音声機能障害を抱えていても、適切な職場選びと準備により充実したキャリアを築くことは可能です。障害の特性を理解し、自分に合った働き方や環境を見つけることで、能力を最大限に発揮できる転職が実現します。
この記事では、音声機能障害をお持ちの方が仕事を探す上でのポイントや、働きやすい職場の特徴を解説します。
目次
音声機能障害とは
音声機能障害とは、声帯や発声器官の問題により音声を発することが不可能もしくは困難な状態を指します。
症状の程度は個人差が大きく、完全に発声できない場合から、かすれ声や小さな声しか出せない場合までさまざまな状態があります。
医学的には構音障害や音声障害として分類され、言語聴覚士によるリハビリテーションが行われることが多い障害の一つです。現在では補助技術の発達によって意思疎通の手段が多様化しており、職場での活躍の場も広がっています。
音声機能障害における原因の例
音声機能障害は、様々な原因で引き起こされます。生まれつきの要因だけでなく、病気や事故、外科手術などが原因で発声器官に問題が生じ、発声が困難になる場合があります。
先天的な要因
生まれつき声帯やのどに障がいを持つ場合、音声機能障害になることがあります。
声帯の形成異常や神経系の発達に問題がある先天性疾患が主な原因です。具体的には声帯麻痺や喉頭軟化症などの疾患が挙げられます。
これらの障害は出生時から存在するため、早期からの専門的な治療やリハビリテーションが重要です。
後天的な病気・疾患・外傷
神経系疾患が原因で、発声器官を動かす筋肉がうまく機能しなくなり、発声障害が起こる場合があります。
また、交通事故や労災事故により喉頭部分に直接的な損傷を受けた場合、声帯の機能が失われるケースも見られます。スポーツ外傷や暴力による首部への打撃も、音声機能障害が生じる原因の一つです。
これらによる音声機能障害では前の生活との変化が大きいことから、心理的なサポートを含めた総合的なケアが求められます。
外科手術
手術で声帯を切除することで音声機能障害となるケースがあります。喉頭がんや下咽頭がん、食道がん、肺がんなどの手術が該当します。
声帯を失うと、通常の発声はできなくなりますが、食道発声や人工喉頭、シャント発声法などの代替手段を用いることは可能です。
手術前には医師から音声への影響について詳しい説明があり、術後の代替発声法についても事前に情報提供が行われることが一般的といえます。
加齢
加齢によって声帯の機能が低下することで、音声機能障害になる場合があります。声帯の筋肉が衰えたり、声帯が痩せてしまったりすることが、声のかすれや発声の困難を引き起こす主な原因です。
加齢性変化は自然な現象ですが、発声訓練や適切なケアにより症状の進行を遅らせることが期待されます。
音声機能障害の認定基準
音声機能障害は、その程度によって公的な支援制度の対象となる場合があります。身体障害者手帳や障害年金といった制度を利用することで、生活や仕事における困難を軽減できる可能性があります。
身体障害者手帳における認定基準
身体障害者手帳は、身体に障害のある方が各種サービスや支援を受けるために必要な証明書です。音声機能障害については「音声・言語機能障害」として3級と4級の認定があり、障害の程度により分類されます。
身体障害者手帳における音声・言語機能障害の認定基準
| 等級 | 認定基準 |
| 3級 | 音声言語による意思疎通ができないもの |
| 4級 | 音声、言語のみを用いて意思を疎通することが困難なもの |
音声機能の喪失における具体例としては、3級は無喉頭や発声麻痺、反回神経麻痺などにより、音声を全く発することができない状態が該当します。また、4級に該当するのは、喉頭の障害または形態異常によるものです。
認定には医師の診断書と詳細な検査結果が必要です。手帳の取得により、就労支援や職業訓練などの制度の利用が可能になります。
障害年金における認定基準
障害年金は、病気やけがによって生活や仕事に支障が出た場合に受け取れる公的年金です。音声機能障害について、「音声又は言語機能の障害」として2級と3級の等級が設けられています。
障害年金における音声又は言語機能の障害の認定基準
| 等級 | 認定基準 |
| 2級 | 音声又は言語機能に著しい障害を有するもの |
| 3級 | 言語の機能に相当程度の障害を残すもの |
音声機能障害に該当するのは主に2級で、発音に関わる機能を喪失している状態が該当します。
なお、障害年金は国民年金と厚生年金で受給の可否が異なりますが、2級の場合はどちらでも受給することが可能です。3級は厚生年金のみとなります。
音声機能障害による仕事への影響
音声機能障害は、仕事の内容や環境によってさまざまな影響を及ぼします。特に、音声を使ったコミュニケーションを伴う業務や、長時間の業務では困難を感じやすいとされます。また、二次障がいについても考慮が必要です。
コミュニケーションが必要な業務に支障をきたす
音声機能障害を抱えていると、言語でのコミュニケーションを求められる作業は困難になりやすいといえます。
コミュニケーションが必要な業務の例
- 顧客との電話応対
- 接客サービスや営業活動
- チーム内での口頭での報告・連絡・相談
- 多数の前でのプレゼンテーションや会議での発言
- 研修講師やセミナーでの説明 など
顧客対応やチームでの会議、プレゼンテーションなどが円滑に行えないことで、業務の遂行に支障をきたす可能性があります。
長時間労働が難しい
音声機能障害の症状によっては、長時間にわたる業務は肉体的な負担から難しい場合があります。
