
心臓に負担のかかりにくい仕事を選ぶことは、心臓に障がいを持つ人にとって安定した職業生活を長期的に継続するための重要な判断基準となります。心臓の状態を保つためには、業務内容や職場環境の慎重な検討が必要です。
この記事では、仕事において心臓に負担がかかりやすいシーンや負担のかからない職場環境の条件、働きやすい具体的な仕事の例、転職事例を解説します。
目次
心臓への負担を考慮した仕事選びが必要なケース
心臓への負担を考慮した仕事選びが必要なケースとしては、心臓の病気や心臓につながる血管の病気によって心臓に障がいを抱えている状態が挙げられます。
心臓への負担が少ない業務形態や職場風土が揃った職場を選ぶことが、長期的なキャリア形成の実現につながります。
心臓の病気を抱えている
心臓そのものの病気、または心臓の機能に直接影響を及ぼす疾患を抱えている場合、病状の進行や悪化を防ぐため、仕事による負担を極力避ける必要があります。
心臓の病気・疾患例
| 病気・疾患例 | 特徴 |
| 心臓弁膜症 |
|
| 心房中隔欠損症 |
|
| 心筋症 |
|
| 不整脈 |
|
これらの病気・疾患では、身体的な過負荷や精神的なストレスが症状の悪化につながりやすいため、特性を考慮した仕事選びが必要です。
心臓につながる血管の病気を抱えている
心臓につながる血管が狭くなったり、硬くなったりすることで、心臓が血液を送り出す際の抵抗が増え、心臓に余計な負荷をかける結果になることがあります。
心臓につながる血管の病気・疾患例
| 病気・疾患例 | 特徴 |
| 狭心症 |
|
| 心筋梗塞 |
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| 胸部大動脈瘤 |
|
このような状態においては、急激な血圧の上昇を招くような激しい運動や、精神的な緊張が続く環境を避けることが重要です。
仕事において心臓に負担がかかりやすいシーン
心臓に持病がある方が安心して働くためには、どのような業務や状況が心臓に負担をかけるのかを具体的に知っておくことが大切です。肉体的な労働だけでなく、勤務形態や人間関係といった要因も心臓に影響を与えることがあります。
身体活動を伴う業務の実施
身体活動によって心拍数や血圧が上昇すると、心臓が普段よりも多くの血液を送り出す必要が生じ、負担も大きくなります。
心臓に負担がかかる身体活動の例
- 重いものを持つ作業
- 階段の上り下り
- 長時間の立ち仕事
- 歩き回る業務 など
例えば、建設業や運搬業、医療現場での移動など、身体を動かし続ける職種では心臓への負担が継続的に加わります。また、軽作業に見えても、連続して体に力を入れる必要のある仕事は、心臓の機能に悪影響を及ぼす可能性があります。
夜勤や長時間労働への対応
夜勤や長時間労働による不規則な生活習慣は、自律神経の乱れや睡眠不足を引き起こし、健康状態を悪化させて心臓に間接的な負担をかけます。また、疲労の蓄積による免疫機能の低下も心臓の症状を悪化させる原因となります。
さらに、夜勤や長時間労働の際に生じる精神的なストレスも心臓の負担となる要素です。強いストレスは交感神経の働きを活発にさせ、心拍数や脈拍を上昇させてしまいます。
心臓への負担を抑えるには、規則的な勤務スケジュールと十分な休息時間を確保できる職場を選択することが重要です。
人間関係におけるトラブルの発生
夜勤や長時間労働だけでなく、職場における人間関係のトラブルも、精神的なストレスとなって心臓に負担をかけます。
特に心臓の障がいは外見から分かりにくいことが多いため、周囲の理解を得られずにトラブルにつながる可能性があります。
周囲の理解を得られないことによるトラブルの例
- 無理な業務を強要される
- 病状を説明しても配慮してもらえない
- 休息の必要性を理解してもらえない など
このような誤解や心ない対応が続くと、心理的なストレスによって心臓の症状が悪化する悪循環に陥る可能性があります。
心臓に障がいを抱える方が仕事しやすい職場環境の条件
心臓に障害がある人にとって適切な職場環境を選ぶことは、仕事を続けるための重要な要素です。身体的な負担の少なさだけでなく、柔軟性やサポート体制が整った職場が、長期的なキャリア継続を実現させます。
デスクワーク中心で働ける
デスクワークは身体への負担が少ないため、心臓に疾患がある人に適した業務形態です。
