内部障がいを持つ方は、外見からは障がいが分かりにくいため、周囲からの理解を得られず、仕事をするうえでさまざまな悩みを抱える方も少なくありません。
人によって障がいの内容や程度、就労上の制限などは異なるため、自身の障がい特性を踏まえて無理なく働ける仕事や職場環境を選択することが大切です。
この記事では、内部障がいの特性や仕事で抱えやすい悩み、働きやすい仕事の選び方、就職・転職活動をスムーズに進めるためのポイントなどを解説します。
目次
内部障がいの特性とは。身体障害者福祉法に基づく種別
内部障がいとは、心臓や腎臓、呼吸器などの身体の内部にある臓器の機能に障がいがある状態を指します。身体障害者福祉法では、7種類の内部障がいが定義されています。
▼身体障害者福祉法に基づく内部障がいの種類
種類 | 障がいの内容 |
心臓機能障害 | 心臓の機能が低下して、全身に必要な血液を送ることが難しい状態 |
腎臓機能障害 | 腎臓の機能が低下して、体内の老廃物を排出したり、水分量を調整したりすることが難しい状態 |
呼吸器機能障害 | 肺や気管支などの機能が低下して、体内に酸素を十分に取り込むことが難しい状態 |
ぼうこう・直腸機能障害 | ぼうこうや直腸の機能が低下して、排泄の調整が困難になる状態 |
小腸機能障害 | 小腸の機能が低下して、栄養の消化や吸収が難しい状態 |
ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害 | ヒト免疫不全ウイルス(HIV)によって免疫機能が低下した状態 |
肝臓機能障害 | 肝臓の機能が低下して、栄養の分解や貯蔵、解毒などが難しい状態 |
これらの障がいの原因や疾患の内容には個人差があるため、就労上の制限や必要な配慮なども人によって異なります。
出典:厚生労働省『身体障害者障害程度等級表』
内部障がいを持つ方が仕事で抱えやすい悩み
内部障がいを持つ方が仕事に従事するにあたっては、体調の変化や身体活動の制限、医療ケアとの両立などのさまざまな悩みを抱えやすくなります。障がいのある部位や疾患の内容などによって悩みは異なりますが、一般的に以下のような課題に直面することがあります。
体力の低下により疲れやすい
内部障がいによって臓器の機能が低下すると、体力が低下して疲れやすくなることがあります。そのため、肉体的な負荷が大きい作業や長時間立ち続ける作業、高い集中力を長時間維持する作業などが困難になる方もいます。
このような体力的な制約があることにより、スムーズな業務遂行の妨げになったり、日常生活での心身の負担につながったりする場合があります。
周囲の人に理解されにくい
内部障がいは外見から分かりにくいため、周囲の理解を得ることが難しいという悩みがあります。業務の調整を依頼した際に「楽をしたいのではないか」と思われたり、不調を訴えた際に「怠けているのでは?」と誤解されたりする可能性があります。
同僚や上司に必要なサポートを伝えられなかったり、体調不良や通院を理由とした休みを取りづらくなったりすることにより、心理的なストレスを感じる方も少なくありません。
身体活動や就労環境が制限される場合がある
内部障がいの種類や症状によっては、身体活動や就労環境が制限される場合があります。
例えば、心臓機能障がいのある方でペースメーカーを装着している場合、強い電磁波を発生させる機械を扱う作業や、特定の施設での作業が制限されます。
このような制限によって、これまで続けてきた仕事に従事できなくなり、配置転換や転職が必要になるケースがあります。また、希望する職種に就くことが難しくなり、キャリア選択の幅が狭まることに悩む方もいます。
ペースメーカーを装着する方の仕事制限とは。安心して従事できる職種や就職・転職活動の進め方
内部障がいの方が仕事選びで確認すること
内部障がいを持つ方が就職・転職活動を行う際は、自身の症状や就労上の制限、必要な配慮などを踏まえて、自分に合った仕事を選ぶことが大切です。ここでは、仕事選びの際に確認しておきたい3つのポイントを解説します。
職場での物理的な就労環境
職場内の施設や設備など、物理的な就労環境が整備されているか確認します。内部障がいを持つ方にとって働きやすい就労環境には、以下が挙げられます。
▼働きやすい就労環境のための施設・設備
施設・設備 | チェックすること |
体調不良時に身体を休められるスペース | 休憩室や仮眠室など、いつでも横になれる場所があるか |
生活動作を支援する設備 | 多目的トイレや手すり、エレベーターなどが備わっているか |
快適な空調設備 | 冷暖房機器や空気清浄機などがあるか、温度・湿度が適切に管理されているか |
上記のほかにも内部障がいの種類によって求められる就労環境は異なります。主治医に相談して安全に就労できる職場環境を確認しておくことが欠かせません。
業務による身体的な負担
内部障がいによる症状や体力、身体活動の制限などを踏まえて、無理なく働ける業務かどうかを事前に確認しておく必要があります。
▼身体的な負担について確認すること
- 重い物を持ち運ぶ作業がないか
- 長時間立ちっぱなしの作業がないか
- 階段の昇り降りや社内外での移動が多いか など
