職場環境や働き方などに対する手厚い配慮を受けられるため、一般雇用での就労が難しい方も自分らしく安定して働ける魅力があります。
一方で、「特例子会社は働きやすいと聞くけれど、給料だけで生活していけるのか?」「将来的に年収を上げるチャンスはあるのだろうか?」など、給与面に関する不安を持つ方も少なくありません。
この記事では、特例子会社における平均年収の実態や働く側のメリット、キャリアアップを目指すポイントなどを解説します。
目次
特例子会社の仕組み
特例子会社は、障がいのある方の雇用の促進と就労の安定化を図るために設立された子会社です。事業主(親会社)は、特例子会社で雇用する労働者を「障害者雇用制度の法定雇用率」に算入することができ、障がい者の雇用機会の拡大につながっています。
▼特例子会社制度

画像引用元:厚生労働省『「特例子会社」制度の概要』
特例子会社では、親会社と異なる労働条件を柔軟に設定できる仕組みが導入されているため、給料の支給額は会社によって大きく異なります。
2024年6月時点において、全国で614社が特定子会社の認定を受けており、約5万290人の障がい者が活躍しています。
出典:厚生労働省『令和6年 障害者雇用状況の集計結果』
特例子会社の給料は低い?障害者雇用の平均年収を比較
野村総合研究所が2018年12月に公表した『障害者雇用及び特例子会社の経営に関する実態調査 調査結果』を基に、特例子会社の平均年収を見てみましょう。
特例子会社で働く方の平均年収は「151~200万円」がもっとも多く、全体の33.8%を占めています。
▼特例子会社の平均年収
| 平均年収 | 障がい者の割合 |
| 151~200万円 | 33.8% |
| 201~250万円 | 26.3% |
| 101~150万円 | 19.7% |
| 251~300万円 | 10.6% |
次に、厚生労働省『令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書』を基に、一般企業の障害者雇用の給料について見ていきます。
1ヵ月あたりの週所定労働時間別平均賃金は、身体障がい者平均で「23万5,000円」となっており、これを年収に換算すると「282万円」となります。
特例子会社は一般企業の障害者雇用と比較して給料の水準が低い傾向が見られます。
出典:野村総合研究所『障害者雇用及び特例子会社の経営に関する実態調査 調査結果』/厚生労働省『令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書』
特例子会社の給料が低くなりやすい理由
特例子会社では、障がいのある方が安定して働ける職場環境が重視されているため、職務の範囲や雇用形態が一般企業と異なることも少なくありません。給料が低くなりやすい理由には、主に以下が挙げられます。
職務の範囲が限定されるため
障がいを持つ方の就労機会を確保するために設立された特例子会社は、親会社の事業を支えるバックオフィスや補助的な業務を中心として担っている会社が多く見られます。
厚生労働省がまとめた特例子会社への調査結果によると、障がい者の担当業務としてルーチンワークやマニュアル化された業務が多く見られています。
▼特例子会社で働く障がい者の担当業務
| 担当業務 | 特例子会社の回答割合 |
| 事務・事務補助 | 76.4% |
| 清掃・衛生管理 | 69.2% |
| 郵便・社内便 | 45.6% |
| 印刷・製本 | 37.9% |
| 製造・ものづくり | 32.3% |
このように高い専門性や複雑な判断を求められる場面が少なくなりやすいことから、一般企業の障害者雇用枠と比べて基本給が低く設定されやすい傾向があります。
出典:厚生労働省『事務局説明資料 障害者雇用の質について』
非正規雇用で働く方も多いため
特例子会社では、契約社員やパートなどの非正規雇用で働いている方も多く見られます。
フルタイムで働く正規雇用の労働者と比べて労働時間が短いことによって、月々の給料が低くなっている場合があります。
また、昇給・昇進・賞与などの人事評価基準が一般企業と異なるケースもあり、キャリアアップの機会を十分に得られないことも、特例子会社の給料水準が低いと言われる要因の一つとなっています。