筆談や手話、文字入力による意思疎通は音声による会話と比較して時間と労力を要するため、通常業務でも疲労が蓄積しやすくなります。特に、緊急時の対応や複数人との同時コミュニケーションは精神的な負担も大きくなるため、適度な休憩時間の確保が欠かせません。
コミュニケーションエラーによる二次障がいが生じる
コミュニケーションの困難により、二次障がいと呼ばれる精神的・社会的な問題が生じる場合があります。二次障がいとは、本来の障がいに加えて後から発生する心理的な症状や社会適応の困難のことです。
音声機能障害によって職場での意思疎通がうまくいかないことで、孤立感や劣等感を抱いたり、うつ状態や不安障がいなどの精神的な症状が現れたりするケースがあります。また周囲の理解不足により不当な評価を受けたり、キャリア形成に支障をきたす可能性も考えられます。
二次障がいの予防には、職場環境の改善と周囲の理解促進、本人への心理的サポートが欠かせません。
音声機能障害をお持ちの方が転職する際の選択肢
音声機能障害によりこれまでの職場で働くことが難しくなった場合、就業継続支援や障害者雇用による転職が考えられます。自分の症状や希望に合わせて最適な選択肢を検討することが重要です。
就業継続支援の活用
就労継続支援は、障害や難病のある方が働くための支援サービスです。一般企業での就労が困難な方が、仕事に必要な知識やスキルを習得する場として利用されます。
就労継続支援には、雇用契約を結び給料が支払われる「A型」と、雇用契約を結ばず工賃が支払われる「B型」があります。ご自身の状況や希望に合わせて、最適な支援を選び、無理なく働くことを目指すことが可能です。
障がい者雇用による一般企業への就職
障害者雇用は、障害者雇用促進法に基づき企業が障害のある方を雇用する制度です。従業員40人以上の企業には2.5%の障害者雇用率達成が義務付けられており、多くの企業で採用機会が設けられています。
業務内容や勤務時間、働き方について企業と相談しながら就労できるため、一般雇用と比較して音声機能障害の症状に合わせた働き方を実現しやすい点が特徴です。障害者雇用に特化した転職サイトやエージェントを利用すると、スムーズに仕事探しを進められます。
出典：厚生労働省「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について」
音声機能障害を抱えて働くための転職先選びのポイント
音声機能障害を抱えている場合、ご自身の障がいの特性に合わせた合理的な配慮をしてもらえる転職先を選ぶことが重要です。事前に必要な配慮を整理し、企業との面談で具体的な対応策を確認することが、特性に合った働き方を実現する鍵となります。
業務内容を調整してもらえる
音声機能障害の程度によっては、電話対応のように発声しないと対応できない業務を除いてもらう必要があります。代わりに音声を使わない業務への配置転換をしてもらうことがポイントです。
営業職の場合、訪問営業ではなくメールマーケティングや資料作成に特化することで、音声機能障害による影響を抑えられます。また、接客業務がある職場の場合、商品陳列や在庫管理などバックオフィス業務への配属が有効です。
面接時に具体的な業務内容と調整可能な範囲を詳しく確認することで、入社後のミスマッチを防ぎやすくなります。
柔軟な働き方ができる
音声機能障害をお持ちの方にとって、時短勤務やフレックスタイム制など柔軟な働き方を実現できる制度は負担を軽減するために欠かせません。
音声の使用に制限があることで体力や集中力を消耗しやすい方でも、これらの制度を活用することで、体力的な負担を軽減して自分のペースで業務を進めやすくなります。
転職活動の際には、企業の制度整備状況を事前に確認することが重要です。
発声を伴わないコミュニケーション手段が確保されている
音声機能障害によって発声が困難な場合、周囲とのコミュニケーションを円滑にするために、発声を伴わない手段が確保されているか確認することが欠かせません。
筆談用のホワイトボードやメモ帳の常備のほか、チャットツールや音声認識ソフトなどITツールを活用したコミュニケーション手段が導入されている職場であれば業務を円滑に遂行しやすくなります。
事前に必要な支援技術や配慮事項を整理し、企業との相談を進めることが大切です。
障がい者雇用には専門の転職エージェントがおすすめ
音声機能障害のある方の転職活動では、障がい者雇用に特化した転職エージェントの活用が有効です。転職エージェントを利用することで、障がいの特性を考慮した求人の紹介や専門のキャリアアドバイザーによるサポートが受けられます。
「エージェントサーナ」は30年以上の実績を持つ障害者専門の転職エージェントです。個別カウンセリングから求人紹介、面接対策まで総合的なサポートを提供しています。
音声機能障害に理解のある企業との豊富なネットワークを活かし、筆談や文字入力でのコミュニケーションが可能な職場を多数紹介しています。音声ソフトに対応した求人も多数用意しており、最新の支援技術を活用できる環境での就職に向けたサポートが可能です。
まとめ
音声機能障害を抱えていても、適切なサポートや理解のある職場を選べば、自分らしく働くことが可能です。転職活動を行う際には、自身の症状や特性を正確に把握したうえで、業務内容の調整や柔軟な働き方、代替コミュニケーション手段の確保など、具体的な配慮事項を明確にすることが欠かせません。
また、専門の転職エージェントを活用すれば、豊富な経験とノウハウに基づいた的確なサポートが受けられます。
障がい者雇用専門の転職エージェント「エージェント・サーナ」では、プロのアドバイザーがあなたに寄り添い、障がいの特性に合った求人のマッチングや面接対策のサポートなどを実施いたします。音声機能障害でも働きやすい職場への転職をご希望の方はぜひご相談ください。