面接時や職場見学の際には、具体的な業務内容を確認しておきましょう。
療養や治療との両立のしやすさ
内部障がいを持つ方は、定期的な通院や体調不良による療養が必要になることがあります。長く働き続けるには、仕事との両立をサポートする制度がある職場を選ぶことが重要です。
▼仕事との両立をサポートする制度
- 短時間勤務制度
- フレックスタイム制
- 時間単位・半日単位で取得できる休暇制度
- 失効年休積立制度(使い切れなかった有給休暇を積み立てて利用できる制度)
個別の事情に応じて柔軟な働き方ができる勤務制度を導入している職場は、療養や治療との両立がしやすくなります。また、チームで仕事を分担する体制が整っている職場であれば、急な体調不良で休む際に周囲のサポートを求めやすいため、安心して働くことが可能です。
内部障がいを持つ方が働きやすい仕事
内部障がいによる症状や体力、就労上の制限などを踏まえて仕事を選ぶことで、長く安定して働くことができます。ここでは、内部障がいを持つ方が働きやすい具体的な仕事について紹介します。
デスクワークでの仕事
デスクワークは、座って作業することが中心となるため、身体的な負担がかかりにくく体力が不安な方でも働きやすい仕事といえます。
▼デスクワークの仕事例
- 事務職(一般事務・経理・人事労務)
- プログラマー
- Webデザイナー など
事務職は、勤務時間が規則的で残業も発生しにくいため、体調管理を行いやすい利点があります。プログラマーやWebデザイナーは、自身で仕事の進め方を柔軟に調整しやすく、通院や療養と両立しやすいことが利点といえます。
軽作業の仕事
内部障がいの症状や程度によっては、立ち仕事でも軽作業であれば問題なく働ける方もいます。手作業が中心で身体活動量が低い軽作業は、身体への負担が少ないため、内部障がいを持つ方が安心して働くことが可能です。
▼軽作業の仕事例
- 工場での目視検査
- 生産ラインでの組み立て作業
- 封入・梱包作業
- 調理補助 など
これらの仕事は定型的な作業が多く、精神的にも安定しやすいと考えられます。また、複数人が協力して業務を進行するため、通院や療養のために勤務時間を調整してもらいやすいと考えられます。
資格を活かせる仕事
専門的な知識・スキルを活かせる仕事として、資格職が挙げられます。
資格職のなかには、デスクワークが中心で体力面の心配が少ない仕事も多く存在するため、無理なく働き続けやすいといえます。
▼資格を活かせる仕事例
- 社会保険労務士
- 行政書士
- 司法書士
- 公認会計士
- フィナンシャルプランナー など
また、資格を取得することで選考時のアピールポイントになるほか、キャリアアップや安定した収入を目指すことができます。
内部障がいの方が就職・転職活動に取り組むポイント
内部障がいは多岐にわたるため、日常生活や仕事への影響は個人差があります。
就職・転職活動を進める際は、自身の症状や体力を正確に把握したうえで、無理なく働ける仕事や職場環境について企業と調整していくことが重要です。
➀できること・できないことを整理する
長く安定して働くためには、自分にとって無理なく従事できる仕事を選ぶ必要があります。
「何ができるか」「何ができないか」を整理して、体力的な限界や時間的な制約を明確にすることがポイントです。
▼具体例
- 立ちっぱなしの作業は30分まで
- 満員電車での通勤は避けたい
- 週に2回の通院のために勤務時間の調整が必要
- デスクワークであれば問題なく作業できる など
主治医に相談して、身体活動の制限や就労上の注意点についてアドバイスをもらうことも欠かせません。自身の状況を整理しておくことで、職種や仕事内容を選択しやすくなります。
②障害者雇用枠での就労を検討する
内部障がいを持つ方は、一般雇用のほかに障害者雇用枠の選択肢があります。身体障害者手帳を取得している方は、企業の障害者雇用枠に応募することが可能です。
厚生労働省の『令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書』によると、障害者雇用者数のうち内部障がいを持つ方の割合は30.6%となり、2番目に雇用者数が多くなっています。
障害者雇用枠での就労には、一般雇用と比較して以下のメリットがあります。
▼障害者雇用枠のメリット
- スムーズに内定が決まりやすい
- 業務内容や職場環境への配慮を受けられる
- 周囲の理解があり、サポートを依頼しやすい など
障がいをオープンにして必要な配慮やサポートを受けたい方や、一般雇用でなかなか内定が決まらないという方は、障害者雇用枠に応募してみることも一つの方法です。
出典:厚生労働省『令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書』
③通院や治療の状況を採用担当者に伝える
内部障がいの内容によって、通院の頻度や治療方針は異なります。面接の際に通院や治療の状況を正直に伝えておくことで、企業側が適切な配慮を検討しやすくなります。
▼採用担当者に伝えること
- 1ヵ月での通院の回数・頻度
- 体力的に無理のない勤務時間