机に座って業務を行う環境では、身体活動が削減されることで心拍数の急激な変動を防げます。また、体力を過度に消耗する必要がないため、病状の悪化や疲労の蓄積を防ぎながら安定して業務を継続しやすくなります。
さらに、作業中に自分のペースを調整しやすく、必要に応じて休息を取ることも可能です。疲労を感じたときに一度立ち上がって深呼吸をしたり、一時的に業務を中断したりといった工夫がしやすい環境は、心臓疾患を抱えている方にとって大きなメリットになります。
柔軟な働き方ができる
勤務時間や場所に関して柔軟な働き方ができる環境は、心臓の障がいを抱える方にとって身体的・精神的な負担の軽減につながります。
例えば、フレックスタイム制度を活用できれば、体調に合わせて業務時間を調整したり、満員電車での通勤ストレスを避けたりすることが可能です。
また、定期的な通院が必要な場合でも勤務時間を調整できるようになるため、治療と仕事の両立がしやすくなります。柔軟な勤務体系が整備されている環境は、心臓の健康を維持するために欠かせません。
周囲の理解を得られる
職場において、自身の病状や必要な配慮について周囲の理解を得られるかは、非常に重要です。上司や同僚からの理解があることで、体調が優れないときに無理なく休ませてもらえる、業務量を調整してもらえるなど、働きやすい環境が整えやすくなります。
また、病気に対する不安や誤解から生じる精神的なストレスの軽減も期待できます。安心して長く働くためには、オープンなコミュニケーションが図れ、適切なサポート体制がある職場を選ぶことが重要です。
ペースメーカーや除細動器への影響がない
体内にペースメーカーや植え込み型除細動器(ICD)を挿入している場合、それらの機器に悪影響を及ぼす環境では働けません。
これらの医療機器は、強い電磁波や電気的なノイズにさらされることで誤作動を起こす危険性があります。
ペースメーカーや除細動器への影響が生じる職場の例
- 発電所
- 大型変圧器の近くにある職場
- 高周波を扱う医療機器メーカー
- 強い磁場が発生する研究施設 など
転職を検討する際には、その職場環境が医療機器に影響しないかを事前に確認することが欠かせません。
心臓に負担がかからない仕事の例
心臓への負担を考慮する場合、身体的な負担が少なく、精神的なストレスをコントロールしやすいデスクワーク中心の仕事が適しています。
心臓に負担がかからない仕事の例
| 職種 | 主な業務内容 | 心臓に負担がかかりにくい理由 |
| 一般事務 |
|
デスクワーク中心で身体活動が少ない |
| 経理 |
|
計画的に作業でき、業務量の変化が少ない |
| 法務 |
|
身体活動が最小限で精密作業が中心 |
| プログラマー |
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柔軟な働き方がしやすい |
| Webデザイナー |
|
創意工夫を活かせ、身体負担が少ない |
障がい者雇用での転職も選択肢
現在の職場で十分な配慮や理解が得られない場合、障がい者雇用での転職を検討する方法があります。企業側が障がいについて事前に理解したうえでの採用となるため、心臓疾患を抱えている人にとって働きやすい条件が整いやすくなります。
障がい者雇用の対象は、障がい者手帳を取得している方です。心臓機能の障がいの場合、その程度に応じて以下のように等級が定められています。
心臓障がいの認定基準
| 等級 | 概要 |
| 1級 | 心臓の機能の障がいにより自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの |
| 3級 | 心臓の機能の障がいにより家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの |
| 4級 | 心臓の機能の障がいにより社会での日常生活活動が著しく制限されるもの |
東京都福祉局「第4 心臟機能障害」を基に作成
障がい者雇用を活用することで、業務内容の制限や勤務時間の調整、通院への配慮など、ご自身の健康状態に合わせた働きやすい環境での転職が期待できます。
出典:東京都福祉局「第4 心臟機能障害」
心臓に障がいを抱えて転職に成功した事例
心臓に障がいがある場合でも、適切な環境とサポートを得られれば、自身の能力を活かして長く働き続けられます。ここでは、障がい者雇用での転職を成功させた事例を紹介します。
