
障害者雇用での就労を検討するにあたって「職場に配慮をお願いしたいけれど、“わがまま”と思われないか」「特別扱いと言われて周囲に敬遠されないか」など、不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
合理的配慮は、障がいのある方がほかの労働者と公平に働く機会を得るためのものですが、企業への伝え方次第で誤解を与えてしまうリスクがあるのも事実です。
この記事では、合理的配慮と「わがまま」の違いを整理したうえで、企業担当者に誤解されやすいケースや納得感を与えられる伝え方について紹介します。
目次
障害者雇用における合理的配慮とは
障害者雇用における合理的配慮とは、企業が雇用する障がい者に対して、働くうえで支障となる事情の改善を図るための措置を指します。
障害者雇用促進法第36条において、障がい者の申し出に応じて合理的配慮を提供することが企業に義務づけられています。
▼合理的配慮の提供義務
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合理的配慮とは、 ・募集及び採用時においては、障害者と障害者でない人との均等な機会を確保するための措置 ・採用後においては、障害者と障害者でない人の均等な待遇の確保または障害者の能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するための措置のことをいいます。 |
引用元:厚生労働省『雇用の分野で障害者に対する差別が禁止され、合理的な配慮の提供が義務となりました』
例えば、障がいの特性に応じた仕事内容の割り当てや個別のコミュニケーション方法の導入、通勤・休憩時間の調整などが該当します。
出典:厚生労働省『雇用の分野で障害者に対する差別が禁止され、合理的な配慮の提供が義務となりました』
合理的配慮は「わがまま」ではない
企業に対して合理的配慮を申し出ることは、決して「わがまま」ではありません。
合理的配慮は、障がいのある方とそうでない方が均等に就業機会を得て、その能力を発揮しながら公平に社会で活躍できるようにするために不可欠な措置とされています。
合理的配慮とわがままには、以下のような明確な違いがあります。
▼合理的配慮とわがままの違い
| 合理的配慮 | わがまま | |
| 目的 | 障がいの有無にかかわらず、能力を発揮して社会活動の機会を確保するため | 「やりたくない」「楽をしたい」など個人的な要求を実現させるため |
| 公平性 | 障がいのない人やほかの障がいを持つ人との公平性が確保されている | 根拠がなく公平性に欠け、自分だけの特別扱いになる |
| 求め方 | 企業と労働者が話し合い、双方の合意によって決まる | 企業側の負担を無視して、自分の要望を一方的に押し通す |
このように、職場に対して合理的配慮を求めることは、障がいのある方が能力を発揮して働くための正当な申し出といえます。「これをお願いしたらわがままにならないか?」と不安を感じている方は、自身の要求がどちらに当てはまるか一度振り返ってみましょう。
企業に伝える合理的配慮が「わがまま」と誤解されやすいケース
採用面接や入社面談などにおいて必要な配慮を伝える際に、意図せず「わがまま」と誤解されてしまうことがあります。ここからは、企業側の視点を踏まえたうえで、誤解が生じやすいケースを紹介します。
「なぜ必要なのか」が具体的でない
合理的配慮の内容について「なぜ必要なのか」といった理由や根拠を具体的に説明せずに、要望だけを伝えてしまうケースです。
▼具体例
- 「聴覚障がいがあるので、会議は不参加にしてほしい」
- 「出勤の時刻を柔軟に決めさせてほしい」
- 「PCのタイピングが伴う仕事は減らしてほしい」 など
このようなケースでは、業務の遂行や勤怠の安定性に直接関係がない要求とみなされてしまい、企業担当者に「わがまま」と捉えられる可能性があります。
企業側に過剰な配慮を要求する
障がい者に対する合理的配慮は、企業にとって「過重な負担にならない範囲」で実施することが求められています。ほかの従業員の業務に支障をきたしたり、高額なコストが必要になったりする要求は、「わがまま」と判断される場合があります。
▼具体例
- 「オフィスやトイレのドアを自動式に変えてほしい」
- 「作業中は常に横にいてサポートしてほしい」
- 「食堂でミキサー食・ペースト食などの個別メニューを出してほしい」 など
過剰な負担に該当するかどうかの判断は、事業活動への影響や実現の困難度、費用負担の程度、企業の規模などによって総合的に判断されます。
企業からの代替案を一方的に拒否する
障がい者が求める配慮を企業が必ず実現できるとは限りません。企業側から「○○はできないが、△△なら対応できる」と代替案を提案されることもあります。
このときに企業側と話し合う姿勢を示さず、自分の要望のみを押し通そうとする行為は「わがまま」と捉えられやすくなります。
▼具体例
- 補助具の活用を提案されたが、「その業務は一切したくない」と伝える
- 静かな座席への移動を提案されたが「必ず個室ブースが欲しい」と伝える など
合理的配慮の具体的な措置は、障がい者と企業側でよく話し合って決めることが求められるため、一方的に要求を主張することで関係性の悪化を招くおそれがあります。
