身体障がいの種類と雇用状況
2019年12月に厚生労働省から発表された「障害者雇用状況の集計結果」によると、2019年6月1日時点での民間企業(45.5人以上規模の企業:法定雇用率2.2%)に雇用されている障がい者の数は56万608.5人でした。そのうち、身体障がい者は35万4134.0人(対前年比2.3%増)、知的障がい者は12万8383.0人(同6.0%増)、精神障がい者は7万8091.5人(同15.9%増)。もっとも多く雇用されているのは身体障がい者という結果になりました。ここでは、身体障がいについて、その種類や雇用状況などを詳しくみていきます。
身体障がいの種類
はじめに障がい者とは、身体障がい、知的障がい又は精神障がいがあることで、継続的に日常生活または社会生活に制限を受ける方のことをいいます。そのうち身体障がいにあたるのは、以下5ついずれかの身体上の障がいがある者で、都道府県知事から「身体障害者手帳」の交付を受けた者のことをさすと身体障害者福祉法で定められています。
- 視覚障がい
視力や視野に障がいがあり、生活に支障を来している状態。眼鏡をつけても一定以上の視力が出なかったり、視野が狭くなり人や物にぶつかるなどの状態をいいます。 - 聴覚又は平衡機能の障がい
聴覚障がいとは、音が聞こえない、または聞こえにくい状態をいいます。また平衡機能障がいは、四肢体幹に器質的異常がなく、閉眼での起立が不能、又は開眼で直線を歩行中に10m以内に転倒もしくは著しくよろめいて歩行を中断せざるを得ない状態をさします。 - 音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障がい
音声、言語のみを用いて意思を疎通することが困難な状況や、著しいそしゃく・嚥下機能または、咬合異常によるそしゃく機能に障がいがある状態をいいます。 - 肢体不自由
両手両足や体幹などに障がいがあることで、日常生活における行動・動作に困難がある状態をいいます。 - 内部障がい
体の内部に障がいがある状況をさし、身体障害者福祉法では、以下の7つの障がいを内部障がいと定めています。
- 心臓機能障がい
- 腎臓機能障がい
- 呼吸器機能障がい
- ぼうこう、直腸機能障がい
- 小腸機能障がい
- ヒト免疫不全ウィルス(HIV)による免疫機能障がい
- 肝臓機能障がい
身体障がい者の種類別雇用状況
ひと言に身体障がい者といっても、障がい内容はさまざまだということが分かったと思います。では次に、身体障がい者の雇用状況について詳しくみてみましょう。
厚生労働省より2018年6月に発表された「平成30年度 障害者雇用実態調査の結果」では、常用労働者5人以上を雇用する民営事業所(無作為に抽出した約9200事業所が対象)における雇用障がい者数は82万1000人。そのうち、身体障がい者が42万3000人、知的障がい者が18万9000人、精神障がい者が20万人、発達障がい者が3万9000人で、身体障がい者は全体のおよそ半数を占めました。
では、さまざまな障がい内容がある身体障がいの中で、それぞれの種別ごとに雇用状況の違いはあるのでしょうか。同集計結果から、その数字をみていきます。
身体障がい者の雇用数42万3000人のうち、雇用数が多い順(不明・無回答を除く)に以下のようになりました。
- 肢体不自由42.0%
- 内部障がい28.0%
- 聴覚、言語障がい11.5%
- 重複障がい6.0%
- 視覚障がい4.5%
このように、身体障がい者の中でも障がい内容別にみると、約4割が肢体不自由の方で、視覚障がいの方は1割に満たない状況であり、種別によって雇用状況にも差があることがわかります。
また、従事している職業については、以下のような結果になりました。
- 事務的職業32.7%
- 生産工程職業20.4%
- 専門的、技術的職業13.4%
- サービスの職業10.3%
- 販売の職業9.6%
- 運搬、清掃、包装等の職業4.8%
- 輸送、機械運転の職業3.4%
- 管理的職業2.9%
- 保安の職業1.4%
- 建築、採掘の職業0.6%
- 農林漁業の職業0.1%
障がい種類別に「仕事との関わり方」を考える
身体障がい者の中でも、障がい内容によって雇用状況が異なることが分かりましたが、それでも、知的障がい者、精神障がい者、発達障がい者と比較すると雇用数は最も多い身体障がい者。では、実際に働いている現場において、どのように仕事と関わっているのでしょうか。
障がい者が仕事において自身の能力を発揮するための条件として、「障がい内容に合った必要な配慮を雇用企業から提供してもらえているか」は大事なポイントになるでしょう。
ここでは、障がいへの配慮という観点から、いくつかの障がいにおける具体的な例を紹介します。
ケース① 視覚障がいの場合
視覚障がいの方が企業から受けている配慮について具体的に紹介します。まず、音声読み上げソフトなどの支援機器があります。視覚障がいの方の中でも見え方は人それぞれです。全体的に見える範囲が狭まる視野狭窄や、視野の半分が欠ける半盲、部分的に見えない箇所がある暗点など、障がいの状況や程度について正しく理解してもらい、適切な機器を使用することが大切といえます。
その他には、朝夕におけるラッシュ時を避けた通勤があります。混雑した交通機関での通勤には危険が伴うため、時差出勤の配慮を企業から提供してもらったり、フレックスタイム制度を利用する方が多いようです。
また、入社後にオフィス内のレイアウトを確認し、移動しづらい場所などを共有したり、声をかける際に名前を先に名乗ってもらったり、説明を具体的にしてもらうなどの配慮があるようです。
ケース② 肢体不自由である場合
次に、肢体不自由の方が企業から受けている配慮について紹介していきます。募集や採用時には、面接の際にできるだけ移動が少なくて済むようにするなどの配慮があります。また採用後では、業務指導や相談に関して担当者を定めたり、本人のプライバシーに配慮しつつも、まわりの職場の人に障がい内容や必要な配慮を事前に説明してもらっているようです。他には、オフィス内の通路に障がい物を置かないようにしたり、机の高さを調節、手すり・スロープを設置するなど、職場環境を整備してもらうことも配慮のポイントといえます。
まとめ
就職した企業先で自身の能力を最大限に発揮するためにも、必要な配慮を提供してもらうことは重要です。そのため、転職活動時においては、どのような配慮が自身にとって必要なのかを理解するためにも、自己分析を行い、障がい内容やできることできないことについて整理しましょう。
また、自己分析の方法や、必要な配慮を企業から提供してもらえるかの確認など、転職活動において、分からないことや不安に感じることがある方は、転職エージェントの利用が効果的な活動に繋がります。転職エージェントでは、キャリアアドバイザーによる転職活動のアドバイスや企業との調整をしてもらうことができるため、安心して活動に臨むことができる方法の一つといえるでしょう。