
障害厚生年金は、会社員や公務員で厚生年金に加入している方が、病気やけがによって障がいが残った場合に受け取ることができる年金です。
障害等級が1級・2級・3級のどれに該当するかによって支給される年金額が変わり、「障害厚生年金3級」は、障がいの程度が軽度となる方が対象となっています。
「どのような人が3級の対象になるのか」「月額でいくらもらえるのか?」と気になる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、障害年金制度の基礎知識をはじめ、障害厚生年金3級における支給額の計算方法や月額の目安、支給要件などについて分かりやすく解説します。
目次
障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金)の仕組み
公的年金制度の一種となる障害年金には、国民年金の被保険者を対象とする「障害基礎年金」と、厚生年金の被保険者を対象とする「障害厚生年金」の2種類があります。
障害基礎年金を土台として、障害厚生年金が上乗せされる「2階建て」の構造となっており、該当する障害等級(1級・2級・3級)によって受給できる年金が異なります。
▼障害年金の体系
| 障害年金の区分 | |||
| 2階部分 | 障害厚生年金1級 | 障害厚生年金2級 | 障害厚生年金3級 |
| 1階部分 | 障害基礎年金1級 | 障害基礎年金2級 | なし |
会社員や公務員で厚生年金に加入している方は、自動的に国民年金の被保険者(第2号被保険者)になります。そのため、障害等級1級・2級に該当する場合は、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の両方を受給することが可能です。
一方、もっとも軽度な障がいに認定される障害等級3級に該当する方は、障害基礎年金はなく「障害厚生年金のみ」が支給されます。
出典:厚生労働省『年金制度基礎資料集』
障害厚生年金3級の支給額の計算方法
障害厚生年金3級の月額は、「報酬比例の年金額」または「最低保障額」のどちらか金額が高い方によって決められます。それぞれの計算方法や金額について解説します。
報酬比例の年金額
報酬比例の年金額は、厚生年金に加入していた期間中の給与(標準報酬額)と加入期間によって算出されます。収入が多く、会社に勤めている期間が長い人ほど、受け取れる年金額が増える仕組みとなっています。
▼報酬比例の年金額の計算式
| 報酬比例の年金額=平均標準報酬額 × 加入月数 ×給付乗率 |
平均標準報酬額とは、各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を加入期間の月数で割った額を指します。分かりやすく言うと「各月の給与とボーナスの平均額を加入月数で割った数」となります。
給付乗率は、厚生年金の加入時期によって異なります。
▼給付乗率
| 加入時期 | 給付乗率 |
| 2003年3月以前 | 0.007124 |
| 2003年4月以降 | 0.005481 |
厚生年金の加入期間が300月(25年)未満の場合には、「300月」とみなして計算します。
出典:日本年金機構『報酬比例部分』/厚生労働省『年金制度基礎資料集』
最低保障額
障害厚生年金では、会社に勤めている期間が短い方や給与が低い方の場合、受け取れる年金額が少なくなります。このような場合でも安定した生活を維持できるように、障害等級3級には「最低保障額」が定められています。
報酬比例の年金額が一定額に満たない場合には、最低保証額が支給される仕組みとなっており、「障害基礎年金(2級)の4分の3の額」と定められています。
▼2025年度の最低保障額
| 年額 | 月額 |
| 62万3,800円 | 約5万2,000円 |
出典:厚生労働省『年金制度基礎資料集』
障害厚生年金3級でもらえる月額の目安
障害厚生年金3級で支給される月額は、本人の勤続年数や収入によって変わります。
厚生労働省の資料によると、2023年度の障害厚生年金3級における報酬比例額は、月額平均6万330円と発表されています。
あくまで一般的な目安ですが、月収ごとの支給額は以下となります。
▼障害厚生年金3級における支給額の目安
| 月収 | 1ヶ月当たりの支給額 |
| 30~40万円程度 | 約6万~8万円 |
| 50万円以上 | 約10万円以上 |
出典:厚生労働省『年金制度基礎資料集』
障害厚生年金3級を受給できる方
