
障害者雇用とは障害者雇用促進法に基づいて、企業が一定割合以上の障がい者を雇用する制度です。障がいを抱えながら働くうえで大きな助けとなる一方で、一般雇用とは異なる特性があるため、実際にどのような仕事に就けるのか不安に思う方もいるのではないでしょうか。
この記事では、障害者雇用の割合が多い職種・業種や、求人探しの具体的な方法まで詳しく解説します。
目次
障害者雇用の現状
厚生労働省の統計によると、民間企業で働く障がい者の数は年々増加傾向にあり、2023年には64万人を超える規模に達しています。
民間企業における障害者の雇用状況

画像引用元:厚生労働省「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」
また、障害者雇用において雇用が義務づけられる人数の基準となる“法定雇用率”は段階的に引き上げられており、2024年4月から2.5%となりました。また、2026年7月にはさらに2.7%まで上昇する予定となっています。
法定雇用率の引き上げは、障害者にとって就労機会が拡大する追い風となっており、多様な職種での活躍が期待されています。
出典:厚生労働省「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について」
障害者雇用の割合が多い職種一覧
厚生労働省のデータによると、障害者雇用において多くの人が就いている職種として、事務的職業が挙げられます。次いで生産工程の職業やサービスの職業、専門的・技術的職業、販売の職業などが続きます。
事務的職業
事務的職業は、身体障がい者と精神障がい者の就業割合が特に高い職種です。
事務的職業における障がい種別ごとの割合
| 障がい種別 | 割合 |
| 身体障がい者 | 26.3% |
| 知的障がい者 | 5.0% |
| 精神障がい者 | 29.2% |
データ入力や書類整理、電話応対などのオフィスワークが中心で、業務内容が明確に定義されている点が特徴です。バリアフリー環境の整備やICT技術の活用などが整備されていれば、さらに働きやすい環境が実現します。
出典:厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書」
生産工程の職業
生産工程の職業は、製造ラインでの組立作業や検品、梱包などを行う職種です。作業手順が明確で反復性の高い業務が中心となっているため、さまざまな障がい種別において雇用が進んでいます。
生産工程の職業における障がい種別ごとの割合
| 障がい種別 | 割合 |
| 身体障がい者 | 15.0% |
| 知的障がい者 | 16.6% |
| 精神障がい者 | 10.0% |
補助器具の導入や作業環境の改善などによって、身体障がいを抱えている方でも安全に作業しやすい環境が実現しやすくなっています。
出典:厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書」
サービスの職業
サービスの職業には、清掃や調理補助、介護サポートなど対人業務を含む幅広い職種が含まれます。知的障がいをお持ちの方の就業割合が最も高く、約4人に1人が従事している主要な職種です。
サービスの職業における障がい種別ごとの割合
| 障がい種別 | 割合 |
| 身体障がい者 | 13.5% |
| 知的障がい者 | 23.2% |
| 精神障がい者 | 14.2% |
身体障がい者は13.5%と3つの障害種別のなかでは最も低い割合ですが、バリアフリー設備の整った環境が整備されていれば十分に活躍できる分野といえます。
出典:厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書」
専門的・技術的職業
専門的・技術的職業には、IT技術者やデザイナー、医療・福祉の専門職などが含まれます。専門性を活かしたキャリア形成が可能な職種です。
専門的・技術的職業における障がい種別ごとの割合
| 障がい種別 | 割合 |
| 身体障がい者 | 11.7% |
| 知的障がい者 | 2.3% |
| 精神障がい者 | 15.6% |
リモートワークやフレックスタイム制度の普及により、体調管理をしながら専門性の高い業務に従事する環境が実現しやすくなりました。また、ICT技術の進展により、身体障がいを抱えていても物理的な制約を超えて活躍する場が広がっています。
出典:厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書」
販売の職業
販売の職業は、店舗での接客や商品陳列、レジ業務などを担う職種です。
販売の職業における障がい種別ごとの割合
| 障がい種別 | 割合 |
| 身体障がい者 | 7.2% |
| 知的障がい者 | 16.8% |
| 精神障がい者 | 7.7% |
座位での接客やバックオフィス業務など、個々の特性に合わせた配置がなされていれば、障がいを抱えていても十分に働くことが可能です。大手小売チェーンを中心に、障害特性に配慮した職務設計が進んでいる分野といえます。