K.K.(51歳 女性)さんのケース
K.K.さんは信託銀行で14年間働いていましたが、店舗統廃合による残業増加が体への負担となり、長期的に働くことが難しくなったため転職を決意しました。転職に際してK.K.さんが優先したのは、残業がほとんどなく、通勤時間が短い職場です。
転職活動ではWebエントリーやWeb面接が初めての経験で不安があったものの、転職エージェントのキャリア・アドバイザーから適切なアドバイスやサポートを受けたことでスムーズに進められました。
現在は大手メーカーで営業事務として働かれており、前職と同程度の給与を得ながらも体調管理がしやすい職場環境を手に入れられました。
H.M.(46歳 男性)さんのケース
H.M.さんは、派遣社員としてメーカーの営業サポートをしていましたが、手術によって障がい者手帳を取得したことを機に、キャリアアップと長期的な活躍を求めて障がい者雇用での転職を決意しました。
転職活動においては、正社員としてビジネスの基幹業務を担えるやりがいのある仕事に就きたいという明確な目標を持っていました。条件に合う企業がなかなか見つからずにいましたが、転職エージェントのキャリア・アドバイザーの提案によって現在勤務する企業と出会うことに成功しています。
現在は見積り作成や受注業務、顧客とのやり取り、サービス更新の提案など、メインビジネスに関わる業務を担当し、居心地の良い職場で活躍されています。
N.N.(36歳 女性)さんのケース
N.N.さんは、前職で残業が多く体調面に不安を感じたため、好きな業界である医療・製薬業界での「定年まで働ける企業」への転職を目指しました。
転職エージェントのキャリア・アドバイザーからアドバイスや非公開求人の紹介を受けたり、内定後の企業選定の相談をしたりできたことで、志望業界を特定しての転職活動が円滑に行えました。
現在は希望する業界の企業で人事部のダイバーシティ推進グループに所属され、障がい者採用や社員研修、女性活躍の推進といった業務に取り組まれています。残業が少なく自由度の高い職場環境により、体調面の不安なく生き生きと働けるようになりました。
C.H.(28歳 女性)さんのケース
C.H.さんは前職で業務量が多すぎたため、身体への負担とスキルアップ時間の不足を理由に転職を決意しました。
転職エージェントのキャリア・アドバイザーから自分に合った企業の見つけ方を教えてもらったり、迷いが生じた際には面談だけでなくメールや電話で相談に乗ってもらったりしながら転職活動を進めました。
現在は、人事部で社員の勤怠管理や就業管理、特に海外事業所にいる日本人スタッフの管理やフォローをメインに担当されています。前職と比べて一人ひとりの業務量が適切で、自分のスキルアップについて考える時間も確保できるようになりました。
転職の際はキャリア・アドバイザーへの相談が有効
心臓に障がいを抱えながら転職活動を進める場合、専門的な知識を持つキャリアアドバイザーへの相談が有効な選択肢となります。
心臓に障がいを抱える方の転職活動では、自身の健康状態とキャリアの両方を考慮した職場を見つけることが成功のカギです。一方で、ご自身だけで体調への配慮と希望条件を両立できる企業を探すのは限界があります。
障がい者雇用に特化した転職エージェントの「エージェント・サーナ」では、キャリア・アドバイザーが個々の希望や状況を丁寧にヒアリングし、求職者に最適な企業を提案します。面接日程の調整や応募書類の添削、面接対策といった転職活動全般のサポートにも対応しているため、働きながらの転職活動でも効率的に進めることが可能です。
まとめ
心臓に障がいを抱えている方が仕事を続けるためには、身体的な負担が少なく、柔軟な働き方が認められる職場を選ぶことが重要です。デスクワーク中心の業務やフレックスタイム制度が整った環境では、心臓への負担を抑えながら長期的なキャリアを築くことが可能になります。
転職活動では、専門的な知識を持つキャリアアドバイザーに相談し、自分の状況に合った企業を効率的に探すことが成功への近道です。
「エージェント・サーナ」では、プロのアドバイザーがあなたに寄り添い、障がいの特性に合った求人のマッチングや書類作成、面接対策のサポートなどを実施いたします。心臓に負担のかからない仕事への転職を検討されている方はぜひご相談ください。