障害厚生年金3級を受給するには、「一定の支給要件を満たすこと」「障害等級3級に該当する障がいがあること」が必要になります。
ここでは、3級の受給要件や対象となる障がいの状態について解説します。
➀支給要件を満たしている
障害厚生年金3級を受給するには、以下の1~3のすべてに該当している必要があります。
▼3級の支給要件
|
■初診日とは
障がいの原因となった病気やけがで初めて病院を受診した日を指します。
■障害認定日とは
病気やけがによる障がいの程度を定める日のこと。初診日から1年6ヶ月経過した日(1年6ヶ月以内に症状が固定した場合はその日)を指します。
出典:政府広報オンライン『障害年金の制度をご存じですか?がんや糖尿病など内部疾患のかたも対象です』/日本年金機構『障害年金の制度の概要』
②障害等級3級に該当する程度の障がいがある
障害等級3級は、「労働に著しい制限を受ける」または「労働に著しい制限を加えることが必要となる」程度の障がいを指します。
日常生活には支障はないものの、労働については困難があり、仕事内容や勤務時間などに一定の制限・配慮が必要とされる状態が該当します。
▼障害等級表で定められている障害等級3級の認定基準

画像引用元:厚生労働省『年金制度基礎資料集』
なお、障害等級3級に該当しない軽度の障がいがある場合には、一時金として「障害手当金」を受け取れる場合があります。詳しくは、以下の記事をご確認ください。
関連記事
No69:障害手当金とは
出典:厚生労働省『年金制度基礎資料集』
障害厚生年金3級に関するよくある質問
ここからは、障害厚生年金3級に関するよくある質問に回答します。
配偶者や子どもがいる場合は支給額が増える?
障害厚生年金3級は、配偶者や子どもがいる場合でも支給額が増えることはありません。本人の収入や厚生年金の加入期間によって支給額が決まります。
一方、厚生年金の被保険者で障害等級1級・2級に該当する方は、配偶者や子どもの数に応じて月額が上乗せされる加算の仕組みが設けられています。
出典:政府広報オンライン『障害年金の制度をご存じですか?がんや糖尿病など内部疾患のかたも対象です』/日本年金機構『障害年金の制度の概要』
受給開始後に月額は変わる?
障害厚生年金3級の月額は、受給開始後に変わる可能性があります。主に3つのケースが考えられます。
■ケース1|年度ごとの改定
障害年金は、物価や賃金の変動に応じて毎年見直しが行われるため、受給が開始されたあとも月額が変動する可能性があります。
■ケース2|症状の軽快
病気やけがの軽快によって障がいの程度が軽くなった場合、再認定において障害等級3級が非該当になることがあります。この場合、障害厚生年金3級の支給は停止されます。
■ケース3|1級・2級への等級変更
障がいの程度が重くなり、再認定や改定請求によって障害等級が1級または2級に上がった場合には、障害基礎年金の支給や配偶者・子どもの加算がつくため、3級よりも月額が増加します。
働きながら障害厚生年金を受け取れる?
障害年金の支給要件に「就労をしていない」といった内容は含まれていないため、働きながら受給することは可能です。
ただし、障害等級3級では「労働に著しい制限があること」という基準が定められており、「一般労働者と同じように働いている」といった状態では認定の対象外となります。
申請時には、就労における困難の状況や療養状況、仕事内容の制限、職場に依頼している配慮事項などを詳細に記載して、障害年金が必要な状態であることを示す必要があります。
障害厚生年金の請求手続きはどこで行う?
厚生年金に加入している方は、年金事務所で請求手続きを行います。
請求手続きには、年金請求書のほかに、本人確認書類や医師の診断書、病歴・就労状況等申立書などのさまざまな書類の作成・準備が必要になります。手続きが煩雑で不備も発生しやすいため、社会保険労務士に依頼することも一つの方法です。
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No65:障害者年金 申請
まとめ
障害厚生年金3級は、厚生年金に加入しており、障がいによって就労上の大きな制限が生じている方が受給できる年金です。
支給額は本人の収入と厚生年金の加入期間によって変わり、会社に勤めている年数や毎月の給与が多い方ほど、年金の月額が増える仕組みになっています。
また、制度上、働きながら受給することも可能ですが、就労上の制限や職場に求めている配慮などを正確に申告することが重要です。
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