- 体調不良時の症状
- 休暇の取り方に関する希望 など
また、定期的な通院が必要な方は、休暇制度や給与の扱いについても確認しておきます。企業によっては、内部障がいを持つ方が働きやすい勤務形態や雇用形態を提案してくれることもあるため、遠慮せずに相談しましょう。
障がい者向けの支援制度やサービスの活用も有効
内部障がいを持つ方が就職・転職活動を進める際には、支援制度やサービスを活用することが有効です。自身が受けたいサポートに合わせて選択しましょう。
ハローワーク
ハローワークには、障がいを持つ方のための専門窓口が設置されています。
求職者の希望に応じて一般雇用枠や障害者雇用枠の求人紹介を受けられるほか、応募書類の書き方や面接の進め方についてのアドバイスをもらえます。
さらに、面接に同行して企業の担当者との間に入ってくれるサポートも受けられるため、安心して就職・転職活動を進められます。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、障害者総合支援法によって導入されている福祉サービスです。
一般企業への就職を目指す障がいを持つ方を対象に、スキル習得のための職業訓練や面接対策、履歴書の添削、就職後の職場定着支援までを一貫してサポートしてくれます。
ビジネスマナーや基本のPCスキルなどを身につけながら、じっくりと時間をかけて就職に必要な準備を整えたい方に適しています。
障がい者向けの転職エージェント
民間企業が運営する転職エージェントサービスでは、キャリアアドバイザーと相談のうえ、求職者の障がい特性や働き方の希望を踏まえた求人紹介を受けられます。
給与や勤務時間、必要な配慮といった労働条件の交渉を行ってもらえたり、面接の受け方について具体的なアドバイスを受けたりできるのが大きなメリットです。「何から始めてよいいか分からない」「一人で準備を進めるのが不安」という方に適しています。
『エージェント・サーナ』は、30年以上の実績を持つ障がい者専用の転職エージェントです。求職者の希望と企業のニーズ・就労環境を踏まえた求人のマッチングにより、2ヵ月以内の内定率は60%以上、入社後の定着率は99.5%を実現しています。
内部障がいを持つ方が転職に成功した体験談を紹介
ここからは、内部障がいを持つ方が『エージェント・サーナ』を活用して転職に成功した体験談を紹介します。
52歳/女性/ロビーアテンダント】未経験職種への転職事例
実家が経営するスーパーで仕入れ・配達・品出し・レジなどの仕事を担当していた方が、金融機関でのロビーアテンダントの職種に転職された事例です。
▼転職理由
直腸の緊急手術を受けたことで長時間の立ち仕事が厳しくなり、身体の負担が少ない仕事への転職を決めました。
▼転職活動の状況
スーパーでの経験を活かせる接客業務に就きたいという希望がありましたが、ハローワークでは希望に沿う転職先が見つからず、エージェント・サーナに登録しました。そこで金融機関のロビーアテンダントの仕事の紹介を受け、選考が順調に進み内定をいただきました。
▼転職後の感想
歩くことはありますが前職のような身体的な負担は少なく、通院による休暇の取得を含めたきめ細かな配慮をしていただけるため助かっています。未経験の職種で不安もありましたが、アドバイザーから背中を押してもらい、前向きな気持ちで取り組めたことがよい結果につながったと思います。
転職活動を通して学んだのは自分を限定しないことの大切さです。
【23歳/男性/事務職】通勤の負担を軽減した転職事例
ソフトウェアやハードウェアを開発するIT関連企業のコールセンターに勤めていた方が、通勤に時間がかからない職場に転職された事例です。
▼転職理由
結婚を機に引越しをしたことで通勤時間が片道1時間40分かかるようになり、身体的な負担軽減とプライベートの充実を図りたいという気持ちで転職活動を始めました。
▼転職活動の状況
当初は在宅勤務を希望していましたがキャリア的に難しく、「通勤条件」と「待遇」の2つを優先して会社を紹介してもらいました。アドバイザーの方が一生懸命仕事を探してくれたおかげで、希望に沿う会社と出会い内定をいただきました。
▼転職後の感想
設計コンサルタント会社の事務職に従事しています。通勤時間を40分に短縮できたほか、電車のピーク時間帯を避ける出勤制度を活用することで通勤が楽になり、環境を変えたことに満足しています。
まとめ
内部障がいを持つ方が自分に合った仕事に就くためには、身体的な負担や体調に配慮した就労環境と、通院・治療と両立しやすい働き方が求められます。自身の症状や体力を正確に把握して、「できること」と「できないこと」を明確にすることが大切です。
また、一般雇用のほかにも障害者雇用枠や特例子会社といった就労方法も選択できます。一人で悩まずに、ハローワークや就労移行支援事業所、転職エージェントなどの支援・サービスを積極的に活用しましょう。
『エージェント・サーナ』は、障がいを持つ方の就職を支援する転職エージェントです。障がい者雇用に精通したキャリアアドバイザーが、一人ひとりの希望や障がい特性に合わせた求人の紹介から応募書類の添削、面接対策、企業との条件交渉まで手厚くサポートします。