企業担当者に納得感を与える合理的配慮の伝え方
配慮事項を伝える際は、就労において「自身の能力を最大限に発揮するための提案」として捉えてもらうことが大切です。企業担当者に「ぜひ協力したい」と思ってもらえるように、納得感があり前向きな伝え方を意識しましょう。
①理由・目的と合わせて伝える
企業に対して必要な配慮を申し出る際は、理由と目的と合わせて伝えるようにします。
「××という理由で〇〇の配慮をいただければ、仕事のパフォーマンスが上がります」といったように、会社側のメリットも併せて提示することで納得してもらいやすくなります。
▼伝え方の具体例
- 「下肢障がいにより階段昇降に時間がかかるため、1階にデスク配置をお願いしたいです。移動時間を短縮して、業務に充てる時間を最大化できます。」
- 「内部障がいによる疲労回復のため、午後に15分の休息をいただければ、夕方まで集中力を維持できます。」
- 「視覚障がいで画面の文字が読みにくいため、画面読み上げソフトの使用を希望します。これにより、自力で正確なテキスト作成が可能です。」
②困りごとを具体的に説明する
配慮事項を伝える際に、障がいの診断名や症状だけでなく、業務で生じる困りごとを具体的に説明することもポイントです。
▼説明すること
- 障がいによって困難を伴う作業
- 症状や体調不良の現れ方
- 医師によって制限されている動作 など
障がい者が抱える困りごとを企業担当者に説明することで、障がいに対する理解が深まりやすくなり、ニーズに対して的確な解決策を一緒に探ることができます。
▼伝え方の具体例
- 「呼吸障がいにより長時間の立ち仕事には疲労が生じます。1時間ごとに5分程度の着席休憩をいただければ、一日を通して安定して作業を続けられます。」
- 「言語障がいのため、電話応対では正確な情報伝達が難しい場合があります。窓口業務ではなく、後方事務や入力業務であればスムーズに対応できます。」
③自己対処や工夫を伝える
一方的に要求を伝えるのではなく、障がいによる困難や業務への支障に対して「自分でどのように対処しているか」を示すことが重要です。
自己対処を行っているが「どうしても難しいことは配慮を求めたい」という姿勢を見せることで、説得力が生まれて意見を尊重してもらいやすくなります。また、企業側の負担を考慮する意思が伝わることにより、良好な関係性を築くことにもつながります。
▼伝え方の具体例
- 「満員電車での移動負担を避けるために、始業1時間前に出社して体調管理を行いたいと考えております。出退勤の時刻について1時間ほど調整いただきたいです。」
- 「上肢の障がいにより一般的なマウス操作が難しいため、自身が所有する支援ツールを活用したいと考えています。そのため、PC周辺機器の環境を整備していただけないでしょうか。」
④建設的な対話の姿勢を示す
企業に必要とする配慮を求めた際に、一度の申し出で受け入れてもらえない場合もあります。その場合は、「どのような配慮であれば実現できるか」「支障を取り除くためにどんな工夫ができるか」を一緒に話し合う姿勢を示すことが必要です。
自身の要望と企業側の負担のバランスを考慮して、建設的な対話を重ねることで、現実的な解決策を見つけられるようになります。
▼伝え方の具体例
- 「個室での作業が難しい場合は、パーテーションのある席や、人通りの少ない静かなエリアの席をご検討いただくことは可能でしょうか。」
- 「商談や電話対応のコミュニケーションは時間を要しますが、PCを使用したデータ集計や資料作成は問題なく行えます。業務の割り当てを調整いただくことは可能でしょうか。」
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合理的配慮の伝え方に悩んだときは
「自分の障がい特性や困りごとを言葉にするのが難しい」「配慮をどこまで求めてよいか分からない」という方は、第三者のアドバイスを受けることも一つの方法です。
障害者雇用の就職・転職を支援している転職エージェントに相談することで、障がい特性や配慮を企業にどう伝えるべきか、実践的なアドバイスを受けられます。
また、求職者に代わって配慮事項や労働条件の交渉を行ってくれるケースもあり、精神的な負担を大きく減らすことが可能です。
『エージェント・サーナ』は、障害者雇用の就職・転職支援で30年以上の実績がある転職エージェントです。専任のキャリアアドバイザーが「能力を生かせる仕事」や「配慮をお願いすること」を一緒に整理して、企業への最適な伝え方を考えます。
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まとめ
企業による合理的配慮は、障害者雇用において長く安定して働くために必要不可欠な申し出といえます。大切なのは、自身の要求を一方的に伝えるのではなく、「能力を最大限に活かして働くための環境づくり」として建設的な対話を重ねることです。
どのように配慮を伝えるべきか悩んでいる方は、障害者雇用に深い理解と長年の実績を持つ『エージェント・サーナ』に相談してみませんか?一人ひとりの障がい特性や困りごとを詳しくヒアリングして、伝え方のアドバイスから企業との交渉代行までサポートします。






