車椅子で生活する方のなかには「転職をしたいけれど、仕事内容が制限されるのでは」「内定が決まらなかったらどうしよう」などと不安を持つ方もいるのではないでしょうか。
車椅子を利用する方でも、身体の状況に合った仕事内容や働き方を選ぶことで、自身のスキル・経験を活かして活躍することが可能です。
この記事では、車椅子の方の仕事上の悩みごとや企業選びでチェックすること、無理なく働きやすい職種、転職活動に取り組むポイントについて解説します。
なお、足が悪い人が働きやすい仕事についてはこちらの記事をご確認ください。
目次
車椅子の方の仕事に関する悩みごと
車椅子の方は、立ち姿勢の維持や歩行が難しいことから、仕事に関してさまざまな悩みや課題に直面することがあります。よくある悩みごとには、以下が挙げられます。
電車やバスでの通勤が大変
公共交通機関を利用した通勤は、車椅子の方にとって大変に感じることがあります。
特に朝の通勤ラッシュ時は、駅のエレベーターが混雑していたり、満員電車への乗り降りが困難だったりするため、スムーズな移動が難しくなります。
また、駅構内や街中の人混みのなかでの移動に時間がかかり、始業時間に遅れたり、心身ともに疲れてしまったりすることも少なくありません。
就労場所での物理的な制約がある
バリアフリー環境が十分でない職場では、仕事をするうえで物理的な制約が生じます。
例えば、自動ドアやスロープがなかったり、通路の幅が狭くて移動が難しかったり、車椅子対応のトイレがなかったりするなど、日々の業務に支障が出ることが考えられます。
これらの就労場所に関する問題は、業務効率の低下を招くだけでなく、身体的な負担や心理的なストレスにつながることもあります。
従事が難しい職種がある
車椅子の方は、立ち姿勢での作業や頻繁に移動する必要がある職種に従事することが難しくなります。そのため、希望する職種に就けないことに悩みを抱える人もいます。
しかし、近年では多様な働き方が普及しており、企業側が個々の能力や適性に合わせて働き方を柔軟に調整してくれる企業も見られます。
車椅子の方が企業選びでチェックすること
車椅子の方が長く安定して働くためには、自身の能力を最大限に発揮できるだけでなく、身体的な負担に配慮した職場環境や勤務制度が整備されている企業を選ぶことが重要です。
企業選びでチェックしておく項目には、以下が挙げられます。
通勤に負担を軽減する勤務制度がある
在宅勤務を導入していない企業であっても、通勤の負担を軽減する勤務制度を導入している場合には働きやすいと考えられます。
▼通勤の負担を軽減する勤務制度
- 時差出勤制度
- フレックスタイム制度
- マイカー通勤制度 など
始業・終業時刻を柔軟に選択できる制度があれば、電車やバスが混雑するラッシュ時を避けて通勤でき、公共交通機関での混雑による事故や転倒のリスクを避けられます。また、車椅子の方に対して自家用車での通勤を認めている企業を選ぶことも一つです。
バリアフリー設備が整備されている
車椅子の方が安心して働くうえで、物理的な制約を取り除くためのバリアフリー設備の整備は非常に重要なポイントの一つです。
就労場所での利便性・安全性に大きく関わるため、「安全かつスムーズに移動できるか」「車椅子に配慮された設備があるか」などを事前に確認しておくことが欠かせません。
▼バリアフリー設備で確認すること
- エレベーターやスロープ、手すりが備わっているか
- 車椅子が通れる十分な通路幅が確保されているか
- 車椅子用トイレや手洗い設備が設置されているか など
車椅子の方が働きやすい職種5選
車椅子の方が仕事を探す際は、移動による身体的な負担を軽減できる職種を選ぶことが大切です。ここでは、デスクワークや座った姿勢での作業が中心となる、車椅子の方が働きやすい職種を5つご紹介します。
➀事務職
事務職は、電話応対やデータ入力、書類作成などのデスクワークが基本となるため、車椅子の方でも安心して働くことができます。
▼事務職の種類
- 一般事務
- 経理
- 人事労務
- 法務 など
基本的なPCスキルがあれば未経験でも応募できる仕事があるほか、法務や財務に関する専門的な知識を活かせる仕事もあります。
②カスタマーサポート
カスタマーサポートは、消費者や取引先からの問い合わせに対応する仕事です。
パソコンを使った入力作業や電話応対が基本となり、身体機能の制約を受けにくいことから車椅子の方が活躍している職種の一つです。
▼カスタマーサポートの主な業務内容
- コールセンターでの電話対応
- Webフォームやチャットに寄せられた質問へのメール対応
- 問い合わせ内容に関するデータの入力・処理 など
固定勤務制やシフト制など、企業によってさまざまな勤務形態が導入されており、身体の状況に応じて働き方を選択できます。また、専門的な技術や資格がなくても応募ができる未経験者向けの求人も見られます。
③システムエンジニア・プログラマー
システムエンジニアやプログラマーは、ITに関する専門職の一種です。パソコンを使った作業が中心となるため、車椅子の方の活躍が期待される職種といえます。
▼システムエンジニア・プログラマーの主な業務内容
- ソフトウェア開発