出典:厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書」
障害者雇用の割合が多い業種
障害者雇用が積極的に行われている業種には明確な傾向があります。
身体障がい、知的障がい、精神障がいのいずれにおいても製造業、卸売業・小売業、サービス業の3つが上位を占めており、これらの業種が障害者雇用の受け皿として重要な役割を果たしている状況です。
障害者雇用の割合が多い業種
| 業種 | 身体障がい者 | 知的障がい者 | 精神障がい者 |
| 製造業 | 21.3% | 15.4% | 15.4% |
| 卸売業・小売業 | 21.2% | 32.9% | 25.8% |
| サービス業 | 14.9% | 13.2% | 14.2% |
製造業では作業の標準化が進んでおり、卸売業・小売業では多様な職域が用意されています。サービス業においても清掃やバックオフィス業務など、幅広い職種で雇用が拡大しています。
出典:厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書」
障害者雇用で働くメリット・デメリット
障害者雇用には、一般雇用とは異なる特有のメリットとデメリットが存在します。自身の状況や希望する働き方と照らし合わせて、慎重に検討することが重要です。
メリット
障害者雇用の最大のメリットは、働くうえで配慮してもらいやすい点にあります。障害特性に応じた合理的配慮を企業に求めることが法律で認められています。
働くうえで求められる配慮の例
- 通院のための時間調整
- 業務内容の調整
- 休憩時間の確保
- 就労支援機器の導入 など
また、障害者雇用の実績がある企業なら周囲の理解も得やすく、同僚や上司が障害への知識を持っているケースも多く見られます。採用時から障害をオープンにして働けるため、無理な業務を強いられる心配が少なく、長期的に安定した就労を実現しやすい環境といえます。
デメリット
障害者雇用で働く際のデメリットとしては、障がい者手帳が必要なことと短時間勤務が難しいことが挙げられます。
障がい者雇用の対象となるのは、障害者手帳を取得している方に限られます。また、法定雇用率に算定されるための要件として、週に20〜30時間以上の勤務が必要(※)なため、短時間勤務を希望する方にとっては選択肢が限られてしまう可能性もあります。
※重度身体障害者、重度知的障害者および精神障害者の場合は、特定短時間労働者として10時間以上20時間未満でも算定されます。
出典:厚生労働省「特定短時間労働者の雇用率算定について(案)」
障害者雇用の求人を探す方法
障害者雇用の求人を効率的に探すには、専門的なサポートを提供している機関やサービスを活用する方法が有効です。自分の状況に合った探し方を選ぶことが重要となります。
ハローワーク
ハローワークは公共職業安定所として、全国各地で障害者雇用の求人紹介を行っています。障がい者専用の窓口が設置されており、専門の職員が個別の相談に応じながら求人を紹介してもらえる体制が整っています。
窓口では障害特性や希望条件をヒアリングした上で、マッチする求人を提案してもらえるため、初めて障害者雇用での就職を目指す方にとって心強い存在です。求人情報は地域の企業を中心に幅広く取り扱っており、応募書類の作成支援や面接対策なども無料で受けられます。
障がい者専門の転職エージェント
障がい者専門の転職エージェントは、障害者雇用に特化した民間の求人紹介サービスとして、専門的なサポートを提供しています。専任のキャリアアドバイザーが担当として付き、求人紹介だけでなくキャリアプランの相談や応募書類の添削、面接対策まで手厚い支援を受けられる点が特徴です。
「エージェント・サーナ」は、30年以上の実績を持つ障害者雇用専門の転職支援サービスとして、身体障がい・内部障がいのある方を対象に支援を行っています。企業との独自のネットワークを活かして、一般には公開されていない非公開求人も多数保有しています。
【職種別】転職エージェントの障害者雇用求人例
転職エージェントで実際に扱われている障害者雇用の求人例を、職種別に紹介します。ここではエージェント・サーナで公開されている求人を参考に、具体的な条件を見ていきます。
なお、このほかに非公開求人も多数保有しているため、登録することでさらに幅広い選択肢から自身に合った求人を探すことが可能です。
※2025年10月時点の情報です。
事務的職業における求人例
事務的職業では、データ入力や書類作成、電話応対などのオフィスワークを中心とした求人が多く見られます。
事務的職業における求人例
| 項目 | 内容 |
| 勤務地 | 東京都港区 |
| 雇用形態 | 正社員 |
| 給与 | 月給220,000~300,000円 |
| 仕事内容 |
|
| 障がいへの配慮 | 転勤の配慮、在宅勤務、就業時間、時短勤務可、残業時間、通院への配慮、重量物の運搬などへの配慮、立ち仕事、階段・廊下へ手すりの設置 |
| 雇用実績 | 上肢障がい、下肢障がい、肝臓障がい、精神障がい |