給料が低くても人気!特例子会社を選択する5つのメリット
特例子会社では、一般企業の障害者雇用枠と比べると給料が低くなりやすいですが、障がいを持つ方が安定して働ける環境が整備されており、さまざまなメリットがあります。
①多様な障がいを持つ方が活躍できる
障がいのある方の雇用に特化して設立された特例子会社では、個々の障がい特性に応じて柔軟に労働条件の設定や配慮事項への対応が行われます。
そのため、一般企業の障害者雇用ではマッチングが難しかった方や実務経験が浅い方でも、意欲やポテンシャルを重視して採用される傾向があります。多様な障がいを持つ方が、それぞれの個性を活かして活躍できる場となっています。
②障がい特性や能力に応じた業務に就ける
特例子会社では、障がいに配慮した仕事内容と職場環境があらかじめ設計されています。
個々の能力に応じて適性のある業務が用意されるため、入社後のミスマッチが生じにくくなり、無理なく安定して働くことが期待できます。
業務のマッチングに対する企業の取り組み状況を比較すると、以下のようになっています。
▼障害者雇用での業務のマッチングに関する取り組み状況

| 1 | 複数の手段による、障害者の能力や特性の把握(面接、作業観察、支援機関からの情報提供等) |
| 2 | 入社前の実習やインターンシップ |
| 3 | 担当職務についての障害者本人の希望の確認 |
| 4 | 個々の障害者の能力や特性に合った職務の創出又は再構成 |
| 5 | 障害者の能力や特性と業務とのマッチングの定期的な状況確認 |
厚生労働省『事務局説明資料 障害者雇用の質について』を基に作成
特例子会社は、業務の適性や能力について定期的な確認・フィードバックを行っている事業者の割合が多く、安定して働き続けられる支援体制が整っていることが分かります。
また、一般企業にある部署異動や業務変更などがない会社も多いため、「変わらない職場環境で働ける」というメリットもあります。
出典:厚生労働省『事務局説明資料 障害者雇用の質について』
③心理的な安全性が確保されやすい
同じような境遇や悩みを持つ労働者と一緒に働けることは、大きな安心感につながります。
障害者雇用における人員の配置場所を見ると、一般企業では「一般社員と同じ既存部署内に配置(混合配置)」が96.8%と大半を占めています。
一方の特例子会社は、「障がい者のみで構成される部署に配置(集合配置)」が全体の57.5%となり、お互いの悩みを理解し合える環境が醸成されやすくなっています。
▼障害者雇用における障がい者の配置場所

画像引用元:厚生労働省『事務局説明資料 障害者雇用の質について』
これにより、職場のなかでの孤立を防ぎ、お互いに協力しながら安心して働くことができます。また、障がいに対する周囲の深い理解があることから、「迷惑をかけるのではないか」「配慮をお願いしづらい」といった不安も生じにくいと考えられます。
出典:厚生労働省『事務局説明資料 障害者雇用の質について』
④バリアフリー環境が整備されている
障がいを持つ方が快適に働けるように、オフィスや施設内のバリアフリー設備が整えられていることも特例子会社で働くメリットの一つです。
▼バリアフリー設備の具体例
- エレベーター
- 多機能トイレ
- 階段や段差へのスロープ
- 自動ドア
- 廊下の手すり など
業務に従事するときだけでなく、移動や休憩などをスムーズに行える物理的な環境が整っていることは、障がいを持つ方にとって日々の働きやすさに直結します。
⑤福利厚生が充実している会社が多い
特例子会社のなかには、親会社と同様の福利厚生が用意されている場合や、障がい者を対象とした独自の福利厚生制度が導入されている場合があります。
▼福利厚生の具体例
- 通院のための特別休暇やフレックスタイム制度
- 産業医やカウンセラーによる健康相談・メンタルケア
- 宿泊施設やレジャー施設の優待
- 住宅手当や家族手当の支給
- スキルアップのための資格取得の支援 など
障がい者に対して手厚い福利厚生が提供されている特例子会社を選ぶことにより、通院・療養との両立やセルフケアなどに役立てられます。
特例子会社の給料を上げるには。キャリアアップを目指すポイント