- ITインフラの構築
- システムの保守運用 など
就職においてはシステムの開発運用やプログラミングの専門知識・技術が求められるため、事前にスキルを習得しておくことも効果的です。
④Webクリエイター
Webクリエイターは、さまざまなコンテンツを制作するクリエイティブ系の仕事です。パソコンでのソフトウェアを使った業務が中心となり、身体的な負担が少ない職種となります。
▼Webクリエイターの職種例
- Webライター
- グラフィックデザイナー
- 動画クリエイター など
自分のペースで仕事を進めたい方や専門的なソフトウェアの操作スキルを持つ方、ものづくりが好きな方に向いています。
⑤商品の出荷管理業務
商品の出荷管理業務は、倉庫や営業所において、商品や備品の出荷・配送管理などを行う業務です。バックオフィス業務が中心となるため、移動や運搬作業による負担がなく、車椅子の方でも無理なく働くことができます。
▼出品管理の業務内容
- 電話やメールの対応
- システムへのデータ入力
- 帳票の作成・送付 など
基本的なビジネスマナーやPCスキルがあれば、未経験でも応募できる求人が見られます。
車椅子の方が転職活動に取り組むポイント
車椅子の方が転職活動に取り組む際は、自身の身体状況や通勤の負担、今後のキャリアプランなどを踏まえて、自分に合った職種・働き方を選ぶことが大切です。
ここでは、転職活動で押さえておきたい4つのポイントを解説します。
雇用枠(一般雇用・障害者雇用)の種別を選択する
まずは一般雇用・障害者雇用のどちらで就労するか選択する必要があります。身体障害者手帳の取得状況によって就労形態の選択肢が異なります。
▼就労形態の選択肢
身体障害者手帳の有無 | 就労形態の選択肢 |
取得している | 一般雇用と障害者雇用のいずれかを選択できる。 |
取得していない | 一般雇用での就労となる。障がいを持つことを企業に伝える「オープン就労」と伝えない「クローズ就労」のいずれかを選択する。 |
一般雇用枠で応募する場合は、幅広い業界・職種への求人を選択できますが、勤務形態や業務上の配慮などについて企業に事前に相談しておく必要があります。
身体障害者手帳を取得している方は、障害者雇用での就労が可能です。障害者雇用を行っている企業では、バリアフリー設備や業務上の配慮などが整っているほか、周囲のサポートを得やすい職場環境となり、車椅子の方にとって働きやすいと考えられます。
自分にとってどちらが向いているか慎重に判断することが重要です。
就労移行支援による職業訓練を検討する
応募できる職種の選択肢を広げたい方や、将来的にフリーランスとして働くことを検討している方は、就労移行支援事業所を利用して職業訓練を受けることも一つの方法です。
就労移行支援は、障害者総合支援法に基づいて提供される福祉サービスとなり、障がいを持つ方が一般企業への就職を目指すためのさまざまな支援プログラムを利用できます。
▼職業訓練の内容例
- ビジネスマナー
- 基礎的なPCスキル
- 簿記
- Webデザイン
- プログラミング など
訓練を通じて自身のスキルを向上させてから転職活動に取り組むことで、未経験での職種や専門職での選考が有利に働くことが期待できます。
自分の強みや必要な配慮を明確に伝える
求人への応募や面接を受ける際は、採用担当者に対して自身の強みや仕事をするうえで必要な配慮について明確に伝えることが重要です。
例えば、「〜という配慮があれば、几帳面な性格や集中力を活かして効率的に作業を行えます。」といったように、ポジティブかつ具体的に伝えましょう。
正直に自分の状況を伝えることで、求職者が持つ能力を発揮できる業務への配置や、働きやすい職場環境の整備などを企業が検討しやすくなります。
障がい者向けの転職エージェントを活用する
「自分に合った仕事が見つからない」「履歴書の作成や面接での受け答えに不安がある」といった方は、障がい者向けの転職エージェントを活用する方法があります。
転職エージェントを活用すると、求職者と企業の間に入って求人の紹介や選考の調整、入社後のフォローなどをサポートしてくれます。車椅子の方に理解がある企業と出会えるため、長く安心して働ける職場への転職を実現しやすくなります。
『エージェント・サーナ』は、30年以上にわたる実績とノウハウを持つ、障がいを持つ方のための転職エージェントサービスです。求職者の障がい特性や希望する働き方などを深く理解したうえで、転職活動を手厚くサポートいたします。
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まとめ
車椅子の方が長く安定して働くためには、自身の身体状況や能力を踏まえて無理なく働ける職種を選ぶことが大切です。また、通勤面の配慮やバリアフリー設備が整備された職場環境かどうか確認しておくことも欠かせません。
転職活動においては、障害者雇用枠での就労や就労移行支援の活用も検討しましょう。転職エージェントに相談することで能力を最大限に活かせる職場と出会える可能性があります。
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