生産工程の職業における求人例
生産工程の職業では正社員登用制度を設けている企業も多く、実績を積むことでキャリアアップの道も開かれています。
生産工程の職業における求人例
| 項目 | 内容 |
| 勤務地 | 埼玉県和光市 |
| 雇用形態 | 契約社員(正社員登用制度あり) |
| 給与 | 月給188,230~274,300円 |
| 仕事内容 | 生産ライン業務、もしくはその補助
<主な業務内容例>
|
| 障がいへの配慮 | 転勤の配慮、車通勤、音声ソフト、電話対応、筆談、車いす用トイレ、就業時間、健康管理室あり、バリアフリーオフィス、車いす配慮あり、残業時間、通院への配慮、車いす用エレベータ、重量物の運搬などへの配慮、立ち仕事、階段・廊下へ手すりの設置 |
| 雇用実績 | 上肢障がい、下肢障がい、体幹障がい、運動障がい、聴覚障がい、言語障がい、心臓障がい、腎臓障がい、肝臓障がい、呼吸器障がい、ぼうこう障がい、直腸障がい、小腸障がい、てんかん |
サービスの職業における求人例
サービスの職業では、清掃業務や施設管理、軽作業などの求人が幅広く募集されています。
サービスの職業における求人例
| 項目 | 内容 |
| 勤務地 | 静岡県浜松市中央区 |
| 雇用形態 | 正社員 |
| 給与 | 月給221,500~304,300円 |
| 仕事内容 | ショッピングモール内事務所における各種事務業務
①モール内テナント担当
②施設管理担当
|
| 障がいへの配慮 | 転勤の配慮、車通勤、車いす用トイレ、バリアフリーオフィス、年間休日125日以上、車いす配慮あり、車いす用エレベータ |
| 雇用実績 | 上肢障がい、下肢障がい、体幹障がい、視覚障がい、聴覚障がい、平衡障がい、心臓障がい、腎臓障がい、直腸障がい、てんかん、精神障がい、発達障がい |
専門的・技術的職業における求人例
専門的・技術的職業では、IT技術者やWebデザイナー、専門事務などの求人が増加傾向にあります。
専門的・技術的職業における求人例
| 項目 | 内容 |
| 勤務地 | 東京都江東区 |
| 雇用形態 | 正社員 |
| 給与 | 月給270,000~450,000円 |
| 仕事内容 | 広告制作関連業務
illustrator、Photoshopなどを使用する職種も想定 |
| 障がいへの配慮 | 転勤の配慮、在宅勤務、音声ソフト、拡大読書器、電話対応、難聴用電話機、車いす用トイレ、就業時間、フレックス制あり、残業時間、通院への配慮、重量物の運搬などへの配慮、立ち仕事、階段・廊下へ手すりの設置 |
| 雇用実績 | 上肢障がい、下肢障がい、聴覚障がい、心臓障がい、腎臓障がい、ぼうこう障がい、精神障がい |
販売の職業における求人例
販売の職業は、接客だけではなく、商品の管理や事務作業など多様な業務を含むため、障害者雇用も積極的に行われています。
販売の職業における求人例
| 項目 | 内容 |
| 勤務地 | 東京都渋谷区 |
| 雇用形態 | 正社員 |
| 給与 | 月給226,000~280,000円 |
| 仕事内容 | 手話カウンターでの接客業務 |
| 障がいへの配慮 | 転勤の配慮、電話対応、手話、筆談、健康管理室あり、雇用形態相談可能、職業相談員設置、車いす配慮あり、残業時間、通院への配慮、重量物の運搬などへの配慮、階段・廊下へ手すりの設置 |
| 雇用実績 | 上肢障がい、下肢障がい、体幹障がい、視覚障がい、聴覚障がい、言語障がい、心臓障がい、腎臓障がい、肝臓障がい、呼吸器障がい、ぼうこう障がい、直腸障がい、小腸障がい、免疫障がい、発達障がい、その他障がい |
転職エージェントを活用した障害者雇用での転職成功事例
転職エージェントを活用することで、実際に希望に合った転職を実現した方の事例を紹介します。
エージェント・サーナを利用した臼井さん(41歳・男性・下肢障がい)は、転職先としてこれまでの事務経験とWeb制作スキルを活かせる職種を希望していたものの、制作関係の求人は数が限られている状況でした。
キャリア・アドバイザーとの面談で希望に合う求人だけでなく、経験を活かせる観点からさまざまな職種を提案してもらい、最終的にホームページ更新を主としたWeb制作の職種に就くことができています。通勤面での配慮も受けられる環境となり、体力や体調の心配なく長く働ける会社への転職が実現しました。
まとめ
障害者雇用では、事務的職業や生産工程の職業、サービスの職業など多様な職種で活躍の場が広がっています。業種別では製造業、卸売業・小売業、サービス業の3つが雇用の中心となっており、幅広い選択肢が用意されている状況です。
求人探しではハローワークや障がい者専門の転職エージェントを活用することで、自身に合った職場と出会える可能性が高まります。
「エージェント・サーナ」では、プロのアドバイザーがあなたに寄り添い、障がいの特性に合った求人のマッチングや書類作成、面接対策のサポートなどを実施いたします。障害者雇用での転職を検討されている方はぜひご相談ください。