ここからは、特例子会社への就職を検討している方や現在活躍している方に向けて、給与を上げるためのキャリア形成のポイントを紹介します。
資格を取得する
スキルを客観的に証明できる資格は、給与アップのための武器になります。
資格を取得することで従事できる業務の範囲が広がるほか、専門性が高いほど人材の市場価値が高まるため、好条件の待遇を目指しやすくなります。
特例子会社によっては、資格手当を支給したり、特定の資格保持者の基本給を高めに設定したりしている企業があります。
▼障害者雇用で給与アップを目指しやすい資格例
| 分野 | 資格例 |
| PCスキルに関する基礎的な資格 | MOS、ITパスポート、日商PC検定 など |
| 事務に役立つ資格 | 日商簿記検定、秘書検定、文書情報管理士 など |
| 専門性の高い資格 | 社会労務士、Webデザイナー検定、HTML5プロフェッショナル試験、C言語プログラミング能力認定試験 など |
評価制度やキャリアパスを確認する
特例子会社によって評価制度やキャリアパスは異なります。
キャリアアップを通じて給料を上げたい方は、障がい者に対する評価制度やキャリアパスがどのように設定されているか確認することが必要です。
▼確認するポイント
- 業務実績に基づく人事評価(昇進・昇給・賞与)の明確な基準があるか
- 障がいの特性や希望を踏まえた複数のキャリアパスが提示されているか
- 個別のキャリアプランに基づく教育訓練や研修制度があるか
- 上司や人事担当者などへのキャリア相談の機会が用意されているか など
正社員登用ありの会社を選ぶ
契約社員やパートなどの非正規雇用からスタートする場合は、「正社員登用制度があるかどうか」を確認しておきましょう。
業務実績やスキルを積んで正社員登用を目指すことで、基本給のアップや賞与の支給などの待遇向上が期待できます。
これから特例子会社への就職を検討している方は、正社員登用制度の有無だけでなく、「実際の登用実績(人数や移行割合)」まで確認しておくと安心です。
一般企業の障害者雇用枠への転職を目指す
特例子会社で実務経験を積んでから、一般企業の障害者雇用枠へ挑戦することも一つの方法です。一般企業の障害者雇用枠では、人事評価の基準について一般の労働者と共通の基準が適用されている会社も多くあります。
「スキルを積んで業務の専門性を高めたい」「リーダー職や管理職を目指したい」といった希望がある方にとって、一般企業への転職は収入を上げるチャンスになります。
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希望条件に合った特例子会社の求人を見つける方法
特例子会社の求人情報は、ハローワークの障害者専用窓口や障害者向けの就職・転職サイトで公開されています。
しかし、数ある求人の中から「自分の障がい特性に本当に合っているか」「目標とするキャリアプランを実現できるか」を判断することは簡単ではありません。
もしも「自分に合った職種が分からない」と迷ったり、長く働き続けられるか不安を感じたりしている場合は、障害者雇用について専門的なサポートを受けられる「転職エージェント」の活用が有効です。
▼転職エージェントを活用するメリット
- 一般公開されていない非公開求人と出会える
- プロの視点から適性診断やスキルの棚卸をサポートしてもらえる
- 配慮事項や労働条件の交渉を代わりに依頼できる など
まとめ
特例子会社での就労は、障がいに配慮された職場環境や手厚いサポート体制のなかで、安心して働けるメリットがあります。一般企業の障害者雇用と比べて給料が低くなる場合もありますが、資格や実務経験を武器にしてキャリアアップを目指す道もあります。
給与面の条件だけでなく、長期的な視点を持って「無理なく安定して働けるか」「将来のキャリア目標をどのようなプロセスで達成するか」を考えて働き方を選ぶことが大切です。
「給与に満足していないが、転職すべきか判断に迷う」「一般企業の就労も視野に入れて、今後のキャリアを考えたい」といった方は、『エージェント・サーナ』に相談してみませんか?あなたの可能性を最大限に引き出せるキャリア選択をサポートいたします。






